黄金の鍵と曖昧な君

pino

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2章

10.図書館で勉強中

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 アスとアンビシャス様が親子だと言う事が分かってから数日後、俺はアスに会えない日々が続いて黄金の鍵探しもそっちのけで毎日図書館に篭っていろんな本を読み漁って過ごしていた。

 あの後アスはアンビシャス様に連れて行かれた。
 俺も一緒に行きたいと言ったけど、親子水入らずで話がしたいと言われてそれ以上は強くは言えなかったんだ。

 そもそも天使の親子と言う物を初めて見た。
 天界で暮らす動物や獣達の親子ならたくさん見て来たけど、それはどれも仲良さそうで見ているこっちが笑顔になれるような間柄だ。
 
 俺達天使見習いは今の大天使から産み落とされる。言わばみんな家族みたいなものなんだけど、生まれてからは個々が自立しているので大天使様と親子と言う感覚はない。
 て言うか一度も会った事がないしね。それなのに大天使と言うのは偉大で尊敬するお方と言う認識が出来るのはきっと生んでくれたからなんだと思う。

 詳しい知識は無かったから、もっと深く調べてみようと思ってこうして古い本とかを読み漁っているんだけど、なかなか面白いもんだ。

 面白い話の一つで大昔の天界の話なんかは時間を忘れて読んだ。
 今より千年も前には天界と魔界は誰でも自由に行き来する事が出来たらしい。これは授業で習った事があるから後の戦争を機に禁止されたのは知っていたけど、その後に起こった天界と魔界の狭間で起きた戦争の内容には驚かされた。

 戦争の火種となったのはある天使と悪魔が原因になったと記してある。その天使と悪魔は互いに愛し合う仲だった。自由に行き来は出来ても、やはり天使と悪魔と言う事で恋愛は勿論、過度の接触は禁じられていた。それは今も昔も変わらないなと思ったよ。
 悪魔と恋仲であった天使は誰にも許されない恋を悲しく思い、毎日悲観して過ごした。それに対してその天使を想う悪魔は魔界へ連れ去ってしまう。駆け落ちってやつか。人間界へ行くとそんな物はごまんと見れると先生が言っていたな。
 これに激怒した天界の当時の大天使の長がその天使を取り戻そうと全軍を引き連れて魔界へ侵略を試みる。魔界側も魔王を筆頭に数々の精鋭部隊で対抗した。これがあの有名な天界と魔界を完全に裂く事になる戦争だった。

 詳しい内容までは教わってなかったからこれを読んで俺は涙を流した。
 だって、愛し合う二人なのにそれを認めてもらえず、それでも一緒にいたいから駆け落ちまでしたのに怒られるなんて可哀想過ぎるでしょ。
 そりゃ天界側が魔界側を良く思ってないのは知ってるよ。みんな悪魔ってワードを聞くだけで嫌な顔をするし、人間を惑わす悪い奴らだと決め付ける。きっと魔界側も同じように俺らの事を憎んでいるんじゃないか。
 
 でも、本当にそうなのかな?
 姿形は違えど、同じ言葉を交わせる相手なんだよ?
 この歴史の内容が本当なら、恋に落ちる程お互いに魅力的だったって事でしょ?
 
 俺はみんなのように悪魔だけが悪いとは思えないんだ。
 俺達のように優しい心を持つ悪魔もいると思うんだ。

 そう、アスのように……
 って、アスが悪魔と決まった訳じゃないよね!アンビシャス様も我が子だと認めてたし、アンビシャス様の子なら天使の可能性が高いもんね!

 
「ああ~、アスに会いたいよぅ」

「アスって誰?」

「うわぁ!」


 机に伏せてため息をついて独り言を言っていると、まさか返事が返って来るとは思わなくて飛び起きた。
 そこにはユディがニッコリ笑って立っていた。


「ユディ~!脅かさないでよ~」

「ごめんごめん。そんなに驚くとは思わなかった。ねぇ、アスって誰だい?」

「えっとー、本を読んでて登場して来た人の名前!」


 アスの事はまだ誰にも言わない方がいいよな。アンビシャス様からも何も音沙汰はないし、俺は勝手に言いふらさないようにと誤魔化す事にした。


「本か、最近ずっとここに篭っているよね。エリムが元気良く遊んでないから心配だよ」

「あははー!心配かけてごめん……黄金の鍵について何か載ってないか調べてたんだよ~」


 咄嗟についた嘘に少し心が痛んだ。
 それでもユディは「そうなんだ」と気にする様子も無く、俺が読んでいた机の上に散らばる本を手に取ってペラペラと捲って読みだした。

 ユディ、嘘ついてごめんね。
 大切な友達に嘘をつくのはこんなにも辛い事なんだね。


「エリムも苦戦してるんだね。まだ誰も見つけられないのを見ると普通に探しても見つからないと思うんだ」


 ユディは黄金の鍵の話をし出した。
 正直俺はもう探して無かった。それにしてもまだ誰も見つけられないって、先生は一体どこに隠したんだろう?


「そこで思ったんだけど、二人で探してみない?普通に探しても見つからないならやり方を変えてみようと思うんだけど、エリムと組みたいなって」

「俺と?でも俺じゃ足手まといになるよー?すぐに他の事に気が行っちゃうし」


 ユディの考えも分かるけど、実際俺はアスと一緒に探していたんだ。それでも見つからなかった。とは言えない。
 まぁ俺の場合は聖なる森だけしか探してないけど。


「そんな事ないよ。エリムといると楽しいから。もし見つかったらエリムの手柄にしてもいいよ」

「わわっ!それは悪いよ~。よし、分かった♪一緒に探そう♪そして見付けたら二人の手柄としてご褒美は半分こしよう♪」

「うん♪それじゃあ決まり♪ちなみにエリムはどこを探してた?そこには無さそうかな?」

「俺は聖なる森だよ~。残念だけど無さそう~」

「そっか。俺は街の中を探してみたけど、どこにも無さそうなんだ。少し遠いけど、竜の谷に行ってみない?」

「竜の谷行きたーい♪ドラゴンさんに会えるかなぁ?」


 竜の谷とは天界の中でも街から離れた草木の無い岩場だらけの場所の事で、そこにある谷にはとってもかっこいいドラゴンが住んでいるんだ。
 でもそのドラゴンは何千年も生きていると言われているのに、あまり姿を現さないが為にドラゴンを見たと言う天使は本当に少ない。その為会えたら良い事に恵まれるという言い伝えがあるんだ。

 ドラゴンさんに会えたらきっとアスにも会える気がする。
 俺はユディとすぐに出発する事にした。

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