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1章 似てるけど似てない二人
3.不器用な先輩
しおりを挟むバイト後、飯野さんと静かで落ち着いた雰囲気のカフェに来た。モーニングメニューがあったから俺は遠慮なくソーセージとスクランブルエッグにトーストサラダセットを。飯野さんはトーストとバターのみのセットを頼んでそれぞれ食べていた。
俺はセットのアイスコーヒーを飲みながら改めて飯野さんを見てみる。
こうして黙っていると本当に羨ましい容姿をしている。シュッとした輪郭に、少しキツい感じの切れ長の目は男らしくて、くっきり二重の俺の憧れだ。スッと通った鼻筋に薄めの唇はクールさを引き立たせて、喋らなければ文句なしのイケメン。俺はそう思う。
既に食べ終わった飯野さんはホットコーヒーを飲みながら俺を睨んだ。
「人の顔ばっか見てないでさっさと食えよ」
「いや~、飯野さんって男前だなぁって見惚れてたんですよ」
「あ?」
「俺って可愛い顔してるでしょ?実はコンプレックスなんです。俺も飯野さんみたいな男らしい顔になりたかったな~」
俺のフェイスは世の中では童顔と言う部類になる。だから甘やかしてくれる事が多く、誰とでも話せる俺は人付き合いで困った事は無かった。
だから余計に飯野さんから冷たくされて嫌なんだと思う。
褒めてるのに飯野さんは不機嫌そうな顔のまま俺を見ていた。
「あ、可愛いとか自分で言うなとか思ってます?もうね、開き直りですよ。可愛い顔してるねって言われて、そんな事ないですよ~って言う方が面倒じゃありません?そこらの女より可愛いのは分かってるんで俺は敢えてありがとうって言うようにしてるんです」
「別にそこまで聞いてない」
「そうですか?良い機会だから俺の事知ってもらおうと思って♪」
「いいから食えよ。さっさと帰るぞ」
「えー、何で早く帰りたがるんですか?俺の事誘ったの飯野さんじゃないですか~。あ、予定があるんですか?」
「今日誘ったのは少し言い過ぎたと思ったからだ」
「ん?……あ!バイト中の事ですか!?」
「そうだ」
うわぁ!それで誘ってくれたなんて、やっぱり飯野さんは不器用なだけで、本当は俺と仲良くしたかったんじゃん?
って、勝手な解釈だけど、そう言う事でいいよな?うん!そう言う事にしよう♪
俺はとても嬉しくなって、残りのトーストをパクッと頬張り機嫌良く聞いてみた。
「なんだぁ♪飯野さんも気にしてくれてたんですね♪俺ってばこの人とは合わないかもーとか思ってたけど、飯野さんの事気に入りました♪これからも仲良くして下さい♪」
「……何で上から言うんだよ」
「いいじゃないですか♪あ、今日予定あるんですか?無いなら飯野さんち遊びに行きます♪」
「なんでそうなるんだよっ。てかお前眠くないのか?」
「さっきまでは眠かったですよ。一緒にいた人があまりにも冷たくてまるで一人で過ごしてたみたいでしたから♪でも今は楽しいから眠気覚めました♪」
「……無理。俺は寝る」
「えー、ちょっとだけ!ねぇいいでしょ?」
「今日もシフト入ってんだ。頼むから寝かせてくれ」
飯野さんは困ったように眉毛を下げて頼み込んで来た。
うわ、こんな顔もするんだ!
てか飯野さんからこんな風にお願いされるなんて思わなくて何か嬉しいや♪
「あは♪仕方ないですね~♪今日は寝かせてあげますけど、次は遊びに行きますからね♪」
「……ああ」
俺と目が合うと、頬を少し赤く染めて頷く飯野さん。
はいこの人俺の事好きなの確定~♪
ってのは半分冗談で、多分だけど嫌われてはいないと思うんだ。
だから俺はこれから遠慮なく距離を縮めてやろうと心に誓った。
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