黄金の鍵と曖昧な君

pino

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2章

11.空の旅

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 ユディと並んで空を飛んで竜の谷を目指す。
 それにしてもユディの翼はいつ見ても綺麗でかっこいいな♪ユディならもっと早く飛べるはずだけど、俺に合わせてゆっくり飛んでくれてるんだ。

 久しぶりの空に俺は翼を広げて気分良く飛んでいると、隣からユディの心配する声が聞こえて来た。


「エリム、疲れてないかい?」

「大丈夫~♪ねぇユディ、本気を出したらどのぐらいの速さで飛べるの?」

「突然面白い事を聞くね。そうだな、竜の谷までなら数分で到着するかな」

「えー!そんなに速いの!?俺じゃ1時間は掛かるよ~」

「急ぐ旅じゃないからそれぐらいでいいんじゃないかな。それにエリムは飛ぶのが上手いじゃないか。まだ浮くのもやっとな天使見習いもいるんだから凄いよ」

「ユディの褒め上手~♪俺飛ぶの大好き♪見て見て~♪」


 ユディに褒められて嬉しくなったから俺はその場に止まってクルッと体を一回転させて見せた。それを見ていたユディは「凄い凄い」と手を叩いて笑ってくれた。
 本当に楽しいな。アスともこうして空を飛んで遊びたい。アスは自分の翼が黒い事を気にしていたけど、いつかそんなのを気にせずに大きく広げて羽ばたけたらいいのに。
 アスとならとても楽しいだろうな。

 ハッ!俺ってばまたアスの事考えちゃってた!
 

「エリム?どうしたの?」

「ユディ……この前嗅いだ事のない匂いがするって言ってたよね?」

「ああ、言ったね」

「最近はどう?まだする?」

「ううん。あれからどんどん薄れて今ではしなくなったよ。どうして?」


 ユディは俺についたアスの匂いだって知らないから、俺のその質問に不思議そうに頭を捻っていた。
 そっか。もう俺からはアスの匂いはしないんだ。
 何でだろう。少し寂しいな。

 落ち込みそうになったから、俺は首を大きく横に振ってから思い切り笑顔を作ってユディに向かってこう答えた。


「いや~その匂い、俺も嗅ぎたかったなぁって!だって嗅いだ事のない匂いなんでしょー?気になるよー♪」

「……エリム、なんか無理して笑ってる?」

「そんな事ないない~♪」

「それじゃあどうして泣きそうな顔で笑ってるの?」

「っ……うっ……ユディ……」

「エリム!」


 どんなにおちゃらけてても、ユディには見抜かれちゃったか~。考えないようにしていたけど、今の俺はアスに会えない不安で押し潰されそうなんだよ。
 それは誰にも言えないから一人で抱えるしか出来なくて、だからその事ばかりを考えてるから好きな遊びにも手が付かなくて……

 目の前にいるユディの顔が涙で歪むのと同時に俺は翼を羽ばたかせるのを辞めて、体を地に向かって急降下させた。
 それを間近で見たユディは落ちていく俺を慌てて追いかけて来た。
 すぐに捕まり、抱き抱えられてユディの温もりでまた涙が止まらなくなった。


「エリム!突然危ないじゃないか!体調が悪いなら無理はしちゃダメだよ!」

「あはは♪ユディってば本当に速いね~♪今の楽しかったなぁ♪もう一回やろ~♪」

「…………」


 遊んだだけだよと、わざとおどけて見せると、ユディは眉間に皺を寄せてそのままゆっくり地に降りて行った。
 地面に着地すると、優しく俺を降ろして座らせた。そして頭を撫でてくれた。


「ユディ怒った?ごめんってば」

「さっきの、本気だっただろ?」

「…………」

「エリムは本気で落ちようとした。俺には分かる」

「どうして分かるの?いつもの俺なら遊んでると思うんじゃない?」

「最近、目で見た人の思ってる事が分かるようになったんだ。それはいつでも、誰にでも発動するものじゃないけど、エリムの気持ちは手に取るように分かるんだ」

「ユディ……」


 まるでアンビシャス様やフリージア様が使う能力みたいじゃないか。そっか、ユディは優秀だから、俺達天使見習いの中でも成長が早いのかもね。
 それじゃあその内ユディにもアスの事がバレちゃうな。もう嘘はつきたくないからいっその事心を読んで欲しいぐらいだ。


「エリムは最近落ち込んでいたね。図書館に篭って熱心に勉強をしていたけど、その合間にも"アス"の事を想って心を苦しませていたよね。そのアスは本に出て来る人物じゃないだろう?一体誰なんだ?今もそのアスを想って落ちようとしただろ?」

「はは、ユディは本当に凄いや……」


 全部読まれてたなんて恥ずかしいなぁ。
 でもね、少し楽になった気がするよ。
 全部一人で抱え込んでいた物をユディがゆっくり下ろしてくれてるみたいに。
 
 うん。アスがいない事が辛すぎてわざと落ちようとしたよ。
 だってさ、あれから何も分からないし、大天使様に連れて行かれたアスにはもう二度と会えないかもしれないんだよ?そんなの俺、耐えられないよ。

 全てを吐き出すかのように俺はユディに頭を撫でられながら大声を出して泣いた。
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