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1章 出会い
5.急展開に驚く
しおりを挟む豪華な部屋に豪華な夜景を横に、更にちょー豪華なディナーを尚輝くんと一緒に楽しく取りながら過ごしていた。
あらかた食べ終わって食後に白ワインを飲みながら楽しい気分でいたら、尚輝くんがチラチラと腕時計で時間を気にしながら何かを言いたそうにしていた。
きっとこのデートの終わりの時間を気にしてるんだろう。
尚輝くんが入れた予約は20時までだ。初めは勉強のつもりでいたけど、こうして完璧にエスコートされて、結構楽しませてもらったからかもうそんな時間なのかと少し寂しくも思えた。
「そろそろ時間か」
「伊吹さん、もう少しだけお時間頂けますか?」
来た。延長の話か。
確かに尚輝くんと過ごせてとても楽しいよ。でも下心があるならどんなに尚輝くんが良い子だったとしてもダメだ。
俺も生活の為にやってるバイトだからそこはキチンと線引きはしておきたい。
「あの、5分だけでいいので、お話がしたいです」
「うん。それならいいよ♪」
話しぐらいならここまでしてくれたし、してやらなきゃ罰が当たりそうだ。
俺は優しく笑って尚輝くんを見る。
尚輝くんは困った顔をしていたけど、意を決したように話し出した。
「きょ、今日は俺に貴重な時間を作って下さって本当にありがとうございましたっ。その、とても楽しくて、俺……」
「尚輝くん……」
わざわざそんな丁寧に言ってくれなくてもいいのに。延長を断りづらくなるじゃないか。
それでも俺は心を鬼にして、尚輝くんから目を離さずに最後まで聞こうと思った。
「俺、伊吹さんともっと仲良くなりたいです!だから、またお誘いしてもいいでしょうか!?迷惑だったら言って下さい!」
「ん!?ああ、仲良くなるのは構わないよ?迷惑なんて全然……普通に誘ってくれよ……?」
「本当ですか!?良かったぁ♪嫌がられたらどうしようってとても不安でした~」
あ、あれ?延長って言わないのか?
それならそれでいいんだけどさ、なんか拍子抜けって言うか……
だってさ、だってさ!こんな良いホテル滅多に来れないぜ!?たった数時間過ごしただけで終わりとかちょっと勿体無くね!?
まだ見てないけど、風呂とかめちゃくちゃデケェんだろ?ジャグジーとか付いてそうだし、少しゆっくりしても良かったかなぁなんて!
「あ、伊吹さんのタクシー呼びますね♪俺は別のタクシーで帰るので、後を付けたりしないので安心して下さいね♪」
「お、おう……」
なんかもう、不安が無くなったかのような明るい笑顔見てたら何でも良くなったわ。
帰りの足まで用意してくれるとかどこまでも紳士だわ~。
こんなデート、真似したくても出来ねぇわ。
俺が引き攣った笑顔してたのがバレたのか、尚輝くんに顔を覗き込まれて心配された。
「伊吹さん?どうしました?どこか不満がありましたか?それなら教えて下さい!」
「不満なんかあるかよ!あーもう調子狂うな~」
「ご、ごめんなさいっ」
俺が少し大きな声で言い返すと、尚輝くんはオドオドして謝って来た。
やば、素が出ちゃった。
一応お金払ってくれてる客だから気を使ってはいたけど、なんか尚輝くんは他の客とは違うって言うか、不思議な感じなんだ。
一見、友達として楽しんでると思いきや、たまに口説くかのような甘い雰囲気を出したりする。
正直今日一日、俺は何度か素が出そうになったのを耐えていた。
これで失敗した事があるから気を付けてたんだけどな~。
「あー、大きな声出してごめんね?尚輝くんは悪くないからさ~」
「伊吹さん、俺、初めてなんです……」
「ん?ああ、デートクラブの事?」
「それもそうですけど、本気で人を好きになって、本気で手に入れたいと思ったのが初めてなんです」
「……ええ!?今何て!?」
尚輝くんの言葉が上手く理解出来なくて、聞き返すと、尚輝くんは真っ直ぐに俺を見て言った。
「プロフィールの写真を見ていいなと思ってたんですけど、今日コンビニの前で実際にこの目で見て一目惚れしました」
「一目惚れって、それってラブの好きって事?」
「はい……迷惑でしょうか?」
迷惑っつーか、何それ?って感じ!
だって、俺も男だし、尚輝くんも男じゃん。
そんな事あんの?いや、客のおっさんとかも俺をそういう目で見てる人はいるけど、それは興味本位とかだろ?
尚輝くんの好きはなんか、まるで……
「本気なのか?俺、男だぞ?」
「本気です!俺、ゲイなんです」
「!?」
ここでまさかのカミングアウト!
えー!ゲイの人ってこんな普通にいるの!?
たまに怪しいなって人はいるけど、ここまでハッキリ言われたのは初めてだから、何て言ったらいいのか分からねぇよ!
「あ、ごめ……ちょっと情報処理が追いつかないわ」
「突然すみません。もう少し仲良くなってから打ち明けようとしたのですが……伊吹さんはノンケですよね?」
「ノンケって何?」
「あ、普通に異性愛者の事です」
「ああ、俺はそれだと思う。男を好きになった事はないな」
「そうですよね、プロフィールに性別不問と書いてあったので、少し期待していたのですが、やっぱり迷惑でしょうか?ハッキリ教えて下さい」
俺が男女問わずデートを引き受けてんのは金の為だ。どうしても男相手の方が稼げるから、本当に金に困ったり、今回のように違う目的があったら承諾してるぐらいだ。
そうか、ゲイの人からしたらOKだと勘違いされたりするのか。
「迷惑ではない。でも俺が尚輝くんと同じ好きになれるかは分からない。もし尚輝くんが傷付くならもう俺達……」
「傷付きません!迷惑じゃないなら遠慮なく落とします!」
「お、落とすって何を!?」
金か!?それなら大歓迎だぞ!
心の中で言って期待するけど、尚輝くんはとても純粋な目をして笑って言った。
「伊吹さんをです♡必ず幸せにします♡」
「!!!」
「あ、もう10分も過ぎちゃいましたね!下まで送ります♪」
「いえ、こんなに良くしてくれたし10分ぐらい過ぎても……」
「そうだ、これ受け取って下さい。俺からのプレゼントです♪もし要らなかったら質にでも入れて下さい」
「えっ?プレゼント!?あの、でも俺こういうのは……」
テキパキと俺を送ろうと、エレベーターまで背中を押しつつ思い出したように部屋のカウンターに置いてあった紙袋を手にして俺に渡して来た。
いやいや、この紙袋ってロレックスのじゃねぇかよ!
こんな物受け取れる訳ないだろ!
返そうとしたけど、とても楽しそうな尚輝くんの笑顔を見たら、せっかく用意してくれたのに悪い気がしてそのまま持って帰ってしまった。
こうして20歳の男とのデートは何とか終わった。
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