35 / 43
6章 忘れていた記憶
33.君がいたから
しおりを挟む俺の部屋の寝室で、ベッドに横になり眠るハラリ。俺はそんなハラリをベッドの横の床に座って、腕と顔をベッドに乗り込む形で、両腕を組んでそこに顔を乗せてずっと見ていた。
あれから見つけたハラリをなんとか二人で部屋まで連れ帰る事に成功して、着ていたボロボロの服を部屋着に着替えさせて、その他の出来る限りの手当てなども施した。見た感じは深い傷は無いようだけど、ハラリはかなり衰弱してるように見える。
熱は無かったけど、怪我をしてるから家にあった痛み止めを飲ませて休ませてるとこだ。
本当は病院で診てもらうべきなんだろうけど、もうハラリがいなくなったり危ない目に遭うのは嫌だ。それならずっと俺が側にいて見ていてやりたいと思った。
飯野さんは使えそうな薬や消毒液などを買いに行ってくれている。
一人で眠るハラリを見てボーッと考えていた。
飯野さんにもハラリの事を話さなきゃだな。
俺は話してもいいけど、ハラリがどう思うかは分からない。
ハラリ自身は教える気は無かったみたいだけど、こうなったら話は別だろ。
やたらな事をすれば俺らの次元を捻じ曲げるとか言ってたけど、そんなの今更な気もするしな。
でも、実際ハラリと初めて会った時から随分日常が変わったな。大きく変わったのは常に家に誰かがいるって事と、飯野さんとの関係だ。
どちらも俺にとって大きな影響を与えてくれたよ。
一人が嫌いな俺はハラリのお陰で毎日が楽しく過ごせたし、苦手な先輩だと思っていた飯野さんともお互い好きになるまでの関係になれた。
他にもハラリが教えてくれた事はたくさんある。
俺はそのひとつひとつを思い出して、もうハラリからは離れるもんかと思った。
ここで部屋のインターフォンのベルが鳴った。飯野さんが帰って来たのかも。対応をするのにハラリから離れるのさえ戸惑うぐらいだ。
少しの間でも離れたくなかったけど、飯野さんを放っておく訳にもいかず、寝室のドアを開けたままリビングへ向かう。
モニターに映る飯野さんを見て俺は鍵を開けてあげた。しばらくしてリビングに入って来た飯野さんはいつもの無表情で俺を見て来た。
「おかえりなさい。買い物ありがとうございます」
「とりあえず役に立ちそうな物を買って来た。スポーツドリンクと栄養ドリンクも。ハラリはどうだ?」
「落ち着いて寝てます」
開いたままの寝室のドアを見て、また視線を俺に戻した。買って来たビニール袋からペットボトルの紅茶を俺に渡しながらこう言った。
「詳しい話を聞かせろ」
「はい」
俺が頷くと、飯野さんはテーブルの椅子に座った。俺もリビングのソファに座っていよいよ話そうと決意する。
まず何から話したらいいのか、いつもならスラスラ出て来る言葉も今では詰まってしまう。
そんな俺を気にしてか、飯野さんは立ち上がり俺の隣に座った。そして軽く肩を抱かれて、引き寄せられた。
優しい飯野さんに、俺の心は落ち着く事が出来た。
「ゆっくりでいいから。ちゃんと全部聞いてやるから」
そう言って俺のこめかみら辺にキスをして来た。
くすぐったくてちょっと恥ずかしかった。だけどそれが嬉しくて俺は飯野さんにギューって抱き付いて甘えた。
飯野さんがこんなに優しい事も、ハラリがいてくれたから分かった事なんだ。
ただ不器用なだけで、口は悪いけどちゃんと暖かい人なんだ。
それから俺は少しずつ飯野さんにハラリの本当の事を教えてあげた。
0
あなたにおすすめの小説
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜
紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉
学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。
ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──?
隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡
いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる