神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

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第四部 少年少女と王侯貴族達 第一章 王都への行程

4.きわめて安易な解決法

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 アル様達3人が晩餐会に向かってから、少しして。
 僕らもお腹がすいたなぁなどと思っていた時。

 突然部屋の扉が蹴り開けられた。
 入ってきたのは完全武装の兵士達3人ほど。
 その中の1番偉そうな人が叫ぶ。

「貴様ら、動くんじゃないっ!!」

 おいおい、これは。
 この部屋の扉は2カ所。もう一方の扉からも2人の兵士が現れる。
 全員僕らに剣を向けて。

 バラヌが泣きそうな声で悲鳴を上げる。

「え、えっ、なに!?」

 ルアレさんはピッケを庇うように立つ。彼は他の者――僕やリラやバラヌ――を庇うつもりはないらしい。分かってはいたけど。
 リラは兵士達に警戒の視線を向けるが動かない。

 僕はリラに言う。

「リラ、バラヌを頼む」
「ええ」

 リラはバラヌを抱きかかえた。

 一方のルアレさんは僕に問いかける。

「どうされるんですか、パドくん?」
「いや、それ、僕に聞きます?」
「これは人族同士の争いでしょう」

 あー、確かに。
 この場にいるのは、エルフのルアレさん、龍族のピッケ、ハーフのリラやバラヌなわけで、人族同士の争いなら僕が対応するべき……なのか?

 しかたない。7歳児の見た目の僕が何を言っても無駄な気もするけど交渉はするか。

「なんなんですか、これは?」

 僕が尋ねると、先ほどの1番偉そうな兵隊(以下仮に兵隊長とする)が答える。

「王女殿下の名をかたる不届き者の一味を捕らえる」

 あー、なるほど。そういう展開か。
 ようするに、アル様を偽物ということにして、引っ捕らえて殺しちゃえという。
 確かに、その場合は当然僕らも殺さなくちゃいけないよね。

 一応、ブッターヤ領主の出方としては、考えられる可能性の1つではあったか。
 乱暴かつ安易な手法だけど。

 だいたい、さっきまでのブッターヤ領主の態度と今の状況がかみ合わない気がする。何かその間に状況の変化があったんだろうか。

 しかし、そうなると交渉の余地とかなさそうなんだよなぁ。
 なにしろ、向こうは本物かどうかを吟味しているんじゃなくて、本物だと理解しながら偽物だと決めつけているわけで。
 王族の名を偽った相手を見逃す理由もないだろうし。

「で、パドくんどうするんですか?」

 ルアレさんはあくまで他人事。
 いざとなったらピッケがドラゴン形体になればどうにでもなると思っているのだろうか。
 一方、リラとバラヌの顔には怯え。

 僕は――う~ん、どうしよう。
 相手は5人。こちらも5人。
 いや、バラヌは戦えないとしても、ピッケか僕の力ならこの状況から逃げ出す方法はいくらでもありそうだけど――

 ――あ。

 そこまで考えて気づく。
 つまり、こいつら、僕やピッケの力や正体を知らないんだ。
 非戦闘員の大人1人と子ども4人を捕まえるだけの簡単なお仕事だと思っているはずだ。
 龍族の子どもやら200倍の力と魔力やらなんていう情報を持っていたら、たった5人の兵士だけで来るわけがない。

 だとしたら、ピッケの正体を見せつければ――いや、ダメか。
 アル様にとって龍族との契約はいわば切り札。
 ここでいきなりネタばらしすべきではないだろう。

 しかし、素直に従うわけにもいかない。
 本当に捕らえるだけなのか、それともこの場で斬り捨てられるかも分からないのだ。
 仮に僕が素直に従おうとしても、ルアレさんとピッケは従わないだろう。彼らはあくまでもエルフと龍族の代表としてこの場にいる。味方ではあっても、自分たちの命を危険にさらしてまでもアル様につくす義理はない。

 だいたい、それは僕も同じだ。
 レイクさんやキラーリアさんはともかく、僕もリラもバラヌも、別にアル様の部下になった覚えはない。

 ならばどうする?
 戦って負けるとは思わない。
 兵士達はそれなりに訓練を受けているのだろうけれど、『闇』よりははるかに弱いだろう。
 異端審問官のように魔法が使えるわけでも、獣人達のように獣の因子をもっているわけでもない。
 漆黒の刃を使うまでもなく、僕1人で倒せる。

 問題は、僕が戦うとまず間違いなく相手を殺してしまうということ。
 僕が普通に殴っただけでも、かつてアベックニクスがそうなったように、兵士の頭は粉々になるだろう。
 だいぶ力を操れるようになってきたとはいえ、僕の戦いの技術はまだまだだ。

 ならばどうするか。

「4人とも、こっちへ」

 僕がそう言うと、リラはバラヌを、ルアレさんはピッケを抱きかかえたまま僕のそばに来る。

 ルアレさんが僕に尋ねる。

「どうするんですか、パドくん?」
「とりあえず、逃げましょう」

 相手を殺すのは最終手段だ。

「ほう。しかし出入り口は塞がれているようですが」

 ちなみにこの部屋には窓はない。
 廊下と別の部屋に囲まれている部屋らしいから。

「だったら、出入り口を作ればいいんです」

 僕はそう言うと、自分の背後の壁をぶん殴る。
 僕のチートによって、壁はあっさりと崩れ、隣部屋への逃げ道が出来上がった。

「なるほど。わかりやすいですね」

 僕ら5人は唖然としている兵士達を尻目に、隣部屋に飛び込んだのだった。
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