44 / 201
【番外編】 老婆の想い、少年の想い
【番外編8】 ブシカおばあちゃんの弟子観察記録
しおりを挟む
ああ? 弟子達について話せって?
いきなりやってきて、かつての師匠に挨拶もそこそこ、一体何を話せって言うんだよ?
え、どうして今更弟子を取ったか?
まあねぇ。あんたも知っているとおり、私は元々教師だったからね。
基本的に子どもは好きなんだよ。
え?
あれだけ厳しくしておいてよく言うって?
ふん、あんたへの厳しさなんてたいしたもんじゃないね。
さすがに侯爵の子どもをぶん殴るわけにもいかなかったからね。
ああ?
そうさな。パドとリラは毎日ぶん殴ってるよ。
虐待?
なんとでも言いな。
で、あの子達のことだろ。
2人とも、まあ根性がひねくれまくっているね。
いや、悪い子じゃないよ。
むしろ、あの子達は責任感が強すぎる。
何かことが起きると、全部自分の責任だと思い込む。
それこそ、世界が自分中心に回っているという、あの年頃にありがちな傲慢な考えさ。
実際の所、リラの問題は彼女の両親に起因するものだし、パドの問題はそれこそ神様のせいだろう。
もっと開き直るべきなのに、自分が産まれてきたために皆が不幸になったとでも思っているんだろうね。
それでもリラはまだマシさ。
獣人達から引き離して、ここで薬師としてやっていくなら十分生きていけるだろう。
獣の因子がどういう形で目覚めるかにもよるが、今のままなら鱗を隠しておけば普通の人族さ。
薬師としては優秀だね。
本人を前には言わないが、この4ヶ月でこの辺りの薬草は全部使いこなせるようになった。生来の勘が良いのか、最近では私よりもあっさり薬草を見つけてみせるよ。
文字を覚えるのも早かったね。
四則演算はパドに劣ると思っているようだし、実際その通りだが、パドの方が元々知っていたみたいだから参考にはならない。4ヶ月で2桁の割り算までできれば上出来だ。
---------------
問題はパドの方さね。
最初に一目見たときから、あの子は危ういと思ったよ。
神様からもらったとかいう、200倍の力と魔力。
それだけでも危ういが、あの子は一見しっかりしているようで心が弱い。
ちょっとしたことで、すぐに落ち込むし、立ち直るまでにも時間がかかる。
何より問題なのが、重要な決定を他人任せにする癖だね。
ルシフとかいうのに付け込まれたのもそのせいだろうよ。
まずは、自分で考え、自分で決定するよう矯正しないとね。
あれほど契約は2度とするなと言ったのに、ちょっと追い詰められたらあっさり自分の片手と魔法を引き換えやがって。馬鹿な子だよ。
え? もっと強く魔法の契約について教えておけば良かったんじゃないかって?
パドもそんなことを言っていたね。
私も、さすがにルシフとかいうのがあの子の母親を殺しかけるようなことをしてまで契約を迫るとは思っていなかったからねぇ。
そこまでヤバイヤツだと分かっていたら、教えておくべきだったと後悔したよ。
パド達にはごまかしておいたけど。
この3ヶ月、パドはひたすら扱きまくってやった。
毎日クタクタに疲れて、寝不足で、倒れる寸前になるまで追い込んだ。
毎日午前中休みなく走らせ、勉強をたたき込んで、獲物を求めて走らせ、夜は自分の小屋を作らせた。それこそ、寝る間もなくね。
やっぱり虐待じゃないかって?
だから余計なお世話だよ。
パドは確かにここに来る前からなんとか力を操れるようになっていた。
だけど、それは万全の体調の時だけだ。
ちょっと疲れたり、落ち込んだり、追い詰められたりすると、それでもう暴走してしまいかねない。
万全の体調の時に力を制御できるのは大前提。
本当に必要なのは、追い詰められ、疲れ切っていても力を制御しきることだ。
それができないならば、パドは災厄を呼ぶ悪魔となってしまう。
実際、ラクルス村が崩壊しかけたからね。
見てきたんだろう、ラクルス村?
そうかい、それじゃあ、それなりに復興したんだね。バルも頑張ったのかね。
ともあれ、この3ヶ月、パドには倒れる寸前で動いても、なんとか力を制御できるよう訓練を施した。
もっとも、命がかかった戦いが目前に迫っても制御し続けられるかはわからないね。
ここで静かに暮らしている分には命がけの戦いなんてないと思うんだが、そういう希望的観測は捨てておくべきか。
なんにせよ、良い子か悪い子かというなら、2人とも良い子だよ。
だが、危うい。非常に危うい。
パドはもちろん、リラも色々と危うい。
ちょっとバランスが壊れたら、自分を恨み、世界を恨み、神をも恨むだろう。
特にパドはその気になったら世界を崩壊させることすらできる力と魔力を秘めている。
この老婆やラクルス村の村長が恨まれ役をわざわざ買って出たのは、パドに世界そのものを恨ませないためでもあるからね。
---------------
で、レイクよ。
一体今更私に何の用なんだい?
後ろにいるお姉ちゃん2人は何者だ?
え、1人はキラーリア? ああ、ガラジアル公爵の一人娘か。
で、そっちは?
……なんだって?
あの時の陛下の……
……そうかい。そういうことかい。
今更あんたがここに来たのは私に力を貸せということか。
いや、それだけじゃないね。
それだけならば、弟子達の話をいの一番に聞きたがるわけがない。
先ほど言っていた神託について、弟子達が帰ってくる前にもう少し詳しく教えてもらおうか。
いきなりやってきて、かつての師匠に挨拶もそこそこ、一体何を話せって言うんだよ?
え、どうして今更弟子を取ったか?
まあねぇ。あんたも知っているとおり、私は元々教師だったからね。
基本的に子どもは好きなんだよ。
え?
あれだけ厳しくしておいてよく言うって?
ふん、あんたへの厳しさなんてたいしたもんじゃないね。
さすがに侯爵の子どもをぶん殴るわけにもいかなかったからね。
ああ?
そうさな。パドとリラは毎日ぶん殴ってるよ。
虐待?
なんとでも言いな。
で、あの子達のことだろ。
2人とも、まあ根性がひねくれまくっているね。
いや、悪い子じゃないよ。
むしろ、あの子達は責任感が強すぎる。
何かことが起きると、全部自分の責任だと思い込む。
それこそ、世界が自分中心に回っているという、あの年頃にありがちな傲慢な考えさ。
実際の所、リラの問題は彼女の両親に起因するものだし、パドの問題はそれこそ神様のせいだろう。
もっと開き直るべきなのに、自分が産まれてきたために皆が不幸になったとでも思っているんだろうね。
それでもリラはまだマシさ。
獣人達から引き離して、ここで薬師としてやっていくなら十分生きていけるだろう。
獣の因子がどういう形で目覚めるかにもよるが、今のままなら鱗を隠しておけば普通の人族さ。
薬師としては優秀だね。
本人を前には言わないが、この4ヶ月でこの辺りの薬草は全部使いこなせるようになった。生来の勘が良いのか、最近では私よりもあっさり薬草を見つけてみせるよ。
文字を覚えるのも早かったね。
四則演算はパドに劣ると思っているようだし、実際その通りだが、パドの方が元々知っていたみたいだから参考にはならない。4ヶ月で2桁の割り算までできれば上出来だ。
---------------
問題はパドの方さね。
最初に一目見たときから、あの子は危ういと思ったよ。
神様からもらったとかいう、200倍の力と魔力。
それだけでも危ういが、あの子は一見しっかりしているようで心が弱い。
ちょっとしたことで、すぐに落ち込むし、立ち直るまでにも時間がかかる。
何より問題なのが、重要な決定を他人任せにする癖だね。
ルシフとかいうのに付け込まれたのもそのせいだろうよ。
まずは、自分で考え、自分で決定するよう矯正しないとね。
あれほど契約は2度とするなと言ったのに、ちょっと追い詰められたらあっさり自分の片手と魔法を引き換えやがって。馬鹿な子だよ。
え? もっと強く魔法の契約について教えておけば良かったんじゃないかって?
パドもそんなことを言っていたね。
私も、さすがにルシフとかいうのがあの子の母親を殺しかけるようなことをしてまで契約を迫るとは思っていなかったからねぇ。
そこまでヤバイヤツだと分かっていたら、教えておくべきだったと後悔したよ。
パド達にはごまかしておいたけど。
この3ヶ月、パドはひたすら扱きまくってやった。
毎日クタクタに疲れて、寝不足で、倒れる寸前になるまで追い込んだ。
毎日午前中休みなく走らせ、勉強をたたき込んで、獲物を求めて走らせ、夜は自分の小屋を作らせた。それこそ、寝る間もなくね。
やっぱり虐待じゃないかって?
だから余計なお世話だよ。
パドは確かにここに来る前からなんとか力を操れるようになっていた。
だけど、それは万全の体調の時だけだ。
ちょっと疲れたり、落ち込んだり、追い詰められたりすると、それでもう暴走してしまいかねない。
万全の体調の時に力を制御できるのは大前提。
本当に必要なのは、追い詰められ、疲れ切っていても力を制御しきることだ。
それができないならば、パドは災厄を呼ぶ悪魔となってしまう。
実際、ラクルス村が崩壊しかけたからね。
見てきたんだろう、ラクルス村?
そうかい、それじゃあ、それなりに復興したんだね。バルも頑張ったのかね。
ともあれ、この3ヶ月、パドには倒れる寸前で動いても、なんとか力を制御できるよう訓練を施した。
もっとも、命がかかった戦いが目前に迫っても制御し続けられるかはわからないね。
ここで静かに暮らしている分には命がけの戦いなんてないと思うんだが、そういう希望的観測は捨てておくべきか。
なんにせよ、良い子か悪い子かというなら、2人とも良い子だよ。
だが、危うい。非常に危うい。
パドはもちろん、リラも色々と危うい。
ちょっとバランスが壊れたら、自分を恨み、世界を恨み、神をも恨むだろう。
特にパドはその気になったら世界を崩壊させることすらできる力と魔力を秘めている。
この老婆やラクルス村の村長が恨まれ役をわざわざ買って出たのは、パドに世界そのものを恨ませないためでもあるからね。
---------------
で、レイクよ。
一体今更私に何の用なんだい?
後ろにいるお姉ちゃん2人は何者だ?
え、1人はキラーリア? ああ、ガラジアル公爵の一人娘か。
で、そっちは?
……なんだって?
あの時の陛下の……
……そうかい。そういうことかい。
今更あんたがここに来たのは私に力を貸せということか。
いや、それだけじゃないね。
それだけならば、弟子達の話をいの一番に聞きたがるわけがない。
先ほど言っていた神託について、弟子達が帰ってくる前にもう少し詳しく教えてもらおうか。
0
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる