神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

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第三部 エルフと龍族の里へ 第三章 龍と獅子と少年少女達

2.見据えた未来

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 アル様、レイクさん、龍族のおさ、エルフのおさ、そして何故か僕とリラとバラヌが、エルフの長の屋敷で顔をつきあわせて会談をおこなっていた。

「私はここに提案する。人族、龍族、エルフ、獣人、ドワーフの5種族代表者が集まる会議の開催を」

 会談の後半、アル様が放った言葉は、特大級の爆弾だった。

 ---------------

 その、およそ30分ほど前。

 僕らと龍族、それにエルフ族の代表が、エルフの長の屋敷に集まった後。
 最初に口を開いたのは龍族の長だった。

「人族の王の娘よ。そなたの本音を聞かせて貰おう。そなたは王となって何をなさんとす?」

 そんなことを尋ねられても、アル様は単に自分の呪いを解きたいだけなんじゃ……
 僕はそう思ってアル様の顔をチラっと見たが、アル様の表情には不敵な笑みが浮かんでいた。

「いいだろう」

 アル様は頷き、語り出した。

「私が王となったときなさんとするのは、この世界の欺瞞の解消だ」
「具体的に言ってもらおう」
「そうだな。人族の王はこの大陸全てを統治していると自称している。だが、それは詐言に過ぎない」

 それは僕も何度も聞かされたこと。
 龍族やエルフ、あるいは獣人やドワーフに対して、人族の支配は事実上及んでいない。

 龍の長は深く頷く。

「ふむ、確かに我らは人族の王に支配されているつもりはない。それはエルフや獣人、ドワーフ達も同じであろう」
「それのみならず、人族すら王は統治できていない」

 え、そうなの?

 アル様の言葉に、レイクさんが慌てる。

「アル王女、それは……」
「黙れ、レイク。口を挟むな」
「いいえ、挟みます。人族全てを国王が統治しているからこそ、この国の平和は成り立っているのです。だからこそ、私は諸侯連立派の王子に代わってアル王女を擁立して……」

 レイクさんがなにやら言いつのろうとするが、アル様は冷たい視線を彼に向ける。

「レイク、私はお前の傀儡になるつもりはないぞ」
「なっ……私は決してそのような。ただアル王女には王家の統治を引き継いでいただきたいと申し上げているだけで」
「ならば、ここでハッキリ言っておこう。私はこの世界の有り様を変革する。故に、お前の望む王にはならない」

 レイクさんが固まる。

 ――なんだ? これはどういうことだ?
 ――アル様とレイクさんがここに来て対立するってこと?

 状況が読めなくなって、僕は困惑する。
 もともと、僕やリラやバラヌはこの場に座っている以上のことはできないと思っていたけど。

「ふむ、人族の王の娘よ、王は人族をも統治できていないとはいかなる意味か?」
「私は幼き日、この世界のもっとも底辺の街に捨てられた。そこでは誰1人、王に支配されたりなどはしていなかった」

 そこまで言うと、アル様は僕に目を向ける。

「パド、お前の村ではどうだ? 村人達は、たとえば王や王国の名前を知っていたか?」

 突然話を振られ、僕はビクっとなる。
 どう答えるのが正解だろう。いや、ここは素直にそのまま言えばいいか。

「国の名前は……大人なら知っている人もいたと思います。でも、王様の名前は村長も知らなかったんじゃないかな」

 っていうか、未だに僕は王様の名前を覚えていない。

「ということだ。自分の名すら覚えられていない王が、この大陸を統べているなど笑止千万ではないか」

 アル様の言葉は多分正しい。
 僕もジラ達も、お父さん達も、王様に支配されているなんて思っていなかったから。
 村長はどうか分からないけどね。

「ふむ、面白いげんだ。だが、人族の王の娘よ。それはそなたの立場を危うくする言葉ではないのか? そなたが望む王位に価値がないと述べているに等しい」
「その通りだ。今の王の地位に、私は何1つ価値など見いだせん」

 アル様の言葉に、龍族とエルフの長が苦笑する。
 僕は困惑し、リラは緊張している。バラヌはよく分かっていない表情だ。
 そして、レイクさんは――青ざめている。

「だから、私はこの世界の改革を行う」
「人族の王として、真にこの大陸のぬしとなるつもりか?」

 龍族の長の目が鋭くアル様を睨む。
 もし、ここでアル様が頷けば、それはアル様が龍族やエルフを統治する――言い換えれば支配すると宣言するに等しい。
 交渉は決裂だろう。

「私はそこまで傲慢でも自意識過剰でもないよ、龍族の長よ。私にできるのは剣を振るうことのみ。それで大陸を統べるなど、不可能だ」
「ならば、そなたはこの大陸をどう変革しようともくろむのだ?」

 龍族の長の問いに、アル様は宣言した。

「私はここに提案する。人族、龍族、エルフ、獣人、ドワーフの5種族代表者が集まる会議の開催を」

 それはこの世界の暗黙の了解を吹き飛ばす提案だった。

 ---------------

 沈黙の間を破ったのは、レイクさんだった。

「アル王女、あなたはこの世界を壊すつもりですか」
「ああそうだな。この世界の暗黙の了解とやらをぶち壊し、世を先に進めるつもりだ」

 レイクさんは押し黙る。
 その表情は非常に硬い。

「人族の王の娘――いや、アルよ。そなたの提案の真意を述べよ」

 龍族の長はそう言った。
 アル様のことを、王の娘ではなく、一個人として語るようになっている。

「なに、簡単なことだ。この大陸は『暗黙の了解』による互いの種族間の不干渉によってバランスが保たれている」
「そなたはそれを否とするのか?」
「その通りだ」
「なにゆえに?」

 アル様は龍族の長の問いに、『ふっ』と笑った。

「そこの3人の子ども達を見たからだよ、龍族の長よ」

 え? 僕とリラとバラヌ?

「人族と獣人のハーフで、龍の力を持つ少女。人族とエルフのハーフで魔力を持たぬ少年。そしてこの世界の外よりやってきた200倍の力と魔力を持つ少年。
 ……そういった存在がこの世界に現れ始めている」
「ふむ……」

 龍族の長は僕らをチラリと見る。

「確かに、それぞれなかなかに特殊な生まれのようだな。それで?」
「分からぬか、龍族の長よ。『暗黙の了解』などという曖昧なモノは、そこの3人のようにそのことわりから外れた存在が現れればあっという間に瓦解するのだよ」

 暗黙の不干渉から外れた存在。確かにリラやバラヌはその通りだ。
 いや、僕だってそうだ。ラクルス村は、結局僕を受け入れきれなかったのだから。

 龍族の長は大きく頷く。

「理論としては理解しよう」
「そして、そのことわりから外れた最たる存在があの『闇』と、それを生み出す者だ」
「そなたはあの『闇』の正体を知っているのか?」

 アル様は頷き、ルシフのことやリリィの変異について語った。

「なるほどな。それが事実ならば、確かにこれまでの暗黙の了解を打ち崩すにはじゆうぶんかもしれん」
「ゆえに、私は提案するのだよ。暗黙の了解を捨て、真実5つの種族による決まり事を作ろうと」

 アル様はこんなことを考えていたのか。

「それはそなた個人の考えか?」
「そうだ……と言いたいところだがな。私にこの考えを与えたのは、そこのリラ」

 え、リラ?
 僕はリラの顔を伺う。
 彼女はアル様に頷き、そして龍族の長を正面から見た。

「龍族の長様。私は人族と獣人の間に生まれ、龍の因子をもつ者です。この世界のことわりから外れた存在です。
 私はなんども自分の生まれを恨みました。同時にこの世界を恨みました。でも、恨んでも何も解決しませんでした。
 私はこの世界を変えたいと思うようになりました。人も獣人も龍族も、あるいはエルフもドワーフも分け隔て無く暮らせる世界にしたいと」

 ――リラ……
 ――きみはそんなことを考えていたのか。

 いや、彼女のこれまでの経緯いきさつを考えれば、当然帰結する考え方なのかもしれない。

「私にそういう考え方を教えてくれたのは彼です」

 そう言って、リラは僕を指さした。

 ――え、なんでそこで僕!?

「パドは私を受け入れてくれました。
 人族とか獣人とか、そんなことは関係なく、私と出会えて良かったと。
 私は、彼のその言葉があったから、今でもこうして生きています。
 だから、全ての種族が手を取り合える世界を作ることで私はその言葉に報いたい」

 全員の視線が僕に集まる。

 ――いや、あの、ちょっと待ってっ。
 ――僕は世界を作り替えるとか、そんな大それたこと考えてもいないよ!?

 そう叫びたかった。
 だけど。
 言えない。そんなことは。

「龍族の長よ。聞いての通りだ。私は5つの種族の橋渡しをなさんがために王になる」

 龍族の長は目を瞑り、黙想する。

「そなたの言は確かに興味深い。だがそなた自身が先ほど言ったではないか。人族の王は人族自体すら統べてはいないと。
 ならば、そなたがいくらここで展望論を語ったとしても、それは他の人族の同意を得れぬものなのではないのか?」

 龍族の長の言葉に、アル様は自虐的に笑う。

「その通りだな。私の展望をかなえるためには、おそらく多くの争いが起きるだろう。諸侯連立が素直に従うとは思えんし、たとえここで同意がなったとしても、ドワーフや獣人達が納得するとも限らん」
「ならば、そなたの言こそ虚言といえよう」
「だが、理想論を掲げそこに向かって歩まねば、何も変わらん」
「なるほどな」

 龍族の長は再び黙想に入る。

 やがて、彼は言った。

「やはり、我らとしては受け入れがたいな」
「理由を聞かせてはもらえないか?」
「単純な話だ。我らは根本的に人族が嫌いだからだよ」

 龍族の長はそう言った。
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