【完結】旦那さまの秘密

咲雪

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5.旦那さまの愛人

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靄る。ここ何日かずっと靄ってる。


旦那さまに


『ジェフって誰ですか?』


と聞けばよかった。



「奥様。最近元気がありませんね。気晴らしに街に出て、買い物でもして来られてはどうですか?」


侍女長のマーサが心配して声をかけてくれた。


「そうね。それはいいかもね。ナンナついてきて」

「はい!奥様!」


私は、輿入れの際伯爵家から連れてきた専属侍女ナンナと、侯爵家専属護衛バートンを伴い、馬車で街に繰り出した。

私は街を散策した後、屋敷のみんなのために、お菓子のお土産をたくさん買い込んだ。


「奥様、持ちますよ」


とバートンが袋を取り上げようとするのを


「自分で持ちたいの」


と制した。


帰宅しようと馬車の方に向かっていると、旦那さまらしき人が歩いているのが見えた。そういえば、今日出張から戻られるんだった。声をかけようと思ったけど、よく見ると隣りに細身の青年らしき人が。

私の視線に気がついたのか、青年は隣りで歩いていた旦那さまに背伸びをしてキスをした。私の方を見て、ニタリと口角を上げ笑ったように見えた。挑発された?!あの人私のこと知ってて挑発してる?!


「ねー、バートン。あれ旦那さまよね?」

「あー、そうみたいですね。追いかけますか?」


ナンナとバートンは、青年がキスしたのには気が付いてなかったようだ。


「いえ、いいわ。それより、隣りの青年知ってる?」

「あー、あれはジェフさ「あの人がジェフ!!!」


どさっ


私は袋を落としてしまい、お菓子が転げ出てしまった。


「奥様、大丈夫ですか?!」


く、苦しい。胸が。


ドッドッドッドッドッ


動悸がする。


「奥様!‥‥レティシアお嬢様!顔が真っ青じゃないですか!」


心配するナンナ。


「奥様、ゆっくり深呼吸しましょう。一緒に、スーハー、スーハー‥‥」


バートンが深呼吸を促す。

少し落ち着いた。


でもまだ胸が苦しい。私はブラウスの前をぎゅっと握り締め


「今日はマクレガン家のタウンハウスに行きます!ナンナは連れて行きますので、バートンはヴァルキラ家へ戻ってそのように伝えて!」

「それは閣下の許可がないとできません!奥様、ヴァルキラ家へ帰りましょう!」

「いいえ、マクレガン家へ行きます!私は旦那さまの所有物ではありません!ヴァルキラ家には明日必ず帰るのでそのように伝えて!これは命令よ!」

ハァハァハァ

「わかりました。ではせめて、マクレガン家まで護衛させてください。そのあとヴァルキラ家へ戻りそのように伝えますので」

「‥‥わかったわ。護衛よろしくね‥‥」


私たちは馬車でマクレガン家に向かった。ナンナは終始オロオロしていた。


門で止められ、馬車の家紋と私の顔を確認され、

「レティシアお嬢様!」

とびっくりされた。もう1人いた門番が急いで屋敷に走って行った。


少しして、執事と侍女長が屋敷から出てきた。


「「レティシアお嬢様!どうされたのですか!顔が真っ青じゃないですか!ナンナ、一体何があった(の)?!」」

「街でヴァルキラ侯爵様を見掛けられてから急に苦しまれて」

「護衛殿。お嬢様を部屋までお運びください。ナンナはご案内して」

「「はい」」


私の部屋に運ばれた。


「ナンナ、しばらく1人にしてくれるかしら」

「でも‥‥」

「お願い。頭冷やしたいの」

「‥‥わかりました。でも、何かありましたら必ずベルを鳴らして呼んでくださいね」

「わかったわ。バートンはヴァルキラ家に伝言よろしくね」

「承知しました」



部屋に1人になった。


ウッウッウッ‥‥

旦那さま‥‥。


やっと、点と点が線で繋がったわ。

旦那さまには男性の愛人がいたのね。
男性相手じゃ天と地がひっくり返っても御子は産まれないし、この国では結婚はできない。
侯爵家当主として跡継ぎは必須。だから、そのため私を娶られたんだわ。

私相手じゃ勃.たないから媚薬を呷ったんだわ。しかも顔も見たくなくて寝室を真っ暗にして。
義務でだったから、妊娠しやすい日にしか抱かなかったんだ。

最初からわかってたことじゃない。御子を産ませるには、武闘派のマクレガン家の血を引く私が適任だっただけ。

烏滸がましくも、愛を期待してしまったのが間違いだったのよ。私は、私の使命をすっかり忘れてしまっていた。


夕方お父様が帰宅した。


「レティシア、ドアを開けてくれないか?」

「嫌。酷い顔だから見られたくない」

「どうしたんだ?閣下と何かあったのかい?」

「‥‥跡継ぎを産ませるために娶られたのだと最初からわかってたのに、割り切れなかったの。貴族失格ね」

「そうか」

「もう、離婚したい。弱いなぁ、私」

「そうか。いつでも帰ってきていいんだぞ」

「ありがとう、お父様。1日頭冷やして明日にでも閣下と話し合います」

「1日と言わず、何日でもここにいていいんだぞ」

「話し合いは、少しでも早い方がいいから、ヴァルキラ家には明日戻ります」

「そうか。今日は疲れただろう。ゆっくりと体を休めなさい。食事は部屋で食べるかい?」

「少しでいいので、部屋にお願いします」

「後で、ナンナに運ばせよう」




すっかり外が暗いわね。20時過ぎかしら。


ザワザワザワ


『!!!』
『×××!』


なんだろう?


チリンチリン


「どうされました?お嬢様」

「ねー、ナンナ。玄関の方が何か騒がしくない?何かあったのかしら?」

「こっそり、見てきましょうか?」

「お願いするわ」

「ドアの外に一応護衛がいますが、部屋のドアを開けたらダメですよ」

「わかったわ」


ガチャリとドアを開けナンナが部屋の外に出た。

ナンナはすぐに戻ってきた。


「マクレガン伯爵様とヴァルキラ侯爵様が玄関で揉めてます!」


え、旦那さまが来てるの?!




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