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6章 忘れていた記憶
34.打ち明けます
しおりを挟むハラリが別の次元から来た人間である事、そしてハラリはこっちの次元の飯野さんと同じ人間である事、更に違う次元を行き来するのは重罪で逃走犯である事を俺なりの言葉で教えてあげた。
たまに見てみたけど、飯野さんは終始無表情でだっま。それでもずっと隣でくっ付いて聞いていてくれた。
どんな風に感じたのかは分からないけど、俺より頭が良い飯野さんならすぐに理解してくれると思うんだ。
「ハラリの元の次元のエリート達がハラリを追いかけ回して捕まえようとしてるらしいんです。前にも一度大怪我をして帰って来た事があって……でもその人は俺らの次元の人間に存在を認識されないように行動してるから、だからハラリの近くに俺がいれば手を出して来ない筈なんです」
「それで今回、奏多が俺に会いに来た隙を狙ってハラリの前に現れたって事か。にしてもやり過ぎじゃないか?あいつの怪我を見る限り捕まえようとしてる割には容赦なく攻撃してるように見えるけど」
「そうなんです!それと、次元を行き来するには大量のカロリーを消費するらしくて、その他にも体が弱い人とかにはめちゃくちゃ危険らしいんです。それなのに、ハラリをあんなにするなんて……連れ戻そうとしてるのにおかしいですよね?」
これは少し前から気になっていた事だ。
逃走犯のハラリを捕まえて元の次元に連行させるにはハラリの状態を悪くするのはあまり得策じゃない気がするんだよな。
次元を行き来するカラクリがイマイチ分からないけど、あそこまでハラリを弱らせる必要があるのかって思う。
そんな事をしないでさっさとハラリを連れ帰ればいいんじゃないか?何であんな酷い目に遭わせる必要があるんだ?
「もしかしたら連れ帰るのが目的じゃないのかもな」
「どう言う事ですか?」
「いや、憶測だけどな?ハラリを俺らがいるこの次元で処刑しようとしてるんじゃないか?」
「処刑!?」
「あくまでも仮の話だ。そもそもそんな非現実的な話あるのかも疑ってる。まぁ現にハラリのあの大怪我を見たら普通じゃないとは思うけどな」
「そんな、ハラリが殺されちゃうなんてっ飯野さん!俺達でハラリを守りましょう!」
俺と飯野さんの二人なら何とか守り切れるだろ!どちらかに予定があるなら、どちらかがハラリに付いていればいい。そうすればハラリはずっと平和に生きていけるじゃん。
俺が意気込んで訴えるけど、飯野さんは良い顔はしなかった。ずっと難しい顔をしていた。
「なぁ、ハラリは奏多に守られたいって思ってるのか?」
「そりゃ、追っ手から逃げてるぐらいですから!」
「それなら何で一人になる?守られたいと思うなら出て行こうとする奏多を引き止めるだろ普通は。それか人がいる場所まで同行してもらってそこで奏多の帰りを待つとか、まぁやり方なんて他にもたくさんあるだろ」
「でもっハラリの事情は他の人には話せないんです!」
「だとしても、ここはそこまで田舎じゃないだろ。夜遅くても開いてる店はあるんだし、駅に行けば誰かしらいる。駅の近くには24時間営業の店だって開いてるだろ」
「飯野さんはハラリの事心配じゃないんですか!」
「そうは言ってねぇだろ。とにかく今の話は信じるから。それとなんだっけ?ハラリは俺だとか?それについては何も言わない」
一番否定されるかと思った事を、飯野さんはすんなり受け入れていた。
ハラリにヤキモチまで妬いてたのに、やっぱり同じ人間だから惹かれる何かがあるのか?
「ハラリ言ってましたよ。元々次元の旅をしている理由は自分探しの為だって。この次元で初めて自分と出会えたって嬉しそうに話してました」
「あいつらしい理由だな」
「こうも言ってました。飯野さんの事を愛してやれって。愛に飢えてるそうですね?」
少し意地悪を言ってみた。
すると思い切り睨まれた。
うん、ハラリから聞いてなかったら絶対愛とは無縁な男だよ飯野さんは。
でもこれも不器用なだけなんだよな。
「飢えてねぇよ。でも良い事言うじゃん。さすが俺だな」
ハラリの話をしていて飯野さんがやっと笑った。ハラリとは違う、落ち着いた笑顔だけど、俺はそんな飯野さんの不器用に笑った顔が好きだ。
やっぱりハラリの言うように、二人は同じなんだ。
傲慢で野心家。自分の事が大好きで、自信家だっけ?でも、誰よりも愛に飢えてるってハラリが教えてくれたな。
今ならとても良い分かるよ。
二人共とても似てるよ。顔だけじゃなくて性格もな。
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