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第二部 少年と王女と教皇と 第二章 決意の時
3.『闇』再び
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かつて、ラクルス村を襲い、お母さんを傷付けた『闇』が、再び現れた。
――なんでいまさら!?
僕は壊れた屋根から上空を睨む。
そこには、ラクルス村に現れたのと同じ、ニヤニヤと白い歯を見せる黒い人型。
くそっ。
また、ルシフが動いたのか!?
いや、『闇』を送り込んだのがルシフだというのはあくまでも推測。
だけど、なんにしても、『闇』は確実にこの小屋を狙った。
狙いは僕?
それとも、アル王女?
あるいは教皇か、それとも……
そこまで考えてハッとなる。
皆は無事なのか!?
慌てて周囲を見回すと、アル王女や教皇、お師匠様はほこりまみれになりつつも、立ち上がっている。
リラとお母さんがいる別室はそもそも攻撃を受けていない。
レイクさん達は……
そこまで考えた時だった。
『闇』に向かって跳ぶ金色の存在。
「うぉぉぉぉぉ」
雄叫びと共に『闇』に切迫するのはキラーリアさん。
って、どんな跳躍力だよ!?
たぶん、10メートルはあるぞ!!
いや、僕なら可能だけど。でも、僕の場合足下にでっかいクレーターつくっちゃうからなぁ。キラーリアさんが飛び立った後にそんなものはない。
キラーリアさんも何か特別な力を持っているの?
だが、剣を構えてツッコんでいくキラーリアさんの攻撃は不発に終わった。
躱されたとか、弾かれたとかではない。文字通り『闇』を通り抜けてしまったのだ。
「なに!?」
キラーリアさんもこれには驚いたらしい。
驚きの声を上げる。
当然のことながら、結果としてキラーリアさんは空中で『闇』に背を向けることになる。
そのキラーリアさんに、闇は人差し指を向けた。
思い出すのはラクルス村でのこと。
『闇』は指を伸ばし、お母さんを貫き、僕の首を絞めた。
「だめだ、キラーリアさん避けて!!」
僕は叫ぶが、そもそも空中で自由落下する最中にできることなどほとんどない。
『闇』の指が伸び、キラーリアさんの背中に迫る。
「くっ」
キラーリアさんはうめいて空中で身をよじる。
なんと、空中で身を翻して剣で『闇』の指を弾こうとする。
なんなんだ、あの騎士!?
僕の力なんて問題にならないくらい強いんじゃないか!?
だが、『闇』はさらに一枚上手だ。
というよりも、そもそもキラーリアさんの剣を、やはり『闇』の指はすり抜けたのだ。
そして、キラーリアさんの鎧をもすり抜け、腹を直接刺す。
「ぐっ!!」
苦痛の声を上げ、キラーリアさんは地面に落下した。
アル王女が叫ぶ。
「キラーリア!!」
アル王女が叫び、『闇』に向けて大剣を抜く。
「パド、お師匠様、一体何があったの!?」
隣の部屋からリラがやってくる。
お母さんも一緒だ。自分の意思では動かないお母さんも、誰かが歩けといえば歩くのだ。
さらに、小屋の外からはレイクさんとラミサルさん。
「アル王女、無事ですか!?」
「教皇猊下、おけがは!?」
アル王女と教皇がともに無事だと告げると、2人はホッとした表情。
いや、でも、キラーリアさんは!?
一方、お師匠様が僕に尋ねる。
「パドっ!! 村を襲った『闇』っていうのは、アレかい?」
「わかりません。あの『闇』は倒したはずですし」
あるいは、倒したと思わされただけなのか?
もしもアレがルシフの手の者だというなら、漆黒の刃で斬られたフリをして消えて見せただけってことも……
そんなことを考える僕に、アル王女が叫ぶ。
「小僧、今重要なのは同一個体かではなく、同じ種かだ」
言われ気づく。
お師匠様の問いは、例えるなら『あれは犬か』という質問であって、『あれはポチか』という質問ではなかった。
「それは、そうだと思います。でも、僕が殴ったときは少なくとも手応えはあったんです。あんな風にすり抜けたりはしませんでした」
ラクルス村で、僕が『闇』を殴りつけたときは、さっきのキラーリアさんがすり抜けたような現象はおきなかった。
お師匠様は今度はアル王女に尋ねる。
「あのキラーリアってお嬢さん、魔法は使えるのかい?」
「いや、アイツは魔力0だ。剣術は見ての通り尋常ではないが」
いや、あの跳躍は剣術とかそういう次元を超えていると思うんですけど。
「ふむ、なら試してみるか」
お師匠様はそう言うと、両手を『闇』に向ける。
その手が赫く光り、収束。
同時に膨大な熱量が放出され、炎の槍となって闇に突き進む。
「これが、アラブシ・カ・ミランテの魔法……」
なにやら教皇が驚愕の声を上げている。
お師匠様の魔法は教皇すら戦慄させる威力らしい。
だが。
炎の槍は『闇』をあっさりとすり抜けた。
「効かんではないかっ!!」
アル王女が叫ぶ。
「そのようだね。なら、次はこれだ」
お師匠様は再び両手に魔力をためる。
ただし、今度は金色に輝かせる。
熱はないが、神々しい。
それを見て、教皇が叫ぶ。
「浄化の魔法!? まさかっ」
お師匠様の手から光に槍が『闇』に突き進む。
『闇』の左胸にぶち当たり、ヤツの笑みが消える。
「当たった!? 効いているのか? だが何故!?」
アル王女の疑問に、お師匠様が言う。
「やはりね。ヤツは実体を持たない魔力の塊だ」
「なるほど、ゴーストのようなものということですか」
教皇も頷いて言う。
ゴースト。幽霊?
でも、人は死んだらあの真っ白い世界に行くはずじゃ……
「そこの老人2人。悪いが今は説法や授業の時間ではなく、戦闘中だ。分かるように説明してくれ」
アル王女の言葉に、お師匠様が言う。
「つまり、ヤツを攻撃するならば魔力そのものを当てなければならないってことさ。そうじゃなければ煙のようにすり抜けちまう」
「でも、僕の拳は……」
「200倍などという規格外れの魔力を持っていればまた違うかもしれんがね」
言いかけた僕に、お師匠様は答える。
「確かにゴーストならば、物理攻撃や物理現象を介する魔法が通じないのは分かります。が、そもそもゴーストならば向こうも物理攻撃ができないはずでは?」
教皇の問いはもっともに思える。
もしも、ヤツが物理的な存在でないなら、そもそも小屋を破壊することも、お母さんやキラーリアさんを貫くことだってできないのではないか。
「誰もヤツがゴーストだ等とは言っていない。必要に応じて、攻撃の瞬間だけ指先を実体化しているんだろうさ」
なるほど。確かに目の前の現象を見ればそういうことなのかもしれない。
そうかもしれないが。
「厄介すぎるだろ、それは!!」
アル王女の叫び声は、それこそもっともすぎた。
「私に言われても困るね。それより、来るよ!!」
お師匠様が叫んだ瞬間、『闇』の両手から10本の指がこちらに向かって伸びて来た。
「全員、動くんじゃないよっ!!」
お師匠様が叫び、三度両手を空に向ける。
今度は攻撃魔法ではなく防御魔法。
光の結界が僕たちを包む。
闇の指がその結界を叩く。
同時に小屋の残った天井や壁、扉、家具が根こそぎ破壊されていく。
「ちっ、人様の家をぶち壊しやがってっ!!」
お師匠様が苦々しく言うが、1番の問題はそこじゃない。
僕ら全員の思いをレイクさんが代弁する。
「それも問題ですが、なによりもこのままではジリ貧です」
「確かにね、私の魔力も永遠じゃない。騎士のお嬢ちゃんも放置してはおけないしね」
その通りだ。
お師匠様の魔力が尽きたら僕らはやられるだろう。
いや、僕の結界魔法もあるし、もしかしたら教皇も似たような魔法は使えるかもしれないけど、いずれにしてもジリ貧である。
キラーリアさんの様子も気になる。お母さんと同じことになるのでは。
だが、アル王女はそれ以上の問題を提示する。
「それ以上に問題なのは、私たちがそれぞれの戦闘力を認識していないことだろう」
確かに。
僕はアル王女や教皇達の実力なんてほとんど分からない。
アル王女も教皇や僕らの実力は分からないだろうし、教皇も同じだ。
そもそも、お師匠様がこんなに強いなんて初めて知ったし。
「なら、とっとと自我戦力分析をしな。この結界は、半刻ももたないよ」
お師匠様が言う。半刻とは前世で言うところの15分ほど。
お師匠様の言葉に、それぞれが自分の力を語り出す。
まずは教皇。
「私は回復系の魔法を最高位まで使えます。ただし、戦闘用の魔法はほぼ無理です」
ラミサルさん。
「浄化魔法と回復が使えます。ただ、そもそも戦闘など訓練すら受けていません」
アル王女。
「剣術はともかく、魔法は使えん。魔力はあるそうだが、教会が契約させてくれなかったからな」
レイクさん。
「回復魔法や日常生活用の魔法は使えますけどね……できれば私に戦闘を期待しないでほしいですね。むしろ今すぐ逃げ出したいです」
もちろん、リラは戦いなんてできない。まして、心を失っているお母さんは論外。
うーん、実は戦闘要員少なくない?
アル王女の剣術はすごいのかもしれないけど、キラーリアさんと同じ結果にしかなりそうもない。
「どうしましょう、お師匠様」
泣きそうな気分で言う僕に、お師匠様は怒鳴りつけた。
「少しは自分の頭で考える癖をつけな、この馬鹿弟子がっ」
そんなことを言われても……
そう思いつつ、考える。
まず、今の話を聞いて、戦力になるのはお師匠様と僕、それにラミサルさんか。
アル王女は『闇』への攻撃手段を持たず、他の人たちはそもそも戦闘ができない。
この際、非戦闘員はむしろ負担だ。
お師匠様が結界魔法に集中して攻撃できないのもそのせいだ。
特にリラとお母さんはとっとと逃がすべきだ。
キラーリアさんが大けがをしているとするならば、回復魔法を使える教皇やレイクさんはキラーリアさんの元に送りたい。
だとすると……
僕の頭の中に戦い方のイメージがわいてくる。
僕がその方針を話すと、お師匠様が少しだけ改良して採用してくれた。
――なんでいまさら!?
僕は壊れた屋根から上空を睨む。
そこには、ラクルス村に現れたのと同じ、ニヤニヤと白い歯を見せる黒い人型。
くそっ。
また、ルシフが動いたのか!?
いや、『闇』を送り込んだのがルシフだというのはあくまでも推測。
だけど、なんにしても、『闇』は確実にこの小屋を狙った。
狙いは僕?
それとも、アル王女?
あるいは教皇か、それとも……
そこまで考えてハッとなる。
皆は無事なのか!?
慌てて周囲を見回すと、アル王女や教皇、お師匠様はほこりまみれになりつつも、立ち上がっている。
リラとお母さんがいる別室はそもそも攻撃を受けていない。
レイクさん達は……
そこまで考えた時だった。
『闇』に向かって跳ぶ金色の存在。
「うぉぉぉぉぉ」
雄叫びと共に『闇』に切迫するのはキラーリアさん。
って、どんな跳躍力だよ!?
たぶん、10メートルはあるぞ!!
いや、僕なら可能だけど。でも、僕の場合足下にでっかいクレーターつくっちゃうからなぁ。キラーリアさんが飛び立った後にそんなものはない。
キラーリアさんも何か特別な力を持っているの?
だが、剣を構えてツッコんでいくキラーリアさんの攻撃は不発に終わった。
躱されたとか、弾かれたとかではない。文字通り『闇』を通り抜けてしまったのだ。
「なに!?」
キラーリアさんもこれには驚いたらしい。
驚きの声を上げる。
当然のことながら、結果としてキラーリアさんは空中で『闇』に背を向けることになる。
そのキラーリアさんに、闇は人差し指を向けた。
思い出すのはラクルス村でのこと。
『闇』は指を伸ばし、お母さんを貫き、僕の首を絞めた。
「だめだ、キラーリアさん避けて!!」
僕は叫ぶが、そもそも空中で自由落下する最中にできることなどほとんどない。
『闇』の指が伸び、キラーリアさんの背中に迫る。
「くっ」
キラーリアさんはうめいて空中で身をよじる。
なんと、空中で身を翻して剣で『闇』の指を弾こうとする。
なんなんだ、あの騎士!?
僕の力なんて問題にならないくらい強いんじゃないか!?
だが、『闇』はさらに一枚上手だ。
というよりも、そもそもキラーリアさんの剣を、やはり『闇』の指はすり抜けたのだ。
そして、キラーリアさんの鎧をもすり抜け、腹を直接刺す。
「ぐっ!!」
苦痛の声を上げ、キラーリアさんは地面に落下した。
アル王女が叫ぶ。
「キラーリア!!」
アル王女が叫び、『闇』に向けて大剣を抜く。
「パド、お師匠様、一体何があったの!?」
隣の部屋からリラがやってくる。
お母さんも一緒だ。自分の意思では動かないお母さんも、誰かが歩けといえば歩くのだ。
さらに、小屋の外からはレイクさんとラミサルさん。
「アル王女、無事ですか!?」
「教皇猊下、おけがは!?」
アル王女と教皇がともに無事だと告げると、2人はホッとした表情。
いや、でも、キラーリアさんは!?
一方、お師匠様が僕に尋ねる。
「パドっ!! 村を襲った『闇』っていうのは、アレかい?」
「わかりません。あの『闇』は倒したはずですし」
あるいは、倒したと思わされただけなのか?
もしもアレがルシフの手の者だというなら、漆黒の刃で斬られたフリをして消えて見せただけってことも……
そんなことを考える僕に、アル王女が叫ぶ。
「小僧、今重要なのは同一個体かではなく、同じ種かだ」
言われ気づく。
お師匠様の問いは、例えるなら『あれは犬か』という質問であって、『あれはポチか』という質問ではなかった。
「それは、そうだと思います。でも、僕が殴ったときは少なくとも手応えはあったんです。あんな風にすり抜けたりはしませんでした」
ラクルス村で、僕が『闇』を殴りつけたときは、さっきのキラーリアさんがすり抜けたような現象はおきなかった。
お師匠様は今度はアル王女に尋ねる。
「あのキラーリアってお嬢さん、魔法は使えるのかい?」
「いや、アイツは魔力0だ。剣術は見ての通り尋常ではないが」
いや、あの跳躍は剣術とかそういう次元を超えていると思うんですけど。
「ふむ、なら試してみるか」
お師匠様はそう言うと、両手を『闇』に向ける。
その手が赫く光り、収束。
同時に膨大な熱量が放出され、炎の槍となって闇に突き進む。
「これが、アラブシ・カ・ミランテの魔法……」
なにやら教皇が驚愕の声を上げている。
お師匠様の魔法は教皇すら戦慄させる威力らしい。
だが。
炎の槍は『闇』をあっさりとすり抜けた。
「効かんではないかっ!!」
アル王女が叫ぶ。
「そのようだね。なら、次はこれだ」
お師匠様は再び両手に魔力をためる。
ただし、今度は金色に輝かせる。
熱はないが、神々しい。
それを見て、教皇が叫ぶ。
「浄化の魔法!? まさかっ」
お師匠様の手から光に槍が『闇』に突き進む。
『闇』の左胸にぶち当たり、ヤツの笑みが消える。
「当たった!? 効いているのか? だが何故!?」
アル王女の疑問に、お師匠様が言う。
「やはりね。ヤツは実体を持たない魔力の塊だ」
「なるほど、ゴーストのようなものということですか」
教皇も頷いて言う。
ゴースト。幽霊?
でも、人は死んだらあの真っ白い世界に行くはずじゃ……
「そこの老人2人。悪いが今は説法や授業の時間ではなく、戦闘中だ。分かるように説明してくれ」
アル王女の言葉に、お師匠様が言う。
「つまり、ヤツを攻撃するならば魔力そのものを当てなければならないってことさ。そうじゃなければ煙のようにすり抜けちまう」
「でも、僕の拳は……」
「200倍などという規格外れの魔力を持っていればまた違うかもしれんがね」
言いかけた僕に、お師匠様は答える。
「確かにゴーストならば、物理攻撃や物理現象を介する魔法が通じないのは分かります。が、そもそもゴーストならば向こうも物理攻撃ができないはずでは?」
教皇の問いはもっともに思える。
もしも、ヤツが物理的な存在でないなら、そもそも小屋を破壊することも、お母さんやキラーリアさんを貫くことだってできないのではないか。
「誰もヤツがゴーストだ等とは言っていない。必要に応じて、攻撃の瞬間だけ指先を実体化しているんだろうさ」
なるほど。確かに目の前の現象を見ればそういうことなのかもしれない。
そうかもしれないが。
「厄介すぎるだろ、それは!!」
アル王女の叫び声は、それこそもっともすぎた。
「私に言われても困るね。それより、来るよ!!」
お師匠様が叫んだ瞬間、『闇』の両手から10本の指がこちらに向かって伸びて来た。
「全員、動くんじゃないよっ!!」
お師匠様が叫び、三度両手を空に向ける。
今度は攻撃魔法ではなく防御魔法。
光の結界が僕たちを包む。
闇の指がその結界を叩く。
同時に小屋の残った天井や壁、扉、家具が根こそぎ破壊されていく。
「ちっ、人様の家をぶち壊しやがってっ!!」
お師匠様が苦々しく言うが、1番の問題はそこじゃない。
僕ら全員の思いをレイクさんが代弁する。
「それも問題ですが、なによりもこのままではジリ貧です」
「確かにね、私の魔力も永遠じゃない。騎士のお嬢ちゃんも放置してはおけないしね」
その通りだ。
お師匠様の魔力が尽きたら僕らはやられるだろう。
いや、僕の結界魔法もあるし、もしかしたら教皇も似たような魔法は使えるかもしれないけど、いずれにしてもジリ貧である。
キラーリアさんの様子も気になる。お母さんと同じことになるのでは。
だが、アル王女はそれ以上の問題を提示する。
「それ以上に問題なのは、私たちがそれぞれの戦闘力を認識していないことだろう」
確かに。
僕はアル王女や教皇達の実力なんてほとんど分からない。
アル王女も教皇や僕らの実力は分からないだろうし、教皇も同じだ。
そもそも、お師匠様がこんなに強いなんて初めて知ったし。
「なら、とっとと自我戦力分析をしな。この結界は、半刻ももたないよ」
お師匠様が言う。半刻とは前世で言うところの15分ほど。
お師匠様の言葉に、それぞれが自分の力を語り出す。
まずは教皇。
「私は回復系の魔法を最高位まで使えます。ただし、戦闘用の魔法はほぼ無理です」
ラミサルさん。
「浄化魔法と回復が使えます。ただ、そもそも戦闘など訓練すら受けていません」
アル王女。
「剣術はともかく、魔法は使えん。魔力はあるそうだが、教会が契約させてくれなかったからな」
レイクさん。
「回復魔法や日常生活用の魔法は使えますけどね……できれば私に戦闘を期待しないでほしいですね。むしろ今すぐ逃げ出したいです」
もちろん、リラは戦いなんてできない。まして、心を失っているお母さんは論外。
うーん、実は戦闘要員少なくない?
アル王女の剣術はすごいのかもしれないけど、キラーリアさんと同じ結果にしかなりそうもない。
「どうしましょう、お師匠様」
泣きそうな気分で言う僕に、お師匠様は怒鳴りつけた。
「少しは自分の頭で考える癖をつけな、この馬鹿弟子がっ」
そんなことを言われても……
そう思いつつ、考える。
まず、今の話を聞いて、戦力になるのはお師匠様と僕、それにラミサルさんか。
アル王女は『闇』への攻撃手段を持たず、他の人たちはそもそも戦闘ができない。
この際、非戦闘員はむしろ負担だ。
お師匠様が結界魔法に集中して攻撃できないのもそのせいだ。
特にリラとお母さんはとっとと逃がすべきだ。
キラーリアさんが大けがをしているとするならば、回復魔法を使える教皇やレイクさんはキラーリアさんの元に送りたい。
だとすると……
僕の頭の中に戦い方のイメージがわいてくる。
僕がその方針を話すと、お師匠様が少しだけ改良して採用してくれた。
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