恋に臆病なままではいられない

pino

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五章

58.仕事終わりのひと時

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 土曜日程では無いにしろ、日曜日のglowは混み合っていた。特に開店から夜にかけての夕飯時がピークで、明日から平日と言う事もあり、そこからはお酒を楽しむ客とかで客足は減って行く。
 今日一日いつもいる筈の光ちゃんの姿が見えない事に常連客からは何度も同じ事を聞かれたのは言うまでもない。
 こうして一日でもいないと心配したり、珍しがられたりと改めて光ちゃんは凄いんだなと思った。

 店も閉店に近付き、俺は裏で片付けに入っていた。そう言えば、今日はワタルの指導を冬真に任せていたけど、特に問題もなく終わったな。俺はほぼ裏にいたからどんな風にホールが回っていたのかは一部しか分からないけど、その時は二人で上手く分担して回っていたな。
 あんなに出来の悪いワタルとあんなにもスムーズに日曜日のホールを捌くなんて、冬真の教え方が上手いのか?はたまた冬真が出来過ぎるのか?
 少し気になる所だった。


「雪ー、最後のお客様帰ったよー。ワタルくんにはホールの片付けお願いしたよ」

「あ、お疲れ様~、冬真体大丈夫~?」

「俺は全然♪雪こそ大丈夫?裏方ばっかりやらせてごめんね」

「それはいいんだけどさ、ワタルどうだった?」


 俺は洗い終わった食洗機から食器を取り出し拭きながら、伝票をまとめている冬真に聞いてみた。
 冬真は普通に答えた。


「思ったよりも良い動きしてたよ♪俺からは特に注意したりする事は無かったかな?お酒の事とか聞かれたら教えたけど、きっと雪の教え方が上手いんだよ」

「嘘!?あのワタルが!?」


 俺は持っていたお皿を落としそうになった。
 それぐらい驚いた。確かに俺がホールに出た時は二人で上手く回しているように見えたよ。まさかずっとあんな感じで回っていたと言うのか?
 あんなに手が掛かって仕方なかったワタルが冬真の手を煩わせずに仕事をこなしたと言うのか!?

 俺が驚いていると、ホールから残った食器を片付けて持って来たワタルがやって来た。


「ゆっきー、これも頼んでいい~?」

「…………」

「えっなになに?怒ってるの?」


 信じられないと言う顔で俺がワタルを見ていると、急に焦り出すワタル。本当に冬真の言う通り良い動きをしていたのか?まだ疑いたくなるな。
 俺の反応には冬真も不思議そうな顔をしていた。


「ワタル、お前今日どうだった?」

「どうって、僕的にはミスしなかったと思ってるよ?」

「何故ミスをしなかった!?」

「ええ!?ミスった方が良かったの!?」

「そうじゃなくて、俺が教えた時はあんなに出来が悪かったのに、どうして今日はすんなりこなせたんだよ!」

「どうしてって、ゆっきーが教えてくれた通りにやっただけだよ?冬真くんもいてくれたし、えー、何でゆっきー怒ってるの?」

「あはは、ワタルくんは雪に甘えてるんだよ。今日は甘えられる雪がいなかったからちゃんと仕事に集中出来た。そうなんじゃないか?」

「うん♪ゆっきーといると楽しくて、ついお話したくなっちゃうのー♪」

「ついお話したくなっちゃうのー♪じゃねぇよ!初めから真面目にやれよ!俺の悩んだ時間を返せ!」


 仕事を舐めてると判断して俺が叱ると、ワタルだけじゃなくて冬真まで笑っていた。
 何なんだよこの二人は!俺は一人どうしようかとあんなけ悩んだって言うのに!
 馬鹿にしやがって!


「二人共の不真面目さはちゃんと店長に報告するからなっ!ワタル、俺がいたとしても次はちゃんとやれよ!」

「うわぁ、ゆっきーがめっちゃ怒ってる~、冬真くんどーしよー?」

「あ、それならワタルくん、例の作ろうよ。俺は賄い用意するから」

「うん♪やってみる!」


 また二人でコソコソ何か企んでるのかぁ?
 もう疑いの目でしか見れないや。


「雪、あとは俺がやるからカウンター席でワタルくんを見ててあげて」

「ふんっ悪さしないか見張っててあげる!」

「ゆっきーが見てるとか緊張しちゃうな~♡」


 ふざけた事を言いながらカウンターへ繋がるドアからホールへ消えて行くワタル。俺は冬真に言われた通りに客席側のホールへ向かった。


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