田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子

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第一章 離宮の住人

様子がおかしい

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 今日も今日とて、第二王子の離宮でお仕事だ。
 
 毎日掃除や洗濯に精を出しているけれど、殿下の普段のお世話もあるので、一人ではなかなか手が回らない。
 
 空き部屋に手を入れられるのは一体いつになることやら、とは思うが、それでも仕事は特に問題なくこなせていると思う。
 
 主人である第二王子は優しくてとても良い子だし、彼が私の作る食事やおやつを喜んでくれるのでやりがいもある。
 
 天気の良い日は一緒に散歩へ行くと約束してくれてからは、「外、行く?」と自分から声をかけてくれるようになった。とても喜ばしいことである。
 
 落ち着いてきたので、先日領地にいる家族へ手紙を送ることもできた。第二王子のお世話係になったことはすでに知らせていたが、返事の手紙ではみんなかなり心配していたので、これで多少は安心してもらえると思う。
 
 ……でも最近、少し気になっていることがあるのよね。
 
「……」
 
 今もまた、殿下のフォークが止まっている。

 何か悩み事でもできたのだろうか。
 いつも見せる、気持ちいいくらいの食べっぷりは鳴りを潜め、殿下はぼうっとしたまま動かない。
 
「…………」
 
「……殿下、どうかなさいましたか?」
 
「えっ? あ、ううん。なんでもないよ」
 
 声をかければ、殿下は再びパクパクと料理を口に運ぶ。
 こんなことが、最近よくあるのだ。
 一体どうしたのだろう。殿下は散歩以外では部屋からほとんど出ないし、誰かが訪ねて来たこともない。
 
 周囲からの殿下の扱いは今も相変わらずひどいものだが、私が来てから特に変わったことはないはずだ。
 新しく悩みができたとは考えづらいが、殿下の様子がおかしいのは間違いない。
 
「殿下、もしかして、何か心配事でもございますか?」
 
「え? あ……ううん。大丈夫だよ」
 
 絶対に大丈夫ではないのに、そう言って元気がなさそうな笑みを向けられてしまえば、それ以上何も言えなくなってしまう。
 心配で仕方ないのに、頼りにしてもらえないのは少し寂しかった。
 
 でも、彼の悩みが何であれ、無理に聞き出すわけにもいかない。
 私は「そうですか」と言って、引き下がるしかないのだった。
 
 
 ◇
 
 
「うーん、もう少しなんだけど……!」
 
 私は今、玄関ホールのシャンデリアに張ったクモの巣を落とそうと、長いハタキを持った腕を伸ばしていた。
 
 倉庫のような部屋で見つけた大きな脚立の、上から二番目の段に足をかけて天井付近を掃除しようとしていたのだが、私が小柄なこともあって、脚立の一番上に乗らなければあと少し届かないようだ。
 
「うーん……。少し怖いけど、これは登るしかないわよね……」
 
 この離宮は王族の住む建物だと考えればかなり小さなものだが、私が領地で住んでいた家よりは当然かなり大きい。
 
 こんなに天井が高い家を掃除したことなんてなかったので、さすがに苦戦している。
 
 古い脚立は多少ガタツキがあるので不安もあったが、届かないのだから仕方ない。私は覚悟を決めて、ゆっくりと脚立の最上段に足をかけた。そっと両足で立ってみるが、なんとか大丈夫そうだ。
 
「……よし。いけるわ」
 
 そう言って、私が上に向かってハタキを伸ばした時だった。
 
「きゃっ!?」
 
 脚立が大きくぐらつき、私は後ろへバランスを崩してしまった。
 
 ……落ちる!
 
 
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