【完結】ありがとうございます!婚約破棄!

咲雪

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2.さあ、反撃開始だ

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 幼い頃、お茶会という名の"集団お見合い"で殿下に突き飛ばされ頭を打った私は意識を失くし寝込んだ。

 夢の中にチャラい下っ端神見習いが現れた。

 「やあ、杏樹、私は神だよ。実はさ、手違いで君をこの世界に"アンジェリカ"として転生させちゃったんだよね」

 「はあ!?」

 なんでも、私は前世別の世界で暮らしていたが、事故で亡くなったらしい。

 ここは、"乙女ゲーム"の中の世界らしい。私は"悪女令嬢"なんだと。神はそのストーリーを教えてくれた。

 「お詫びに君にスキルを授けるよ」

 神が私の額に手をかざすと、キラキラとした何かが私に吸収された。

 「君が念じると魔石が出来る。それを使って魔道具を作るといい。作り方は自分で考えてね。てへペロ⭐︎」

 いや、サムいし、可愛くないし。

 
 3日後、目が覚めた。
 その何年か後に、私と殿下の婚約が結ばれてしまった!神の言うとおり"乙女ゲーム"の中なんだと実感した。王太子妃教育をこなしつつ、私は来たる日のため備えて、神が作り方教えてくれなかったから(チッ)試行錯誤しながらせっせと魔道具作りに励んだ。

 で、今日がその"来たる日"なのだ。


ーーーーーーーーーーーー

 
 断罪回避のため学園中にこっそり設置していた記録機能付き魔石(しかも、対象者の行動限定で記録するという優れもの)がフロアに一斉に集まって一つの集合体になった。

 もう一度指を鳴らす。

 空間に大きなスクリーンが出現し、映像が流れ始めた。

 そこには

 ・教室で"乙女ゲーム"ヒロインのルミエールの教科書をビリビリ破く取り巻きその1。

 ・持ち物を隠す(くんかくんかとにおい嗅いでた。きもっ)その2。

  (その他色々)

 ・メインイベント!階段落ち!
 自ら階段から勢いよくダイブしたヒロイン!階段下に何故か都合よくいて、受け止めるその3。

 まあ、出るは出るは自作自演の数々。ついでに、殿下だけでなく取り巻き令息Sとの熱い抱擁や深い口付けも映し出された。流石に交わりまでは映ってなかった。学園内だしね。そこまで盛ってなかったか。いや、むしろ映ってなくてよかったよ。流石に魔石にボカシ機能までは付けてなかったし。いくら会場にいる全員が成人済でも行為を見るのは流石に刺激的過ぎるだろう。

 私は冤罪だと証明したぞ。さあ、お前らどうする?

 真っ青な顔の取り巻き令息S。

 呆けている殿下。


 何も口に出せないのか、つまらん。


 ついでにもひとつ、パチン♪


 私のドレスに付けていたブローチの映像。

 殿下や取り巻き令息Sには見えていなかったが、殿下にへばりついて私を睨みつけ醜く歪んだ笑顔。

 「やめてぇぇぇぇ!それ、止めなさいよぉぉぉぉ!」

 泣き崩れるヒロイン。自演がバレたことよりも、歪んだ顔を見られた方が嫌だったらしい。


 そろそろ、もういいかな。

 あ、もう一つあった。

 
 「アフォート」
 
 取り巻き令息Sその1を指差した。

 「あなたは私の義弟ではないのよ。あなたはあくまで継母の連れ子なの。お父様とは養子縁組していないの。公爵令息どころか、ただの居候、穀潰しよ。家を継ぐのは血縁の令息と前から決まってるの。私のお父様は、あなたに会うたび説明していたけど、おバカなあなたは理解できていなかった?公爵令息だなんて身分詐称はおやめなさい」

 「そんなハズない!」
 「やっぱりおバカだから理解できないのね」
 わなわなと震えるその1。

 ずっと震えてろ。


 私はざわつくギャラリーに向かって

 「めでたい場でこのような騒ぎを起こしてしまってすみませんでした。お詫びにはならないかと思いますが、私からみなさまへのささやかなプレゼントです」


 『祝福』

 パチンと指を鳴らすと、髪飾りに仕込んでいた魔石が天井まで浮かび上がり弾け、フロア中に花びらが舞った。

 会場内は大きな歓声と拍手が。


 「これから巣立つみなさまのご多幸をお祈りします。それではごきげんよう」

 
 優雅なカーテシーを披露し、会場を颯爽と去った。


 何やら殿下が叫んでいたが、知るか。

 そうそう、あの映像は私が近くにいなくても1週間リピートで流れ続けるのよね。帰国した陛下や取り巻き令息S、男爵令嬢の親達が見ることになるでしょうね。


 解放された嬉しさのあまりスキップしてたら、会場外の護衛騎士達がギョッとしてた。淑女にあるまじき行為だけど別にいいじゃない?!令嬢じゃなくなる予定だし。



 停車場で家紋なしの質素な馬車が待機していた。御者台から1人の男が飛び降りた。

 「お嬢様、うまくいきましたか?」

 と、御者に扮した私付きの護衛騎士クリフ。

 「バッチリよ」

 「おめでとうございます」

 「でも、本当にいいのね?この国から出ることになるのよ?大事な人と離れることになるのよ?」

 「俺の一番大事なのはお嬢様ですから」

 たまらず私はぎゅっとクリフに抱きついた。

 「うれしい!あぁ、やっと堂々と言えるわ。クリフ愛してる」

 多分真っ赤になってる(もう外は真っ暗になってるのでわかんないけど、なってるハズ)クリフ。5歳も年上だけどかわいい。

 そっと私を抱き返すクリフ。

 「あなたのことをずっと前から愛しています。もう離さないから覚悟していて‥‥俺のかわいいアンジュ」

 私たちは見つめ合い、そっと触れ合う口付けを交わした。


ーーーーーーーーーーーーー

 私たちは、王都の外れの宿屋に一泊し、翌日あらかじめ馬車に積み込んでいたドレスやあまり豪華すぎない装飾品をいくつか売り払い(高価すぎたり多すぎると盗品だと疑われるからね)、裕福な商家の娘風の服を購入し着替えた。醸し出すオーラがとてもじゃないが町娘風では無理があるらしい。

 馬車は公爵家が引き取りに来ることになっている。実は、継母親子以外は私の味方なのだ。

 仕事で国外を飛び回るお父様宛の手紙は執事に託した。次はいつ帰国されるのかしら。少しでも早いといいな。お父様にしかできない任務があるから。愛娘のために頑張ってね。


 私とクリフは辻馬車に乗り換え国境を越えた。

 実は、私は魔道具販売目的の新規出店を理由に予め通行許可証をゲットしていた。クリフは私の伴侶として。

 あぁ、バカ殿下。解放してくれてありがとう!殿下の命令通り国外に出た私はクリフとこの地で幸せになります!



ーーーーーーーーーーーー

補足:

 普通は魔石に魔導具師が自分の魔力を込めて石に力を付与し、それを原動力として魔道具を作成すると思うんですが、アンジェリカの場合、神から授かったスキルによって、無の状態から頭で念じるだけで最初から力を持った魔石を産み出すことが出来ます。魔石を仕入れる必要がないので、あまりコストがかかりません。なので、一般的な魔導具師が作る魔道具より低価格にすることが可能です。しかし、あまりに安いと他の魔導具師から顰蹙を買いそうなので、他と価格を揃えて利益率を上げるか迷ってます。商いって難しい!特に新参者にとっては!


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