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2章 2回戦目
25.本日の仕事は終わりました
しおりを挟むボソッと寂しそうに訳の分からない事を言うタイガーに、俺は頭を触ろうとしていた手を一度引っ込める。
そろそろデートの時間が終わると思うけど、俺はそのままタイガーを上から見ていた。
「なぁ、俺がどんなバイトして伊吹に予約したか知りたい?」
「……うん」
何となく想像はついた。
タイガーの事だから日雇いの夜勤とか、知り合いの手伝いとかじゃないか?
だけど、俺のその想像はとても浅はかな物だと知る事になる。
タイガーは笑顔のままこう言った。
「おっさんの舐めた」
「はぁ?」
俺はタイガーが何を言ってるのか分かったけど、タイガーがやるとか想像出来なくてそれしか声が出なかった。
それって、援助交際ってやつじゃないのか?
俺がしてる仕事も似たような物だけど、俺は誘われても全て断っている。だから客とホテルに来たのは今タイガーとが初めてだ。
それに、俺は店を通してるからある程度の事は店がフォローしてくれるし、何かあればすぐに対応してくれるようになっている。
でも、タイガーのって個人的にやり取りしたんじゃないのか?めちゃくちゃ危ない事してるんじゃないのか?
「俺ってこんな成りしてるけど、意外と硬派なのよ。好きな奴としかそういうのはしたくねぇし、だから本番だけはやらなかった。本番やれば1人相手すりゃ稼げたんだけどよ」
へへと笑いながら話すタイガー。
だけど俺は笑えなかった。
俺よりデカい体をしているけど、5歳も年下の20歳の癖に、何やってるんだよ。
俺も似たような事をして生活してるから強くは言えないけど、タイガーはまだそんな事をしなくても生きて行けるじゃないか。
何でそんなに簡単におっさんなんかに自分を許しちゃうんだよ。
「だからさ~、褒めて?伊吹の為に頑張ったんだよ俺。偉いでしょ?」
「どこがだよっ!もっと自分を大事にしろよっ!」
「あれー?心配してくれてるの?嬉し~♡」
「ああもうっ!酷い目に遭っても知らないからなっ!おっさんに無理矢理ヤラれても俺のせいにするんじゃないぞ!」
「あはは、それは無い無い。俺力あるからジジイには余裕で勝てる~」
どこまでもふざけた事を言うタイガーの頭を俺は撫でてあげた。
自然と手を伸ばして、バサバサに傷んだ青い髪に指を通しながら優しく撫でてあげた。
気持ち良さそうに目を閉じるタイガーは、普段のチャラいイメージとはかけ離れた優しく幼い顔をしていた。
「タイガー、少し離れていい?」
「もう少しこうしてたい」
「店に仕事終わったって連絡しないと電話来るから」
「えっ!もうそんな時間!?」
もうとっくに過ぎていた。
直行直帰スタイルの俺は、仕事の前と後で店に連絡を入れる事になっている。延長や、途中で何かあっても連絡をする事になってるんだ。
俺はタイガーを退かして、テーブルの上に置いておいた自分のスマホを取って店に仕事終了メッセージを送る。
タイガーものそりと起き上がり、再びソファに座ってタバコに火をつけた。
「やっぱ2時間は短ぇな」
「よし、今日の仕事終わりっと!」
「帰んの?」
ソファにドカッともたれて、ふぅーっと煙を吐きながらチラッと俺を見るタイガーは少し寂しそうだった。
別に帰ってもいいんだ。だって仕事は終わったから。
タイガーは延長もしてないし、もう時間外になるから気を使う事もない。
俺はスマホをテーブルに置いて、テーブルに立て掛けてあったフードメニューをペラペラと捲り、ベッドの枕元にある電話でフロントに繋ぐ。
突然の俺の行動にタイガーは不思議そうな顔をして見ていた。
「あ、注文いいですかー?生ビール2つと、焼き鳥3点盛り~、あと枝豆と、ポテトも!はーい、お願いしまーす♪」
俺が電話を置くと、タイガーが盛大に笑い始めた。
「あはは!伊吹ウケる!オフになった途端いきなり何!?」
「タイガーも付き合え♪さっきの店で美味しく飲めなかったから飲み直しだ♪」
俺がニシシと笑うと、タイガーはタバコを消して楽しそうに笑っていた。
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