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1章 似てるけど似てない二人
6.どこから来たの
しおりを挟む目が覚めると俺はベッドにいた。自分で寝室に行った記憶は無い。
ふと寝る前に会った銀髪の男を思い出す。あれは、夢だったのか?
飯野さんに良く似た顔をした男、名前はハラリ。
「起きたか?もう夕方だけど良く寝てたな~」
「ハラリ……?えっ!?夕方!?」
隣に寝転がっていたハラリにもだけど、夕方だと言う事にも驚いた。
そんなに寝てたのか!?俺、どんなけ疲れてたの!深夜なんて初めて出たし、飯野さんとは初めあんなんだったし、知らない間に疲れ溜まってたのかなぁ。
上半身を起こしてスマホを見ると、友達から数件メッセージが入っていた。別に会う約束してた訳じゃないからそれはそれで良かったけど、せっかくの土曜日を無駄にした感がとても嫌だった。
学校もバイトも休みだし遊ぼうと思ってたのにぃ!
俺が一日無駄にした事を心の中で嘆いていると、隣に寝転がっていたハラリが起き上がり後ろから俺を抱きしめながら髪の匂いを嗅がせるように押し付けて来た。
「奏多が寝てる間にシャワー借りた。お前のシャンプー良い匂いするな♪」
「うん♪良い匂い~♪ってハラリ!現実だったのか!」
「おう、俺はちゃんとここにいるぜー」
ハラリがいる事もだけど、ちょっと距離感が近くて戸惑った。だってよくよく考えたらハラリも同じベッドにいたんだ。そして普通に抱き付いて来てるけど、さすがの俺でも知り合ったばかりの人にそこまで馴れ馴れしくはしないぞ。
でも嫌じゃないからそのままでいると、ハラリにほっぺにキスをされた。
は!?はぁ!?
それはさすがにしないだろ!!
「な、何!?ハラリさん!?」
「うわぁ、その反応可愛い♡」
「あのー、ハラリってそっち系?」
「ゲイかって聞いてんの?」
「……はい」
「んー、分かんね!でも俺男と付き合ってるぞ」
「そうなんだ……って恋人いんのかよ!?」
「ああ、多分な」
それなのに俺にキスしたのかよ!ほっぺにだけど、ダメだろ!しかも多分って何だよ!ハラリってそう言うのだらしない人なのかー!?
俺は慌てて離れて距離を取ると、ハラリは笑顔のままベッドから出て寝室の窓を開けた。
「この星は良い星だ。だけどちと他人に興味なさ過ぎる。興味はあってもそれには触れないようにしたり、自分の事だけで精一杯ってとこか?」
ハラリは突然妙な事を言い出した。それはまるで自分が他の星から来たとでも言うような口振りで、何の事を言っているのかすぐにピンと来ないような言い方だった。
いや、突然じゃなかった。道端で会った時も次元がどうのこうのとか言ってたな。俺は宗教の勧誘をされるのかと思ってそのまま流してたけど、今のハラリを見てると冗談を言ってるようには聞こえなかった。
そう言えば寝る前にハラリが何かを言おうとしていたのを思い出した。
「ハラリってどこから来たの?」
俺が質問を投げ掛けると、ずっと窓の外を見ていたハラリが振り返った。逆光だから良くは見えなかったけど夕陽に照らされた部分のハラリの顔がとても輝いて見えた。
そしてハラリは堂々とした笑顔のまま教えてくれた。
「地球だよ。こことは別の次元にある地球だ」
普通の人間なら頭のおかしい人だとか言うんだろう。いつもの俺でもそう思っていたと思う。
だけど、この時のハラリの言う事は信じたいと思っていた。理由は分からない。多分、飯野さんに似ていたからかも知れない。
振り向く前のハラリは外を見て何を考えていたのだろう。
飛んでいる鳥を見ていたのか、沈みゆく夕陽を見ていたのか、はたまたその先の俺の知らない世界を見ていたのかは分からない。
俺は敢えて聞こうとせずにただハラリを見ていると、ハラリは俺に近付きこう言った。
「うーん、上手く言えねぇけど、俺の事は異世界の人間、それか宇宙人だとでも思ってくれ♪」
「あは、余計に頭こんがらがるって。でも分かった。ハラリは悪い人じゃないって事だな」
非現実的な事を言うハラリに向かって俺は笑い掛けていた。
良い人なのか普通の人なのか悪い人なのかは分からないけど、俺は飯野さんにそっくりなハラリを良い人だと信じたかったんだ。
ハラリは俺の問い掛けにニカッと笑って大きく頷いた。
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