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1章 似てるけど似てない二人
5.なんか落ち着く
しおりを挟む俺は道端にいたハラリを一人暮らしをしているマンションへ連れて来た。
マンションへ着く途中で少し話したけど、ハラリは俺と同じく人見知りしないタイプらしく、お互い前から知っていたかのように親しげに話す事が出来た。ちょっと俺様のような話し方をするけど、顔が良いからか気にならなかった。
俺の友達にはいないタイプで、ちょっと新鮮だった。
それにしても飯野さんに似ている。ピアスや髪色など、他にも襟足が長い所とかは違うけど、顔が似てるから飯野さんが笑ったらこんな感じかぁと重ねたりしたりしなかったり。
部屋の中に入るとハラリは、ソファにドサッと座ってくつろぎ始めた。俺もこれぐらい堂々としていてくれるとやりやすくて良い。
「良い部屋住んでんじゃーん♪ここに入るまでに何回も鍵開けたし、金持ちか何か?」
「んーん。親が過保護なんだ。俺ってこんな見た目だから幼稚園の頃誘拐されかけた事があって、そっからすげぇ大事に育てられたの。本当は家出るのも反対されたんだ」
「ふーん。まぁ可愛い面してるもんなぁ奏多って。18って言ったか?いくつになっても親からしたら子供は子供ってな♪」
誰にでも付いて行っちゃう俺も悪かったんだけどな。考えてみれば笑顔で優しいなと思ったら誰とでも話して仲良くなっちゃう俺の性格も良い事ばかりじゃ無かったかもな。
中学の頃、大人しい女子にも周りと同じようにフレンドリーに接してたらいつの間にか好かれてて、告白を断ってもストーカー紛いな事された事もあるし、友達の彼女にも気に入られて友達から恨みを買うと言う面倒な事もあった。
「でもさ、ガキの頃にそんな怖ぇ思いしてんのに俺の事家に入れちゃうのな♪」
「うん。俺って嫌な事あってもすぐ忘れられちゃうんだ。それに、ハラリは知り合いに似ててなんか放っておけないって言うか」
「さっきも言ってたな。どんな奴なの?気になるんだけど」
「顔がそっくり!でも性格は似てないよ。飯野さんって言うバイト先の先輩なんだけど、その人は笑わないし厳しい人~」
「飯野さん。ね……奏多のバイト先ってどこー?」
「コンビニだよ。ここから近いとこじゃなくて少し離れた所の。ハラリは何してる人?」
「俺はモデルやってるよ」
「凄い!ハラリってかっこいいもんな♪」
「まぁな!今は休んで人生の旅に出てるとこだ。早速知らねぇ土地でくたばりそうになったけどな」
「どこから来たの?あ、お腹空いてる?冷凍チャーハンならすぐに出来るけど」
「食う♪」
ハラリは水だけであんなに喜んでたんだから、きっとお腹も空いてるだろうと俺はすぐに出来るチャーハンを用意してあげた。
するとハラリは嬉しそうに食べてくれた。
「うめぇ♪いろいろサンキューな♪」
「いいよ。俺って寂しがり屋だから家に人いるの嫌じゃないし、ハラリの体力が回復するまでここにいたらいいよ」
「奏多って良い奴だなぁ!あ、それとどこから来たのか聞いたな?それだけど……」
「うん……どこー?」
スプーンを持っているハラリが何かを言っていた。だけど俺はかなり激しい睡魔に襲われていた。
無理も無いか、昨日学校が終わって友達と遊んだ後にそのまま深夜のバイト行ったんだもん。さすがに体が限界なのかも。
正直、とても眠かった。
そんな俺に気付いたのか、ハラリはチャーハンを食べ終えた後、スプーンを皿に置いて俺の頭を撫でた。
あ、気持ち良い♪
「お前も疲れてんだな。ゆっくり休めよ♪」
「ごめん……そうする~」
知らない男を家に入れて、すぐに寝てしまうなんて無防備過ぎると思うだろ?きっと親に知られたらめちゃくちゃ怒られると思う。
でも俺は一人でいるよりも誰かにいてもらった方が落ち着くんだ。
何をするでもなくこうして頭なんか撫でられたら幸せ過ぎてとても気持ち良く眠れそうだ。
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