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2章 2回戦目
24.約束の膝枕
しおりを挟む居酒屋で飲めたビールは一杯だけ。
結局あの後どちらにせよ俺にとっては罰ゲームである選択肢を迫られ、選んだのはホテル。
別にタイガーを信じた訳じゃねぇ。
ただ付き合うっての抵抗があっただけだ。
軽い気持ちで誰かと付き合うとかしたくないし、人質として身分証とスマホと財布を預かるのを条件に俺は今、タイガーとラブホテルにいた。
「へー、お前マジで学生だったんだ~」
ベッドの上に座り、預かった学生証を見ながら聞くと、ソファに座るタイガーはタバコに火をつけながらニヤッと笑った。
ちなみに残りのデートの時間はあと30分を切ってる。これもホテルを選んだ理由の一つだ。
ここで時間になるまでダラダラ話でもして時間を稼げばいい。もし襲おうとしたり、時間を超えて俺を拘束するようならタイガーの負けだ。俺は店に電話を入れて助けを呼ぶだけ♪
延長しようにもタイガーは金が無いから出来ないだろう。延長ってのは通常料金より高いからな。
俺にクソみてぇな2択出しやがって、舐めんなよクソガキ!伊達にこの仕事やってねぇんだよ!
「まぁね~。ろくに行ってねぇから辞めちゃうかもだけど」
「お前らしいな」
「大学にもただ働きたくなかったから行っただけだし、親に勧められて学費や生活費は出して貰ってるから、俺は自分の遊ぶ金さえ稼げればいいやと思ってたんだ。そしたら伊吹に会っちゃったからさ~」
「そら災難だったな。まだ今なら学生として戻れるだろ。せっかく入ってここまでやって来たんだから少しは真面目にやれよ」
自分が中退してるからか、何となくタイガーには卒業して欲しいと思ってしまった。
あの頃は何も考えずにただやりたい事を優先して辞めてしまったけど、今思えば勿体なかったなって思うからだ。
もう少し後先考えて行動出来ていれば俺も真っ当な仕事を見つけて、もっと違った人生を送っていただろう。
俺は今は懐かしい大学の学生証を眺めながらぼんやりそう思った。同時にこの学生証をどこかで見たような気がしたけど、思い出せずまぁいいやとタイガーの財布にしまった。
「それ親とか友達にも言われるけど真面目って何?俺のどこが真面目じゃないっての?」
「え、見た目?」
「あはは、好きな格好して言われるんなら別に構わねぇけどよ」
楽しそうに笑うタイガーはタバコを消して立ち上がる。
お、とうとう動き出したな!
俺は少し警戒して身構える。タイガーはそんな俺を見てニコニコ笑って隣に座った。
「そんじゃ約束通り膝枕してもらおうかな♪」
「!!」
そう言ってゴロンと俺の膝の上に頭を乗せて寝転がるタイガー!
俺はビクッとして次の動きに備える。
が、タイガーはそのまま気持ちよさそうに寝転がったままだった。
すると、タイガーはガハハと笑い出した。
「何緊張してんだよ~♪可愛い顔が台無しだぞ~」
「だって、お前変な事するじゃんっ」
「しないしない。約束したじゃん、手は出さないって」
「そうだけど、信用出来ないんだよっ」
「いいんじゃない?それなら信用出来るまで待つよ♪ほら頭撫でてよ~」
タイガーは猫のように俺の腹んとこに擦り寄る。
男にこんな事されたりするのはした事がないからゾワッとした。
初めタイガーに抱き付かれた時もだけど、くっ付かれたりして喜べないって事はやっぱり俺の恋愛対象は異性なんだと実感する。
だからタイガーの頭を撫でるのは躊躇してしまった。
「伊吹には出来ねぇよ」
「あ?」
タイガーを撫でる約束をしたから頑張って手を添えようともがいていると、俺の膝の上に寝転がるタイガーがボソッと言った。
あんだって?俺には人の頭も撫でられねぇと?
どこまでも俺の事舐めてんなぁこいつ。
いいよ!やってやるよ!
「ゲイの俺でも知らないおっさんのとかゲロ吐くかと思ったのに、明らかにノンケの伊吹に無理矢理そんな事出来る訳ねぇよ」
「……ん?」
俺はヤケクソでタイガーの青い髪に触れようとして手を止めた。
一体何の事を言ってるんだ?
タイガーは、らしくもなく小さな声でそんな事を言うけど、俺には訳が分からなかった。
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