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了承
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……へ??
私の頭は、今度こそ真っ白になった。
ちょっと待って、内容がよく飲み込めてないですよ?
琉生くんは、勇者として異世界に召喚されて、でも勇者にはなれなかった。いや、ならなかった、かな? とにかくそしたら、魔王になった。
……え、どういうこと?
“帰る術がないと知った彼は、自分を無理矢理召喚した国家に報復するべく、敵である魔族のもとへ赴き、あっという間にその手腕で魔王となったのです”
私はひくりと頬を引きつらせた。
……る、琉生くん。いくら理不尽な目に合ったからって、やり返すスケールが大きすぎるんじゃないかしら。その国の人達も困ってたのだろうし。いや、確かに拉致はよくないけど! 魔王になっちゃったとか、お姉ちゃんは結構引いてますよ?
“お願いです。どうか、魔王を止めてください。これはあなたにしかできないことなんです! あなたに拒否されてしまうと、私の世界は近く滅ぶことになるかもしれません”
えーーー!?
いくらなんでも、それはないでしょ。琉生くん一人がいくら怒ったからって、世界が滅ぶことなんてあるわけがない。琉生くんは、まだ中学生なんだよ?
この女神様、大げさに言ってなんとか私を連れてこうとしてるんじゃないのかな……困ってるのは本当みたいだけど……。
「確かに琉生くんは、ご両親が留守がちなのもあって、代わりによく面倒を見ていた私に懐いてくれていたと思います。だから、多少は言うことを聞いてくれるかもしれませんが、それほど固執するものがあるのに、私の説得に応じてくれるとは思えないですよ」
そう言うと、なぜか呆れたような神様のため息が聞こえた。
……なんなんでしょうか、その反応は。
“それは絶対に大丈夫です。それに、あなたの家族には、教会に供えておけばいつでも私が手紙を届けますし、あなたへのお手紙も、私が責任を持ってあなたへ届けますから”
……うう、異世界の女神様がぐいぐいきます。どうしたらいいでしょうか。
いくらお手紙でやりとりができるとはいえ、家族ともう会えなくなるのは寂しい。でも、私が行かなきゃ異世界がピンチらしい。滅ぶのは大げさだとしても、たぶん大勢の人が困ったことになるんだろう。
とはいえ正直に言ってしまえば、見知らぬ大勢の人のために、自分の人生を大きく変えることになるわけで。今までそんな立派な自己犠牲の精神は持ってこなかったものだから、急に選択を迫られても「いいですよ」って即答できない。
けれどここで断れば、たくさんの人が困るのは確からしい。もしかしたら少しは、あるいは大勢の人たちが、死んだりもするのかも。
……それは、嫌だな。このまま帰っても、ずっと後悔するような気がする。
それに、琉生くんは私にとって、可愛い可愛い弟のようなものだ。断るということは、彼を見捨てて自分の人生をとるということになる、よね。
……ううううう~。…………はあ。しょうがないなあ、琉生くんは。
小さい頃からいろいろ面倒をみてきてあげたけれど、まさか、異世界にまで行くことになるとは。元の生活を捨てることになっても、琉生くんを見捨てるという選択肢はないんだよね、私には。
私の頭は、今度こそ真っ白になった。
ちょっと待って、内容がよく飲み込めてないですよ?
琉生くんは、勇者として異世界に召喚されて、でも勇者にはなれなかった。いや、ならなかった、かな? とにかくそしたら、魔王になった。
……え、どういうこと?
“帰る術がないと知った彼は、自分を無理矢理召喚した国家に報復するべく、敵である魔族のもとへ赴き、あっという間にその手腕で魔王となったのです”
私はひくりと頬を引きつらせた。
……る、琉生くん。いくら理不尽な目に合ったからって、やり返すスケールが大きすぎるんじゃないかしら。その国の人達も困ってたのだろうし。いや、確かに拉致はよくないけど! 魔王になっちゃったとか、お姉ちゃんは結構引いてますよ?
“お願いです。どうか、魔王を止めてください。これはあなたにしかできないことなんです! あなたに拒否されてしまうと、私の世界は近く滅ぶことになるかもしれません”
えーーー!?
いくらなんでも、それはないでしょ。琉生くん一人がいくら怒ったからって、世界が滅ぶことなんてあるわけがない。琉生くんは、まだ中学生なんだよ?
この女神様、大げさに言ってなんとか私を連れてこうとしてるんじゃないのかな……困ってるのは本当みたいだけど……。
「確かに琉生くんは、ご両親が留守がちなのもあって、代わりによく面倒を見ていた私に懐いてくれていたと思います。だから、多少は言うことを聞いてくれるかもしれませんが、それほど固執するものがあるのに、私の説得に応じてくれるとは思えないですよ」
そう言うと、なぜか呆れたような神様のため息が聞こえた。
……なんなんでしょうか、その反応は。
“それは絶対に大丈夫です。それに、あなたの家族には、教会に供えておけばいつでも私が手紙を届けますし、あなたへのお手紙も、私が責任を持ってあなたへ届けますから”
……うう、異世界の女神様がぐいぐいきます。どうしたらいいでしょうか。
いくらお手紙でやりとりができるとはいえ、家族ともう会えなくなるのは寂しい。でも、私が行かなきゃ異世界がピンチらしい。滅ぶのは大げさだとしても、たぶん大勢の人が困ったことになるんだろう。
とはいえ正直に言ってしまえば、見知らぬ大勢の人のために、自分の人生を大きく変えることになるわけで。今までそんな立派な自己犠牲の精神は持ってこなかったものだから、急に選択を迫られても「いいですよ」って即答できない。
けれどここで断れば、たくさんの人が困るのは確からしい。もしかしたら少しは、あるいは大勢の人たちが、死んだりもするのかも。
……それは、嫌だな。このまま帰っても、ずっと後悔するような気がする。
それに、琉生くんは私にとって、可愛い可愛い弟のようなものだ。断るということは、彼を見捨てて自分の人生をとるということになる、よね。
……ううううう~。…………はあ。しょうがないなあ、琉生くんは。
小さい頃からいろいろ面倒をみてきてあげたけれど、まさか、異世界にまで行くことになるとは。元の生活を捨てることになっても、琉生くんを見捨てるという選択肢はないんだよね、私には。
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