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1章 似てるけど似てない二人
1.深夜のバイト
しおりを挟む大学に入ってから始めたコンビニのバイト。今日は金曜日だから初めて深夜帯のシフトに入ってみた。
時給良いからやってみようと思ったけど、眠いわ暇だわ退屈だわで結構辛かった。
友達呼ぶにも時間が時間だからメッセージしても返信率は悪かった。
「あー、暇!これがあと三時間も続くとか地獄~」
「おい相馬」
俺がトイレから出てそんな事を口にすると、雑誌コーナーで仕事をしていたもう一人のバイトの人に思い切り睨まれた。
俺の指導係で、二個上の先輩。
今日初めて一緒のシフトになったけど、俺が話し掛けても機嫌悪そうにしてたり、とにかく無愛想でちょっとムカつく男だ。
絶対俺の事見下してるよな。でもさ、この飯野さんって顔はめちゃくちゃ良いんだよな。女性客とか目をハートにして行くし、おまけに高身長!ただ無愛想ですぐ怒るちょっと残念な人。
「何すか?あ、面白い雑誌でもあったんですかー?」
俺の事を睨んだままだったから、何か話したいのかと思って何も考えずに近付くと、ふいっとされて持っていた雑誌をカゴの中に入れた。
うわ、何この面倒な人。シカトするんなら見てくんなよ。
俺はこれ以上この人を嫌いになる前に立ち去ろうとして、飯野さんの後ろを通ってレジへ向かおうとした。
すると、飯野さんに腕を掴まれて止められた。
「うわ、何?」
「雑誌の入れ替え。新しいのがこの時間に届くから古いのを回収するんだよ」
「え?あ、読んでたんじゃないんだ。そのカゴに入れたのお気に入りなのかと思った」
俺はカゴの中に入っていたアダルトな雑誌を指差して言う。すると飯野さんはさも不機嫌そうな顔をして大きなため息をついた。
「お前じゃあるまい」
「ああ?」
「今日入って来たリストだ。この中にある古い雑誌を回収しろ」
「あー、はいはい。やりますよー」
俺は飯野さんが持っていたリストとやらを受け取って早速雑誌を手に取りカゴに入れる。
この人ももっと上手く教えてくれりゃいいのに。何でこんなぶっきらぼうにしか喋らねぇんだ。
こう見えて俺は人付き合いは良い方で、誰とでもすぐに打ち解ける事が出来る。それは俺が寂しがりな性格もあるんだけど。
だから俺が入ってる夕番の人達とはもう仲良く話せるんだけど、この深夜組の飯野さんとは今だに打ち解ける事が出来ずにいた。
「おい。今の違うぞ」
「えー?でも名前合ってますよ?」
俺がカゴに入れた雑誌を手に取って棚に戻す飯野さん。そして雑誌のタイトルを指さして怒りながら教えてくれた。
「良く見ろ。これは素人天国デラックスだけど、リストの方は素人天国スーパーだ。ちゃんと細かい所まで見ないとダメだ」
「はぁ?デラックスだぁ?スーパーだぁ?あ、本当だ」
言われて良く見たら確かに綺麗なお姉さんのセクシーな姿の表紙の上にあるタイトルは「デラックス」と「スーパー」で違った。値段も違う。
てかこんな違いに気付くって飯野さんってムッツリ?何だよ、いつもクールぶって声掛けられても澄ましてるけど、ちゃんと男なんじゃん。
俺が飯野さんの人間らしさに触れてニヤけてると、不審そうに聞かれた。
「何で笑ってるんだよ」
「いや~、飯野さんも男なんだって知れたら嬉しくて♪ちなみにどっちのお姉さんがタイプですか~?」
「ふざけてんのか?」
「ふざけてないですって!え、何で怒るの!?」
「とにかく気を付けろ。間違えたら今日の給料無いと思え」
「はぁ!?何で飯野さんが俺の給料決められるんですか!?同じバイトでしょ!」
謎に脅されたから、ムキになって反論するけど、飯野さんはそのままレジの方へ消えて行った。
あー、やっぱりあの人ムカつくな!
せっかく人が距離縮めようと歩み寄ったのに!
何がいけなかったんだよ?どっちも好みの子じゃなかったとか?そんなの知るか!
俺はただ、同じ時間に同じ空間で過ごすんだから仲良くやりたいだけなのに。
初めて人に冷たくされてちょっと傷付く俺だった。
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