黄金の鍵と曖昧な君

pino

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2章

12.最高の友達

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 どれくらいの間泣いただろう。
 ずっとユディに頭を撫でられながら、アスを想って泣いていた。
 俺が泣き止む頃、ユディが喋り出した。


「大丈夫かい?落ち着いた?」

「ん……ユディごめんね?」

「ううん。でももうあんな真似はしないで欲しい。俺まで悲しくなるから」

「もうしないよ。先生にバレたら怒られちゃうな~」

「エリム、本当の事を話してくれないか?他には口外しないって誓うから」

「って言うけど、もう俺の心を読んで知ってるんでしょ?アスは誰なのかも、何で俺が落ち込んでいるのかも」

「さっきも言った通りこの能力はまだ不完全で扱いきれないんだよ。読めても断片的なのが多くて、だけど、エリムの言葉だけはハッキリと聞こえて来るんだ。助けてって」

「えっ俺そんな事思ってた!?」

「うん。きっと一人で抱え込んでる物でもあるんじゃないかと思ってたんだけど、どうやら正解みたいだね」


 どうしようもない状況で、無意識にそう思ってたのかなぁ?とてつもなく恥ずかしいなぁ。
 気まずくて視線を逸らすと、ユディがクスクス笑って手を握って来た。


「俺で良ければエリムの力になりたいんだ。だからちゃんとエリムの口から聞きたい」

「そうだなぁ、何から話したらいいのか……」

「まずはアスについて知りたい」

「アスはね~、聖なる森で出会った友達だよ」

「何科の子?」

「学校には通ってないよ」


 ここでユディは驚いた顔をした。
 そりゃそうだ。この天界で学校へ行かない天使見習いはいないから。みんな立派な天使になる為に生まれた時から自然と通うものだ。
 中にはサボったりしてしまう天使見習いもいるけど、そうなったら先生にこっ酷く叱られるんだ。俺が知る限りでは見た事がないけど、行かないという天使見習いも過去にはいたらしい。
その時の処罰は一番重い刑である天界を追放されるとか……
 まぁ噂だから、天使見習い達をキチンと学校へ通わせるデマかも知れないけどね。


「今思えば俺もアスの事を良く知らないでいたんだ。なんか聞いちゃいけない気がして。それでも良かったんだ。ただ俺はアスと過ごす時間がとても楽しくて嬉しくて、それだけで幸せだったから♪」

「エリムはアスの事を大事に想っているんだね。じゃあどうしてアスを想うと辛そうなの?」

「ここからは知ったらユディもどうなるか分からないよ。それでもいいなら俺の心を読んで欲しい。訳あって俺の口からは言えないから……」

「……分かった。エリム、触れてもいいかな?」

「うん。いいよ♪」


 俺はアスを想って目を閉じる。
 そっとユディが両手を俺の肩に乗せたのが分かって、ジッとアスと出会ってからの事を思い出して考えてみる。
 アスの事、アンビシャス様の事、全てを心の中で打ち明けた。

 しばらくしてユディの両手が俺から離れたから、ゆっくり目を開けるとそこにはいつも爽やかに笑うユディはいなかった。
 困ったように眉毛を寄せて下を向き、グッと唇を噛み締めてとても苦しそうな表情をしていた。

 俺は不安になり、ユディに手を伸ばそうとして途中で止めた。
 もしかして、ユディもアスが悪魔だと思って嫌悪してるのかな。
 俺が普通にしている事に理解出来なくてそんな顔をしてるのかも。

 俺は手を引っ込めて、勇気を出して声を掛ける事にした。


「ユディ?」

「エリム……あの匂いは君からしていたんだね」

「……うん。俺も気付かなかったけど、そうみたい」

「そっか、アンビシャス様が関わっていたのか。無理に聞こうとしてすまない」

「ううん!俺も誰かに打ち明けたかったんだ。だから聞いてくれてありがとう」


 少し話して落ち着いたのか、ユディはまだ暗い表情だったけど、薄く笑ってくれた。
 

「約束した通り、この事は他には口外しないよ。それとエリムの力になる事も改めて誓う。教えてくれてありがとう」

「ユディ!」

「いや、本当はかなり動揺してるんだ。想像を遙かに超える出来事だったから……エリム、こんな辛い事を一人で抱えていたなんてさそがし辛かっただろう。すぐに気付かなくてごめんね」

「ううんっ!ユディはいつも優しくて頼りになるよ。でも今回の事は俺がもっと強くならなくちゃいけないから」


 やっといつものユディの優しい笑顔が見れて心からホッとした。良かった。ユディにも分かってもらえたんだ。
 ユディがいればとても心強いや。

 でも喜んでばかりもいられない。
 これは大天使様のアンビシャス様に関わる事だ。下手したらユディに危険が及ぶかもしれない。
 ユディは将来を期待されている天使見習いだから、それを壊したくはない。


「力になってくれるのは嬉しいけど、ユディが罰を与えられたら嫌だよ。ユディには立派な天使になってもらいたいから。だからこの事はユディの胸に閉まっておいてくれても構わないよ」


 俺が確認するように笑顔で言うと、ユディは笑顔のまま俺をそっと抱きしめた。
 何て暖かくて頼りになる抱擁だろう。ずっとこの胸に縋っていたい。そう思わせるような心強くて優しい腕だった。


「何を言ってるんだ、エリムの為ならどんな罰だって受けるよ。俺の夢はエリムと肩を並べて立派な天使になる事だ。エリムが進む道なら俺も共に行く」

「ユディかっこ良~♪そうだね!二人一緒に立派な天使になれるよう俺も頑張るよ!」


 ユディに励まされて俺は翼を大きく広げて自分を鼓舞した。
 ああ、ユディに打ち明けて良かったな。
 こんなにも心が晴れるなんてね。

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