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1章 似てるけど似てない二人
4.銀髪の男
しおりを挟む飯野さんと別れてアパートへ帰る途中だった。
目の前にしゃがみ込む一人の男を見つけた。
道の端にうずくまって、首を垂れているその男は綺麗な銀髪だった。格好は柄物のシャツに黒のジーンズ。そしてサンダル。チラリと見える耳にはピアスがあった。
酔っ払ったホストか?
朝早い時間だったけど、周りにはちらほら人がいて男を避けて通っていた。
「うう……」
え?今の呻き声?
やっぱり酔っ払い?それとも体調悪くて苦しんでる?
とにかく俺は放っておけなくて声を掛ける事にした。
「大丈夫ですか?」
「……水」
「水?あ、今持ってません。ちょっと待ってて」
どうやら喉が渇いてるらしい。
それならばと俺はキョロキョロ周りを見渡して自動販売機を探す。
少し離れた所にあるのが見えて俺は急いで水を買いに行く。
ミネラルウォーターのペットボトルを握りしめてぐったりしている男の元へ戻り、それを渡してあげる。
その時に見えた横顔に驚いた。
え?飯野さん??
男の顔はさっきまで一緒にモーニングを食べていた飯野さんとそっくりだった。
男は俺からペットボトルを受け取ると、急いで蓋を開けてゴクゴクと飲み出した。
「ぷはー!生き返ったぁ!マジ死ぬかと思ったぁー!」
「!!」
顔を横からじゃなくて、正面から見て更に驚いた。
切れ長の男らしい目に、スッと通った鼻筋。大きく開いた唇は厚くもなく薄くも無かった。
髪色こそ違うけど、この男は飯野さんにそっくりと言うか瓜二つだった。
ただ違和感があるのはこの男が笑顔だと言う事。俺はまだ飯野さんの笑顔を見た事がないから、今水を飲んで喜んでいる男は笑っている姿を見て、飯野さんじゃないのかも?と思った。
「いやー、兄ちゃん悪ぃな!もう何日も何も飲まず食わずで死にかけてたんだわ」
「え、そ、そうなんだ!」
「ん?俺の顔に何か付いてるか?」
あまりにも似過ぎてたからずっと見てたら、突っ込まれた。その時の顔も笑顔で、とてもイケメンさが際立って思わずドキッとしてしまった。
お、男相手にドキッて何だ?
いや、そんなけ飯野さんはかっこいいって事なんだよな。てかこの人は飯野さんじゃないけどな!
「ううん!ちょっと知り合いに似てたから。あ、俺行くね」
「待て。礼させろ♪とりまお前んち行くぞー♪」
「いや、礼とかいらないって。ちょ、ええー!?」
言う事も聞かずに、男は立ち上がり俺の腕を引っ張って歩き出す。強引だな~!でも飯野さんに似てるからかな?嫌じゃないんだよな。
ってダメダメ!さすがの俺でも知らない人に付いて行くのはいけない事だって分かってるっての!
「本当にお礼はいらないからっ!離して!」
「あ?んだよ、てかよ~、この次元の連中は何でそんななんだ?俺が声掛けてもスルーしやがる。俺が野垂れ死にそうになってるの見て声掛けてくれたのはお前だけだぞ」
「この次元?あの、俺宗教とか興味ないんで!」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ!やっと相手してくれる奴に会ったんだ、手放さねぇからな!」
背の高いこの男はどこまでも飯野さんにそっくりだった。顔や身長もだけど、声までも。だからか分からないけど、男にそう言われてまたドキドキしていた。
笑顔の飯野さんってすげぇ良い!
「あ、そだ。お前名前なんてーの?」
俺が見惚れてると、男は振り返って笑顔で聞いて来た。
「相馬、相馬奏多!」
「そーまかなた?」
「奏多でいいよ」
「かなた……オーケー♪奏多な♪俺はハラリ!よろしくな♪」
外人さんかな?苗字なのか、下の名前なのかは分からないけど、焼肉みたいな珍しい名前だなと思いつつも俺はこの時既に飯野さん似の男、ハラリに心を開いていた。
「さぁ奏多んち行くぞー」
「てか逆方向だから。俺んちあっち~」
「んあ!?早く言えよ!」
初対面だから俺の家を知らないのは当たり前だけど、まるで飯野さんが間違えたようで笑えた。
それにしても似てる。もしかしたら親戚か何かかも?
ああ、あと似てる所と言えば口が悪い所かな!
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