僕らはロボットで宇宙《そら》を駆ける

ななくさ ゆう

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エピローグ

32.新たなる旅立ち

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 戦いが終わって。
 ソラと舞子は宇宙船の食堂でご飯を食べながら、トモ・エに話しかけられた。

『地球に帰る!?』

 ソラと舞子は同時に叫んだ。

「はい。ヒガンテは倒されました。これ以上、2人に私と一緒に旅をしていただく理由はありません。丁度、今、本艦は地球近くにいることですし、地球にお帰りいただくことも可能かと」

 トモ・エの提案に、2人は押し黙る。
 確かにそうだ。
 ヒガンテ――あの狂信者達が他にいるかどうかは分からない。
 だが、ソラ達がトモ・エと一緒にいても、役に立てるかは微妙だ。
 むしろ、イスラ星のアンドロイドと地球人が一緒にいない方が、彼らの生き残りを刺激しないですむかも知れない。

 だけどだ。

「今さら戻っても……」
「……ねえ?」

 ソラと舞子は顔を見合わせる。
 地球を旅立ってからすでに数ヶ月。
 地球では2人とも行方不明の家出少年少女扱いだろう。
 舞子はまだしも、ソラはあの親戚の家に帰るのは、ちょっと遠慮したかった。

「ちょっと、考える時間をもらえるかな?」

 ソラが言うと、トモ・エは頷いてくれた。

 ---------------

(地球に帰る、か)

 部屋に戻り、ソラはベッドに横になって考える。
 このスライムみたいな肌触りのベッドにもずいぶん慣れた。
 今さら、普通の布団で寝る方が違和感がありそうなくらいに。

(やっぱ、やだよな)

 あれだけ必死に地球を護っておいてなんだが、やっぱり、今さらあの家には戻りたくない。
 だが、この宇宙船に残って、自分に何ができるのか。

 もし、地球に戻ったとして伯母の家以外にいき場所はあるだろうか?
 児童養護施設? それも気乗りしない。
 とはいえ、一人で暮らしていけるだけの経済力は、中学生のソラにはない。

 だが、経済力が無いのは宇宙船にいたって同じだ。
 結局、自分と舞子はトモ・エを頼って旅をしていただけなのだから。
 エスパーダを動かすという仕事が必要なくなるなら、ソラ達が宇宙船ここにいる理由はなくなる。

(だけどなぁ……)

 自分は人殺しだ。
 何十人もの宇宙人を殺したんだ。
 いまさら、地球で普通の中学生になって何事もなかったように暮らすなんてできるものだろうか。

 ――と。

「おい、入るぞ」

 扉の向こうから聞こえてきたのは、ケン・トの声だった。

 ---------------

「ケン・トさん、なんでこっちの船に?」

 自分の船に戻ったはずの彼が、いつの間にこっちの船に来たのか。

「トモ・エに頼まれたんだよ。お前から真実を聞いて欲しいって」
「どういうこと?」
「さあな、だが、ヒガンテの正体を知る者が必要とかなんとか」

 それで理解する。
 ソラ達が地球に戻った後、真実を証言する人間が必要なのだ。
 アンドロイドのトモ・エの証言よりも、ケン・トの証言の方が大切ってことだろう。

「わかった。ヒガンテはさ……」

 ソラは自分が見たこと、聞いたことをそのままケン・トに話した。

「なるほどな」

 ケン・トは全てを聞き終え、頷いた。

「驚かないの?」
「ま、真空中を暴れ回る宇宙怪獣ってよりは、よっぽどありうる真相だろうさ」
「そうかもね」
「おそらく、連中はバリアルデ星人だろう。身体的特徴が一致するし、やつらは特殊な教義を持っている。ヒガンテはその中でも特に過激な連中だろうな」

 ケン・トはそこまでいうと、頭をかく。

「ちっ、トモ・エのやつ、俺に星間裁判所で証言させるつもりか。面倒くさい」
「裁判所?」
「おう、ヒガンテの正体を知った以上、ほうってもおけねぇしな。まったく、裁判なんて一銭にもならねぇってのに」

 ブツブツいうケン・ト。

「ねえ、その裁判ってさ。僕は出廷しなくていいのかな?」
「ああ? お前は地球に帰るんだろ。トモ・エがそう言っていたぞ」
「僕は……地球に帰るなんて言っていないよ」
「そうか。当事者の証言があるなら、その方が信頼性はあるだろうが……いいのか? 裁判所にいくとなったら、地球時間で半年はかかる。裁判そのものだって時間がかかるから、数年単位で戻ってこれねぇぞ」

 ケン・トの言葉に、ソラは頷く。

「どのみち、僕はもう地球でただの子どもには戻れないよ。舞子はともかく、僕は人殺しだから」
「お前……」

 ケン・トはソラの瞳をジッと見つめる。
 しばらくして、『ふぅ』っとため息。

「あんまり、深刻に考えすぎるのもどうかと思うがな。そういや、お前と地球には貸しがあったしな。しばらく俺の商売を手伝ってもらうか」
「え?」
「雇ってやるよ。こっちもそろそろ人間の従業員が欲しかったからな。宇宙をまたにかけた商売ってやつ、教えてやる。ただし、給料はお子様価格な」

 ケン・トはそう言って笑った。

 ---------------

「……ってわけだから、僕は地球には戻らないよ」

 宇宙船の操舵室で、ソラがトモ・エにいう。

「……そうですか。分かりました」

 トモ・エはそういって頷いてくれた。
 もしかすると、ソラがそういう決定をすることを予想していたのかもしれない。

 と。

「ふーん、ケン・トと一緒に商売ね」

 後ろから冷たい声が聞こえた。

「舞子!」

 いつの間にやら、舞子が自動ドアをくぐって操舵室に入ってきていた。

「で、自分たちはそんな面白そうなことをするのに、私だけは地球に帰れって?」

 舞子はジト目でソラ達を見る。

「それは……だって、舞子には家族もいるわけだし……」

 ソラと違って、舞子には両親がいる。
 地球に帰るべきなんじゃないかと思う。
 それに、一緒に宇宙裁判所に行ったら、舞子も真実を知ってしまう。

「エスパーダの記録レコード

 舞子が呟くように言う。

「え?」
「2人ともセキュリティかけるの忘れていたでしょ?」

 言われ、ソラは『ハッ』となる。

「ヒガンテの正体、そういうわけだったのね」

 トモ・エを見るとしまったという顔だ。
 アンドロイドのくせに人間みたいに抜けている。

「で、しかも、それを私だけ秘密にして、地球に戻そうとしていたわけね?」
「いや、それは……」
「いつ、宇宙怪獣に襲われるかもしれないという不安を抱えたまま、地球で暮らせっていうわけね?」

(うわぁぁぁ、舞子の目、すわってるよ、絶対怒っている)

「2人に1つだけ言わせてもらうわ」

 ギッと睨んでいう舞子。
 ソラとトモ・エは引きつった顔で答える。

「はい」
「なんでしょうか」

 舞子は2人を順番に指さし言った。

「私をなめるな。ソラの罪も、トモ・エの罪も、私もいっしょに背負うわ。当たり前でしょう」

 舞子はそう宣言して、操舵室の椅子に座った。
 とても、それ以上言い返せない。

「さ、行くわよ」

 舞子は言う。

「行くって、どこに?」
「決まっているじゃない。まだ見ぬ大宇宙おおうなばらよ!」

 舞子の言葉に、ソラは呆れる。
 呆れると同時に、少しわくわくしてくる。
 また、3人で一緒に宇宙を旅できるのだ。

「わかった。宇宙の果てまででも行こう!」

 そんな2人を、トモ・エが嬉しそうに見守っていた。

「全く、呆れましたね、2人とも」

 言いながらも、トモ・エは笑顔だ。

「こうなったら、私も2人にとことんお付き合いしますよ」
「よーし、じゃあ、最初に目指すは宇宙裁判所だ」

 ソラの宣言に、トモ・エが大きく頷く。

「はいっ!」

【僕らはロボットで宇宙そらを駆ける 完】
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