乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子

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再会と不安

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 その後はわりとすぐに、ジェイドが男爵家に来ることを了承したと伝えられた。内心飛び上がって喜んだ私だけれど、最低限の教育が先だとか何とかで、なかなか会わせてもらえない日が続いた。私がしびれを切らしそうになったころ、ようやく再会が叶った。


「ジェイド!」
「アリス……!」

 嬉しさのあまり抱きつくと、ジェイドは少し驚いた様子だったけれど、すぐにぎゅっと抱き返してくれた。体を離してよく顔を見る。執事服を着ている彼は、記憶にあるよりもずいぶんと小綺麗になっている。けれど、目の前にいるのは、確かに私のよく知る彼だった。

 ……この、平民街にいるのが全然似合わない、綺麗な顔! 間違いなくジェイドだわ!

「やっと会えた! 元気そうでよかったぁ……っ!」
「泣かないで、アリス。アリスが男爵様に頼んでくれたおかげで、僕は元気だよ。君も、元気そうでよかった」

 思わず浮かんだ涙を、ジェイドがそっとぬぐう。以前と変わらない優しい微笑みに、すごく安心する。

「会いたかった。男爵様にお願いするのが遅くなって、ごめんね……」
「ううん。……僕も、もしかしてアリスは、貴族になって僕のことを忘れてしまったんじゃないかって、疑ってしまっていたんだ。僕の方こそ、ごめんね……」

 そう言って私の目を間近でじっと見つめるジェイドの笑顔は、以前とどこか違って見えた。会えなかった間に、何か大変なことがあったのかもしれない。いきなり大人びたというか、少し知らない人のようにも感じてしまう。

 それでも、またこうして会えたのだから、本当に良かった。

「そんなの、しばらく連絡できなかったんだから当たり前だよ。でも、それなのに、来てくれてありがとう。また会えて、本当に嬉しい!」
「……うん、僕も」

 そうして私たちは、久しぶりに笑い合ったのだった。


 それからしばらく、大変だけれど平和な日々が続いた。
 勉強のし過ぎで頭がパンクしそうだったり、男爵家の人たちの冷たい態度に辟易したりする毎日だったけれど、ジェイドがいてくれたおかげで耐えられた。

 それに、私が乙女ゲーム「恋する魔法学園のアリス」のヒロインなのだとしたら、今は辛くても、きっと将来は素敵な攻略対象と結ばれて幸せになれるはずだ。もちろんバッドエンドを迎える可能性もあるけれど、私がヒロインであるという事実に胡坐をかくようなまねをしなければ、きっとうまくやれるはず。

 ……でも、このゲーム、実際にプレイしたわけじゃないからなぁ。

 楽しみにしていたのは間違いないけれど、私はゲームの発売前に死んでしまった。だから、読み込んだ事前情報で攻略対象たちのことは多少知っていても、ストーリー上で彼らとどんなイベントが起こるのかはわからない。もちろん、どんな選択肢を選べばいいのかも知らないのだ。こんな状況で、本当にハッピーエンドを迎えられるのだろうか。もしバッドエンドになってしまったら、私はどうなってしまうのだろう。

 というか、そもそも本当に、ここは「恋する魔法学園のアリス」の世界なのかな?
 読み込んだ事前情報のヒロインの見た目や生い立ち、名前などが私と一緒だというだけで、他の状況証拠は何もない。

 ……私、本当にこの世界で幸せになれるのかなぁ。


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