神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

文字の大きさ
110 / 201
第四部 少年少女と王侯貴族達 第一章 王都への行程

3.獅子と豚の化かし合い(準備編)

しおりを挟む
 領主館の中に僕らを案内しながら、ブッターヤ領主はアル様に尋ねた。

「本当にお部屋は1室でよろしいので?」

 僕ら――子ども組とルアレさんをチラチラ見ながらアル王女に尋ねる彼。

「かまわん」
「然様でございますか。恐れながら伺いたいのですが、彼らはいかなるお立場の方々なのでしょうか」
「説明する必要はないな」

 冷たい言葉で斬り捨てるアル様。

「もちろん、王女殿下のお連れの方々について詮索するのは本位ではございません。ですが、我が領主館に招き入れるからには、せめてお立場とお名前だけでも教えて戴ければ幸いでございます」

 ブッターヤ領主のその言葉に、アル様は心底面倒そうな顔をし――とはいえ、それなりの正論でもあるためか、拒否し続けることもしなかった。

「我が国の臣民だよ。当然だがな。私が信頼している協力者達だ。名前は――」

 アル様が順々に僕らの名前を語っていく。
 ルアレさんのこともデゴルアではなく、ルアレと紹介した。
 ここで偽名を使う意味も無い。

「協力者、でございますか」

 ブッターヤ領主は少し顔を引きつらせる。平民の、それも5人中4人は子どもだからね。

「なるほど、王女殿下もそのようなご趣味が」

 ボソッと彼が発した言葉の意味は、僕にはよく分からなかった。

 ---------------

 ブッターヤ領主が、僕らを案内した一室はやたらと立派だった。
 広さはラクルス村の僕の家の5倍はある。大きなテーブル、いくつもの椅子。いくらするんだか分からない調度品の数々。
 テーブルの上にはガラスの花瓶が置かれ、真っ赤なベニーラの花が飾られている。ベニーラというのは茎に棘がある、大きな花を咲かせる植物だ。前世の世界で言えば薔薇に近いと思う。

「それではお疲れをお取りください。後ほど些末ではありますが晩餐会を開かせて戴きたく存じます。アル殿下とレイク殿、キラーリア殿、是非ご一緒いただければ幸いです」

 やはり、ブッターヤ領主にとって客人はその3人だけらしい。

「ふむ。長居をするつもりはないのだが」
「ですが、本日はもう日も暮れます。王都へ向かわれるにしても、明朝馬車をご用意させていただきますので」
「そうか。では食事は馳走になろう。彼らにも食事を頼む」
「もちろん、お連れの方々のお食事はこのお部屋に運ばせていただきます」

 あくまでも、僕らは晩餐会には呼ばないぞという態度。
 そりゃあそうだろうけどね。

「では、後ほど」

 ブッターヤ領主はそう言って部下を引き連れて、頭を下げて部屋から出て行った。

 ---------------

 ブッターヤ領主達がいなくなった後、アル様はソファーにドカッと腰を下ろした。

「やはり、ああいう会話はなかなかに疲れるな、『闇』と戦っていた方がマシだ」
「お気持ちは分かりますが、王都に行けばそのような会話いくらでもしていただきますよ」

 レイクさんがそう言うと、アル様は心底嫌そうな顔をした。

「まったく、肩が凝ることだな。ああ、お前達もいつまでも突っ立ってないで適当に座れ」

 一応、王女様を尊重して立ちっぱなしだった僕らは、思い思いに床や椅子に腰掛けた。

「ところでキラーリア」

 アル様が声を潜めて言う。

「はい」
「盗聴は?」

 え、なんでそれをキラーリアさんに聞くの?

「扉の向こうに2人ほどの気配が。聞き耳を立てているかどうかは分かりませんが」

 マジか。
 驚いたのは僕だけではなかったようで、リラが代表して言う。

「よく分かるわね、そんなの」
「大したことではない。ちょっと訓練すればすぐに分かるようになる」

 そうなの!?
 あ、でもそういえばお師匠様も、『闇』が攻撃を仕掛ける前に気づいていたなぁ。
 案外、気配って訓練すれば読めるようになるんだろうか。

 僕がそんなことを真剣に考えていると、アル様が言う。

「……真に受けるなよ、パド。コイツはある意味お前や私以上の天才だ。普通の人間に扉の向こう側の様子が分かってたまるか」

 やっぱりそうだよね。
 じゃあ、お師匠様は……あの人はあの人で天才だから、常に薄い結界を張っていたとかそんなところだろ。たぶん。

「とはいえ、別に聞かれて困るような話もないがな。せいぜい美味い飯をごちそうになって、明日の朝を迎えるだけだ」

 アル様の言葉に、レイクさんも頷く。

「確かに、あまり時間もありそうにありません」

 レイクさんの言葉に、アル様は頷き、僕とキラーリアさんとリラは首をひねった。
 代表してキラーリアさんが問う。

「時間? どういうことですか?」

 確かにアル様の呪いの件はあるけれど、たぶんそのことじゃないよね。
 そのキラーリアさんに、アル様は呆れたとばかりの表情を浮かべる。

「お前らは先ほどの話を聞いていなかったのか?」

 何のことだか分からずポカンとする僕ら。
 アル様はヤレヤレといった顔で説明を始めた。

「ブッターヤとかいう領主が言っていただろう。『テキルース王子が間もなく王位を継ぐ』と」
「言っていましたが、ハッタリではないんですか?」

 僕の問いに、アル様は『やっぱり分かっていないか』という顔でさらに続ける。

「確かに王位継承問題が解決したというのはハッタリだろうさ。だが、ヤツは『間もなく王位継承権が決する』ではなく『王位を継承する』と言ったんだぞ」
「それって何か違いがあるんですか? どのみちハッタリなんだったら……」
「継承権を得るというのは、あくまでも未来に継承する人間を決めるという話だ。それに対して間もなく王位を継承するというのは現在進行形の話だ。あの領主はハッタリをかけたつもりで、つい漏らしたんだよ。もうすぐ、現国王の身に何かが起きるとな」

 僕らは顔を見合わす。

「むろん、こちらがそう考えることも含めたブラフの可能性もあるが、ヤツがそこまで考えて話していたようにも見えん」

 つまり、『王位をテキルース王子が継ぐと決まった』というのはハッタリだが、『もうすぐ誰かに王位継承がなされる』のは事実ということ……なのか?

 少し強引な推理のような気がする。そう感じたのは僕だけではないようで、キラーリアさんも眉をひそめて言った。

「考えすぎではないのですか?」
「かもしれんな。だが、その可能性を示されてしまえば、こちらは急ぐしかなくなる。私がいないうちに国王に死なれたらお終いだ」

 僕はふと思いついて尋ねる。

「まさかと思うんですけど、王子達が王様をその……他の王子様と同じように……ってことはないですよね?」

 テキルース王子達が国王を殺害しようとしているのではないか。
 さすがに直接表現は避けたが、そういう疑問もわく。
 僕の言葉に、全員が固まる。

「ま、可能性はあるな。もっとも国王はすでに老体だからな。正直、1年間も私が王都をあけたのも、かなりの賭だったんだよ。途中で国王が寿命死してもおかしくなかった」

 それでも、アル様は動かざるをえなかった。
 人族の貴族達の協力はほとんど見込めず、起死回生の手は龍族やエルフの後ろ盾を得る以外になかったのだ。

 そこまで話したところで、ルアレさんが別の話題を口にする。

「ところで、本当に晩餐会にはお三方でご出席されるんですか?」
「そのつもりだが、何か問題があるか?」
「私には人族の事情はあまりよく分かりませんが、ここはいわば敵地のようなものでしょう。本当に大丈夫なのでしょうか?」

 確かに。
 ディナーに毒でも盛られたら大変だ。

 その問いにはレイクさんが答える。

「そこはご心配なく。アル殿下の食べる食事は十分に相手方に毒味させますし、私やキラーリアは水すら口にするつもりはありません」

 なるほど。

「いや、そうではありません。残った我らが襲われたらどう対処するのかという話です」
「さすがにその可能性は低いと思いますが」
「ですが、0ではないでしょう? 人族同士の争いであなた方が亡くなったとしても関知するつもりもありませんが、私としては龍の方々の息子様を見守る義務があります。非戦闘員だけ残されても困ります」

 ルアレさんの懸念は分かる。
 実際、このパーティの戦闘員はアル様とキラーリアさんなのだ。

「もし、命の危険を感じたらどんな手段を使って逃げ出してもらって構わんよ。私やレイクがここで死ぬようなら、見限ってエインゼルの森林に戻ってくれ。その時はパドとリラの面倒も見てもらえると助かる」

 アル様はあっさりそう言った。

「なかなかに無責任な発言にも聞こえますが?」
「悪いな。正直、今の私には駒が足りない」

 率直なアル様の言葉に、ルアレさんはため息をつきつつ、とりあえず納得した様子で頷いた。

「まあいいでしょう」

 そこまで話したとき、晩餐会の準備ができたと、領主の部下がアル様達を呼びに来たのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...