僕らはロボットで宇宙《そら》を駆ける

ななくさ ゆう

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エピローグ

31.今は、笑おう

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 ヒガンテとの戦いは終わった。

 宇宙船に帰還し、エスパーダから下りる舞子。

『お疲れ様でした、舞子さん』

 トモ・エの音声が舞子を迎え入れた。

 隣に到着したソラのエスパーダの外装は傷だらけで、激しい戦いを繰り広げてきたことがそれだけでも分かるほどだった。
 その、傷ついた機体からソラが下りてくる。

「ソラっ!」

 舞子は喜びの声と共にソラに駆け寄る。
 ソラはヘルメットを取り、にっこり笑ってピースサイン。

「えっへん、地球を護れたよ。僕かっこよかった?」

 尋ねるソラに、舞子はあきれてしまう。

「ふんっ。そういうセリフを言わなかったらかっこよかったわね」
「えー、なんでだよぉ、ひどいなぁ」

 ソラはそんなことを言いながら、格納庫の中を歩く。

「どこにいくの?」
「トイレ。ずっとガマンしていたから」
「あっそ、とっとと行けば?」

 宇宙服には簡易的に排便をためておくことができる機能がついているが、それが溢れるほどだったのだろうか?

「へいへい」

 ソラはそう言い残して、格納庫からトイレに向かった。

 ---------------

「なんか、ソラのヤツ変だったわ」

 舞子は格納庫から操舵室に戻ってトモ・エに言った。
 さっきのソラはちょっと変だった。
 一緒に旅してきた舞子には分かる。ソラはああいうときにピースサインをしてはしゃいだりするタイプじゃない。
 無理して明るく振る舞っているような、不自然さがあったのだ。

「きっと、お疲れだったんですよ」

 トモ・エはそういいながら、操舵室を出て行こうとする。

「どこへ行くの?」
「念のため、ソラさんの様子を見てきます」
「そ、よろしく」

 ---------------

 トイレの中。
 ソラはうずくまって胃の中の物を全て戻していた。

(気持ち悪い)

 吐き気が止まらない。
 当たり前だ。
 ソラはさっき、何十人もの無抵抗な異星人――人間を虐殺してきたのだから。

 そうするしかなかった。
 他に地球を助ける方法はなかったし、彼らはどのみち自ら死ぬつもりだった。

(僕が悪いんじゃない)

 そう、自分に言い聞かせようとしても、自らが操縦するエスパーダに吹き飛ばされた異星人の姿が目に焼き付いている。

 自分は人殺しだ。
 それも、大量殺人者だ。

 そう思うと、気が狂いそうだった。
 舞子に心配をかけないようにするため、格納庫では明るく振る舞ったが、トイレに駆け込むと耐えられなかった。
 気がつくと、未消化の食べ物だけでなく、黄色い胃液まで吐き出していた。

 それでも、いつまでもこうしてはいられない。
 口をゆすいでトイレから出る。
 すると、そこにはトモ・エがいた。

「トモ・エ」
「ソラさん……」

 次の瞬間だった。

 トモ・エはその場に膝を突き、頭を伏せてソラに土下座した。

「ちょっ、トモ・エ?? どうしたの?」
「ソラさんがヒガンテに侵入した後、通信が切れました。ですが、先ほどソラさんのエスパーダの記録レコードを確認しました」

 土下座したまま、トモ・エは続ける。

「全て、私の責任です。ヒガンテ……いえ、彼らが地球を襲おうとしたのも、ソラさんたちが危険な目に遭ったのも、今、ソラさんが苦しんでいるのも、全て私の愚かな行動のせい」

 確かにそうかも知れない。
 ヒガンテの――彼らの言葉を真に受けるならば、トモ・エ――イスラ星のアンドロイドが地球人と接触しなければ、そもそもこんなことはおきなかったのだ。

 だが。
 ソラは言う。

「やめてよ」
「ですが、私のせいでっ」
「やめてって言っているだろっ!!」

 ついにソラは怒鳴った。

「僕だって考えたさ。トモ・エのせいじゃないかとか、自分のせいじゃないかとか、色々考えたよ。だけど、そんなこと考えたくないんだ!
 考えたくないんだよ……」

 気がつくと、ソラは涙を流して膝をついていた。

「トモ・エのせいじゃない。僕のせいでもない。そう思いたい。でも、実際問題そうとは言えない。だけど、その責任は戦ってとった。そういうことだろっ」
「でも、今、ソラさんは苦しんでいる」
「そりゃあそうさ! 僕は人を殺したんだ。相手は宇宙怪獣なんかじゃなかった。でも、それしかなかった。
 それに、このことは誰にも知られたくない。特に舞子には。だって、それをしったら、舞子も苦しむ。そうだろう?」

 そして、ソラはトモ・エを抱きしめた。

「トモ・エはただのアンドロイドじゃない。感情があるから、だから僕の苦しみを自分のものとして感じてくれている。
 でも、その苦しみに舞子を巻き込みたくないんだ。だから、顔を上げて、笑おう。
 僕たちは勝ったんだ。宇宙怪獣を倒して地球を救ったんだ。
 そうだろう? そういうことにしようよ? ね?」
「ソラさん……」

 ソラとトモ・エは支え合うように立ち上がる。

「……なぜでしょう」
「?」
「なぜ、イスラ星人は私に感情を与えながら、涙を流す機能をつけてくれなかったのでしょう? 私も、ソラさんと一緒に泣きたかったのに……」

 その言葉で、ソラは理解する。
 イスラ星人も悲しかったら涙を流す人々だったのだ。
 狂宗教家に虐殺されていい人々じゃなかったはずだ。

 僕はイスラ星のかたきを討った。
 それが正しいことだったかは分からない。
 正義は一つじゃない。
 それでも。
 それでも、笑わなくちゃ。
 僕の大切な友達のために。
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