黄金の鍵と曖昧な君

pino

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4章

37.ユディの異変

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 俺達四人は当初の目的へ戻る事にして、谷を歩いて進む事にした。
 ユディの体調は思ったよりも悪くないようで、リアルが言った通り奪ったのはほんの少しみたい。
 それでも心配だから俺はユディの隣を歩いていた。たまにユディの顔を覗き込んでは目が合ってニッコリ笑う。俺がそうするとユディも笑ってくれた。


「心配してくれるのは嬉しいけど、ちゃんと前を向いて歩かないと転んじゃうよ」

「平気平気~♪転びそうになったら飛ぶから~♪」

「そうだね。エリムも大分速く飛ぶようになれたもんね」

「そうなんだよ♪だから空を飛ぶのが楽しくって♪そうだ!ユディ、今度競走しようよ♪」

「いいよ。楽しみだな♪」

「俺も楽しみ~♪」


 俺とユディが後ろでそんな話をしてると、フリージア様と前を歩いていたリアルがうんざりした顔で見て来た。


「お前ら遠足にでも来てるつもりかぁ?マジで緊張感無さすぎて吐きそう」

「リアルも競走しようよ~♪俺ってば本当に速く飛べるようになったんだから~♪」

「俺様に勝負を挑むとはな。エリムじゃ一生掛かっても勝負になんねぇよ」

「そんな事ないもん!ねぇ?ユディ?」

「え?」

「え!?」

「ひゃひゃ!親友にも見くびられてんじゃねぇか!」

「ユディ!何で今微妙な反応したの!?」


 いつもは俺の問い掛けには笑顔でイエスしか言わない筈のユディが、戸惑うようにしていたから俺は焦った。
 てかリアルが調子乗るから~!

 俺がユディに近付いて聞くと、気まずそうに答えた。


「えっと、リアルは本当に凄いから……あ、俺も同じだよ?とてもじゃないけど今の俺はリアルより速く飛べないよ」

「素直じゃん。俺、そういう奴好きだぜ?」

「……どうも」


 リアルが凄いのは俺も分かってるよ!
 でもさ、やってみなきゃ分からなくない?いや、分かるかもだけど!
 それでもやる前から諦めるなんて嫌だった。

 俺はこれ以上反論しても二人相手じゃ敵わないと、諦めてトボトボ歩く。

 すると前を歩いていたフリージア様が立ち止まって前を向いた。


「皆さん、この先に何かいるようです。恐らく悪魔かと」

「お、姉ちゃんも分かるんだ?こりゃラブの気だな」


 どうやら二人はこの竜の谷に誰かがいる気配を感じ取ったらしい。
 ユディもかなとチラッと見てみると、困ったような顔をしていた。


「ユディ?どうしたの?」

「いや、それが……俺には分からないんだ」

「分からないって?」


 ユディの言葉を聞いてフリージア様が振り返って様子を伺っている。
 そしてユディは小さな声で言った。


「フリージア様とリアルが感じた何かの気配が分からないんだ。リアルの時は感じたのに、今は何も感じない……」

「それって、俺と同じって事?」

「……多分」


 確かにユディは、他の天使見習いに比べたら能力がずば抜けてた。リアルが現れた時もフリージア様と同じように気配を感じ取っていたし、まさか俺のように分からなくなっちゃったって事?


「ユディ、気にする事はありません。まだ本調子でないのかも知れませんからね」

「そうだよ。疲れてると元気も無くなるだろ?もう少ししたらまた元に戻るよ」

「はい」


 フリージア様と俺で励ますけど、それを無駄にするかのようにリアルがこう言った。


「もしかしたら俺が奪っちまったのかもな」

「それは先程ユディの力を吸った時にですか?」

「ああ。吸ったのは本当に少しだけど、今まで出来てた事が出来なくなるってのはあるだろうな。なんせ力を吸われてんだからな。人によっちゃ歩けなくなったり話したりする事も出来なくなるぜ」

「それ大問題だから!リアルってば何でユディの力吸っちゃったんだよ!」

「生意気だったからだよ。俺様の事を挑発しやがって」

「だからってあんまりじゃないか!」

「うるせぇなぁ!奪ったのは本当にこんなけだ!だから今出来なくてもその内また出来るようになるだろうが!」


 ユディがショックを受けてるのを見てられなくて、リアルを責め立てるけど開き直ってばかりで一向に反省しようとしなかった。

 リアルの言う通りだけど、この先もずっと出来ないままだったらどうするんだよ。
 ユディは絶対に優秀な上位天使になるのに、それなのに能力が使えなくなっちゃったなんて……


「エリム、大丈夫だよ。驚いたけど、リアルの言う通りこれからまた努力してみるよ」

「ユディ~!君って人は本当に何て良い天使なんだぁ!」

「他にも劣っている部分があるかも知れませんので、ユディは無理をしないように。なるべく私の側から離れないで下さいね」

「はい。ご迷惑をお掛けしてすみません」

「謝る事はありません」


 ユディを気遣ってフリージア様はニコッと笑って見せた。
 
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