僕らはロボットで宇宙《そら》を駆ける

ななくさ ゆう

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第三章 エスパーダ、発進!

11.初めての操縦

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 ペダルから足を離すと、エスパーダの加速は止まった。

『ソラさん、大丈夫ですか?』

 トモ・エの声が聞こえる。

「あ、うん、大丈夫。ちょっとびっくりしたけど」

 舞子の呆れ声が聞こえてくる。

『全く、Gのことは説明受けたでしょ』
「そうだけど、ついさぁ」

 言いながら、周囲を確認する。
 右上の方に白い宇宙船が見えた。全体的に細長で曲線でできている。

(へぇ、宇宙船って外側も白いんだ)

 考えてみれば、外から宇宙船を見るのは初めてだった。
 そして気がつく。
 船から自分がどんどん離れていっている!

「ね、ねえ、船がどんどん遠くにいってるんだけど」
『ええ、そうですね』
「いや、そうですねじゃなくって」

 考えてみれば、加速は止めたがブレーキを踏んだわけではない。
 空気抵抗もない宇宙空間ではそのままエスパーダは進み続ける。
 ゲームでもそうだったのだが、うっかりしていた。
 この漆黒の闇の中、船から離れてしまうのは恐怖だった。

『今日の課題は船と相対速度を合わせることです。船の方に向かってきてください。ただし激突しないように。先ほどみたいなスピードはダメですよ』

 トモ・エに言われ、ソラはゆっくりとペダルを踏み込んだ。
 宇宙船に向かって少しずつ近づいていく。

『そうです、その調子です』

 トモ・エの声が聞こえる。
 しばらく操縦すると、だんだんと感覚がわかってきた。
 宇宙船に近づき、そのスピードに合わせて飛ぶ。

(大丈夫、ゲームよりも簡単だ)

 障害物があるわけでも敵機体がいるわけでもない。
 あの舞子と対決した決勝戦に比べれば操作自体は片手でもできる。

(だけど、もしも失敗したら)

 もし、何か失敗したら宇宙に放り出される。
 これはゲームではないのだ。

 緊張感を保ったまま、ソラは宇宙船と並んでエスパーダで宇宙を飛ぶ。

 ――しばしして。

『では今日はここまでにしましょう。船に戻ってください』

 あっという間の30分だった。
 もう終わりかとちょっと不満に思うが、明日からも訓練は続くのだ。

「了解」

 ソラはそう言って黄色いボタンを押した。

 ---------------

 ソラの次は舞子の番だった。
 ソラのように不用意にペダルを踏むこともなく、無難に最初の訓練を終えた。

 2人の訓練が終わり、宇宙船の会議室へと戻るとトモ・エが言った。

「2人共、すばらしいです。なかなかの腕前でした」

 舞子はフンっと髪を撫でる。

「腕前って、ただ真っすぐ飛んだだけじゃない」
「船に相対速度を合わせるだけでも、なかなか難しいんですよ。やはり2人は才能があります」

 ここで、ソラは気になっていたことを尋ねようと思った。

「ねえ、ずっと気になっていたんだけどさぁ」
「なんでしょうか?」
「どうしてトモ・エはエスパーダを操縦できないの? 僕らにもできるくらいなんだから、トモ・エなら楽勝じゃないかって思えるんだけど」

 ソラの問いに、トモ・エは答える。

「物理的に可能不可能ではなく、アンドロイドの禁則事項にふれるのです。
 アンドロイドは一切の武器の扱いを禁じられています。エスパーダは武器にもなりますので。
 もしも私が直接エスパーダを操縦しようとすれば、即座に私の機能は停止します。それどころか私は包丁を持つこともできません」
「でも、宇宙船は操舵しているよね?」
「この船そのものには武器を積んでいませんから」

 なるほど。
 頷くソラ。舞子は別の質問をする。

「どうして、そんなルールがあるのかしら?」

 ソラの問いに、トモ・エは少し悲しそうな顔をした

「そこには、イスラ星の悲しい歴史があります。
 今から200年以上前――イスラ星時間で200年ですから、地球時間では350年ほど前になりますが――大きな戦争がありました。人間とアンドロイドが争ったのです」
「アンドロイドが反乱を起こしたってこと?」

 ソラは尋ねる。
 なんだか本当にSFの世界みたいだ

「私も歴史上の記録としてしか知りませんが、そういうことらしいです。
 結果、人間がたくさん死に、アンドロイドもたくさん破壊されたそうです。それ以来、イスラ星ではアンドロイドに武器を持つことを禁じるプログラムを組み込むことになりました」

 ソラは納得した。

「ついでですからもう1つお話しましょう。宇宙協定では無人兵器そのものが禁止されています」
「どういうこと?」
「簡単にいえば、エスパーダのような機体を自動操縦で動かしてはいけないのです。
 宇宙船に帰還させるなどの限定的な目的では可能ですが、無人兵器での戦争はイスラ星だけでなく、宇宙条約で禁じられています」
「それはどうして?」
「戦争が過度に悲劇化するのを防ぐためです。無人兵器で攻撃するということは、自分たちは命のリスクを追わずに、相手を攻撃する――言い換えれば殺すということです。
 双方がそれを始めれば、それはもはや戦争ですらない虐殺の応酬になります」

 とても重い話だった。
 そして、思い出す。地球某国では、無人飛行兵器が実際に使われているとニュースで話していたことを。
 ソラが何も言えないでいると、トモ・エは明るい声でつけたした。

「もっとも、私達は戦争をしに行くわけではありません。レランパゴを破壊しに行くだけです」
「そうよね。別に戦争するわけじゃないもんね」

 舞子がそれに同調する。
 まあ、確かに考えすぎても仕方がない。

「あー疲れたわ。後は夕飯まで自由時間よね」
「ええ、そうですね」
「じゃ、私、ちょっと一眠りするわ。夕飯の時間には起こして」

 舞子はそう言い残すと自室に戻っていった。

「ソラさんはどうしますか?」
「うーん、僕も部屋に戻ろうかな。タブレットで本読んでみたいし」
「わかりました。では夕飯の時間になったらお知らせしますね」

 部屋に戻ると、ソラはタブレットを操作した。

(なんの本読もうかなぁ)

 国会図書館の本のデータが全部あるのだから、漫画も小説も実用書も読み放題だ。
 だが、ソラは別の本を読んでみようと思った。

 惑星イスラ星の本だ。トモ・エは日本語訳してあると言っていた。
 彼らがどんな人々で、どんな暮らしをしていたのか。

 今、ソラが知っているのは、この宇宙船やトモ・エ、それにエスパーダを作ったことと、排便の方法くらいなものだ。

(もっと彼らのことを色々知りたい)

 そう思って、ソラはタブレット上のページをめくり始めた。
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