【完結】君が教えてくれたモノ

pino

文字の大きさ
5 / 43
1章 似てるけど似てない二人

4.銀髪の男

しおりを挟む

 飯野さんと別れてアパートへ帰る途中だった。
 目の前にしゃがみ込む一人の男を見つけた。
 道の端にうずくまって、首を垂れているその男は綺麗な銀髪だった。格好は柄物のシャツに黒のジーンズ。そしてサンダル。チラリと見える耳にはピアスがあった。
 酔っ払ったホストか?
 朝早い時間だったけど、周りにはちらほら人がいて男を避けて通っていた。


「うう……」


 え?今の呻き声?
 やっぱり酔っ払い?それとも体調悪くて苦しんでる?
 とにかく俺は放っておけなくて声を掛ける事にした。


「大丈夫ですか?」

「……水」

「水?あ、今持ってません。ちょっと待ってて」


 どうやら喉が渇いてるらしい。
 それならばと俺はキョロキョロ周りを見渡して自動販売機を探す。
 少し離れた所にあるのが見えて俺は急いで水を買いに行く。
 ミネラルウォーターのペットボトルを握りしめてぐったりしている男の元へ戻り、それを渡してあげる。

 その時に見えた横顔に驚いた。

 え?飯野さん??
 男の顔はさっきまで一緒にモーニングを食べていた飯野さんとそっくりだった。
 男は俺からペットボトルを受け取ると、急いで蓋を開けてゴクゴクと飲み出した。


「ぷはー!生き返ったぁ!マジ死ぬかと思ったぁー!」

「!!」


 顔を横からじゃなくて、正面から見て更に驚いた。
 切れ長の男らしい目に、スッと通った鼻筋。大きく開いた唇は厚くもなく薄くも無かった。
 髪色こそ違うけど、この男は飯野さんにそっくりと言うか瓜二つだった。
 ただ違和感があるのはこの男が笑顔だと言う事。俺はまだ飯野さんの笑顔を見た事がないから、今水を飲んで喜んでいる男は笑っている姿を見て、飯野さんじゃないのかも?と思った。


「いやー、兄ちゃん悪ぃな!もう何日も何も飲まず食わずで死にかけてたんだわ」

「え、そ、そうなんだ!」

「ん?俺の顔に何か付いてるか?」


 あまりにも似過ぎてたからずっと見てたら、突っ込まれた。その時の顔も笑顔で、とてもイケメンさが際立って思わずドキッとしてしまった。
 お、男相手にドキッて何だ?
 いや、そんなけ飯野さんはかっこいいって事なんだよな。てかこの人は飯野さんじゃないけどな!


「ううん!ちょっと知り合いに似てたから。あ、俺行くね」

「待て。礼させろ♪とりまお前んち行くぞー♪」

「いや、礼とかいらないって。ちょ、ええー!?」


 言う事も聞かずに、男は立ち上がり俺の腕を引っ張って歩き出す。強引だな~!でも飯野さんに似てるからかな?嫌じゃないんだよな。
 ってダメダメ!さすがの俺でも知らない人に付いて行くのはいけない事だって分かってるっての!


「本当にお礼はいらないからっ!離して!」

「あ?んだよ、てかよ~、この次元の連中は何でそんななんだ?俺が声掛けてもスルーしやがる。俺が野垂れ死にそうになってるの見て声掛けてくれたのはお前だけだぞ」

「この次元?あの、俺宗教とか興味ないんで!」

「ごちゃごちゃうるせぇぞ!やっと相手してくれる奴に会ったんだ、手放さねぇからな!」


 背の高いこの男はどこまでも飯野さんにそっくりだった。顔や身長もだけど、声までも。だからか分からないけど、男にそう言われてまたドキドキしていた。
 笑顔の飯野さんってすげぇ良い!


「あ、そだ。お前名前なんてーの?」


 俺が見惚れてると、男は振り返って笑顔で聞いて来た。
 

「相馬、相馬奏多そうまかなた!」

「そーまかなた?」

「奏多でいいよ」

「かなた……オーケー♪奏多な♪俺はハラリ!よろしくな♪」
 

 外人さんかな?苗字なのか、下の名前なのかは分からないけど、焼肉みたいな珍しい名前だなと思いつつも俺はこの時既に飯野さん似の男、ハラリに心を開いていた。
 
 
「さぁ奏多んち行くぞー」

「てか逆方向だから。俺んちあっち~」

「んあ!?早く言えよ!」


 初対面だから俺の家を知らないのは当たり前だけど、まるで飯野さんが間違えたようで笑えた。
 それにしても似てる。もしかしたら親戚か何かかも?

 ああ、あと似てる所と言えば口が悪い所かな!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜

紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉 学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。 ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──? 隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡ いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...