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6章 忘れていた記憶
32.最悪の再会
しおりを挟む結局俺は学校を休んでその日は飯野さんと過ごした。一緒に買い物へ出掛けて、夕飯を俺んちで食べようと仲良く二人で並んで歩いていた。
飯野さんは夜にはまたバイトへ行ってしまうけど、俺も明日からは学校へ行こうと思う。いつまでもハラリの事を引きずってる訳にはいかないしな。
スマホに入っていた友達からの心配する電話やメッセージにもほどほどに対応しつつ俺は飯野さんの隣にいた。
あまり他の人とやり取りしてると飯野さんがヤキモチ妬いちゃうからな。
夕方になり家路へと急ぐ人々の中、マンションまであと少しって所で俺はふと何かの気配を感じて周りをキョロキョロ見渡した。
別に何か音がした訳でもないし、何かを見た訳でもない。ただ何となくだった。
「どうした?」
「いえ、何でもないです」
飯野さんに聞かれても答えられる事もなかった。
だけど凄く気になる。強いて言うなら匂い?
「ねぇ飯野さん、何か匂いません?」
「そうか?別に何も……」
「何か良い匂いなんだけど、ちょっと変な匂いも混ざってるような」
「何だよそれ?まぁ夕飯時だからな」
違う。食べ物の匂いじゃない。
これは人の匂いだ。嗅いだ事のある匂いな気がする。変な匂いも馴染みはないけど、どこかで嗅いだような……
次の瞬間、何の匂いなのか繋がって、俺は慌てて匂いの元を辿った。
後ろで飯野さんの声が聞こえて来たけど、俺は夢中で匂いを追いかけた。
マンションへの道から外れて細い路地の中、どんどん強くなる匂いに俺は胸が熱くなった。
この匂いはハラリのだ!そしてもう一つの嗅ぎ慣れない匂いは前に一度だけ嗅いだ事がある傷だらけになったハラリからした血の匂いだ!
どこかにハラリがいる。俺はそれだけで頭がいっぱいだった。早く見つけなきゃ。きっとハラリはまた大袈裟を負っているんだ。
建物と建物の間、人一人が通れるぐらいの細い道で、気付けば足元には何かを引きずったような赤い跡が付いていた。
血の気が引いた。もしこれが血だったらと思うと混乱すらした。
「ハラリー!どこにいる!?返事してくれ!!」
気が付けば叫んでいた。
多分もう近くにいる。引きずった赤い跡はどんどん濃くなり、量も増えていた。
そして細い路地の途中でやっとハラリを見つけた。
血だらけで、壁にもたれるように長い足を折りたたんでぐったりと座っていた。銀色の綺麗な髪も血で輝きを失っていた。切れ長の目は閉じられて真っ赤になった顔の半分は腫れているようにも見えた。
最後に見た時と同じ服装だったけど、ボロボロに破けてかなり汚れていた。体の至る所から血が溢れて、所々濃い痣も見られた。
「ハラリ!!」
頭の中が真っ白になるような光景に、俺は縋るように近付いてハラリに声を掛けた。だけど返事は無い。
ずっと目を閉じてただそこにいた。
まさかと思ってパニックになりそうだった。
やっと見つけたのに、こんな形で再会するなんて……
「奏多!」
「い、飯野さっ……ハラリがっ!」
後から付いて来た飯野さんが持っていたビニール袋を捨てて、俺とは反対側のハラリの横につく。
驚きながらもハラリの首元を触って、反応の無いハラリの頬を軽く触って何かを確かめていた。
「まだ脈がある。救急車を呼ぶぞ」
「え、でもっ」
焦りながらも俺より冷静に対応し始める飯野さんに、俺は戸惑った。
ハラリが助かるなら救急車を呼びたい。だけど、そんな事をしても大丈夫なのか?ハラリは違う次元から来た人間だけど、もしそれが世間にバレたらハラリはどうなるんだ?
ハラリの命も大事だけど、俺らの次元でもハラリの居場所が無くなったらと思うと飯野さんの正しい行動を止めずにはいられなかった。
「待ってくださいっ。ハラリは、誰にもバレたらダメなんです!」
「何言ってるんだ!このまま放っておけば危ないだろ!」
「ハラリは、普通じゃないんです!」
「こんな時に馬鹿げた事を言ってる場合か!」
俺を叱りながらスマホを取り出す飯野さん。
上手く説明出来なくて、俺は飯野さんに従おうかと思っていると、ハラリの肩が揺れた。
「ハラリ!」
「……お前らか」
「俺だよ!もう大丈夫だからな!」
「比良里、助けは呼ぶな……悪ぃんだけどよ、このまま奏多んち連れてってくんねぇか?」
「お前まで何を言ってるんだ!」
「一回ぶっ飛んだみてぇだが、意識はある。まだいける……ほら早く肩を貸せ」
目は開けずに言うハラリに、飯野さんは怒った顔をしていたけど、俺は藁にもすがる思いでハラリの腕を自分の肩に回して起こそうとした。
だけど力無くダランとしてるハラリは重くて、とても俺一人じゃ支えられなかった。
「飯野さん!力を貸して下さい!早く家に連れて行きましょう!」
「まったく、家に行ったらちゃんと説明してもらうからな!奏多は荷物を頼む」
飯野さんは怒ったまま俺とは反対側からハラリを抱き上げると、俺にそう指示をした。
勢い良く持ち上げられてハラリは苦痛に顔を歪めた後、俺を見てニヤリと笑った。
とりあえず急ごう。
俺達で出来る限りの手当てをしなきゃ。
ハラリを抱えて歩く飯野さんを誘導するようになるべく人目を避けながら俺はマンションへ急いだ。
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