7 / 43
1章 似てるけど似てない二人
6.どこから来たの
しおりを挟む目が覚めると俺はベッドにいた。自分で寝室に行った記憶は無い。
ふと寝る前に会った銀髪の男を思い出す。あれは、夢だったのか?
飯野さんに良く似た顔をした男、名前はハラリ。
「起きたか?もう夕方だけど良く寝てたな~」
「ハラリ……?えっ!?夕方!?」
隣に寝転がっていたハラリにもだけど、夕方だと言う事にも驚いた。
そんなに寝てたのか!?俺、どんなけ疲れてたの!深夜なんて初めて出たし、飯野さんとは初めあんなんだったし、知らない間に疲れ溜まってたのかなぁ。
上半身を起こしてスマホを見ると、友達から数件メッセージが入っていた。別に会う約束してた訳じゃないからそれはそれで良かったけど、せっかくの土曜日を無駄にした感がとても嫌だった。
学校もバイトも休みだし遊ぼうと思ってたのにぃ!
俺が一日無駄にした事を心の中で嘆いていると、隣に寝転がっていたハラリが起き上がり後ろから俺を抱きしめながら髪の匂いを嗅がせるように押し付けて来た。
「奏多が寝てる間にシャワー借りた。お前のシャンプー良い匂いするな♪」
「うん♪良い匂い~♪ってハラリ!現実だったのか!」
「おう、俺はちゃんとここにいるぜー」
ハラリがいる事もだけど、ちょっと距離感が近くて戸惑った。だってよくよく考えたらハラリも同じベッドにいたんだ。そして普通に抱き付いて来てるけど、さすがの俺でも知り合ったばかりの人にそこまで馴れ馴れしくはしないぞ。
でも嫌じゃないからそのままでいると、ハラリにほっぺにキスをされた。
は!?はぁ!?
それはさすがにしないだろ!!
「な、何!?ハラリさん!?」
「うわぁ、その反応可愛い♡」
「あのー、ハラリってそっち系?」
「ゲイかって聞いてんの?」
「……はい」
「んー、分かんね!でも俺男と付き合ってるぞ」
「そうなんだ……って恋人いんのかよ!?」
「ああ、多分な」
それなのに俺にキスしたのかよ!ほっぺにだけど、ダメだろ!しかも多分って何だよ!ハラリってそう言うのだらしない人なのかー!?
俺は慌てて離れて距離を取ると、ハラリは笑顔のままベッドから出て寝室の窓を開けた。
「この星は良い星だ。だけどちと他人に興味なさ過ぎる。興味はあってもそれには触れないようにしたり、自分の事だけで精一杯ってとこか?」
ハラリは突然妙な事を言い出した。それはまるで自分が他の星から来たとでも言うような口振りで、何の事を言っているのかすぐにピンと来ないような言い方だった。
いや、突然じゃなかった。道端で会った時も次元がどうのこうのとか言ってたな。俺は宗教の勧誘をされるのかと思ってそのまま流してたけど、今のハラリを見てると冗談を言ってるようには聞こえなかった。
そう言えば寝る前にハラリが何かを言おうとしていたのを思い出した。
「ハラリってどこから来たの?」
俺が質問を投げ掛けると、ずっと窓の外を見ていたハラリが振り返った。逆光だから良くは見えなかったけど夕陽に照らされた部分のハラリの顔がとても輝いて見えた。
そしてハラリは堂々とした笑顔のまま教えてくれた。
「地球だよ。こことは別の次元にある地球だ」
普通の人間なら頭のおかしい人だとか言うんだろう。いつもの俺でもそう思っていたと思う。
だけど、この時のハラリの言う事は信じたいと思っていた。理由は分からない。多分、飯野さんに似ていたからかも知れない。
振り向く前のハラリは外を見て何を考えていたのだろう。
飛んでいる鳥を見ていたのか、沈みゆく夕陽を見ていたのか、はたまたその先の俺の知らない世界を見ていたのかは分からない。
俺は敢えて聞こうとせずにただハラリを見ていると、ハラリは俺に近付きこう言った。
「うーん、上手く言えねぇけど、俺の事は異世界の人間、それか宇宙人だとでも思ってくれ♪」
「あは、余計に頭こんがらがるって。でも分かった。ハラリは悪い人じゃないって事だな」
非現実的な事を言うハラリに向かって俺は笑い掛けていた。
良い人なのか普通の人なのか悪い人なのかは分からないけど、俺は飯野さんにそっくりなハラリを良い人だと信じたかったんだ。
ハラリは俺の問い掛けにニカッと笑って大きく頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
握るのはおにぎりだけじゃない
箱月 透
BL
完結済みです。
芝崎康介は大学の入学試験のとき、落とした参考書を拾ってくれた男子生徒に一目惚れをした。想いを募らせつつ迎えた春休み、新居となるアパートに引っ越した康介が隣人を訪ねると、そこにいたのは一目惚れした彼だった。
彼こと高倉涼は「仲良くしてくれる?」と康介に言う。けれど涼はどこか訳アリな雰囲気で……。
少しずつ距離が縮まるたび、ふわりと膨れていく想い。こんなに知りたいと思うのは、近づきたいと思うのは、全部ぜんぶ────。
もどかしくてあたたかい、純粋な愛の物語。
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる