【完結】君が教えてくれたモノ

pino

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3章 お泊まり

17.名前

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 俺はテーブルの上を軽く片付けながら飯野さんに話し掛けていた。


「俺の性格ってのもあるけど、俺怒られるのとか好きじゃないんです。冷たくされたりしたらその人とは話し出来ませんよ。何だこいつ?ってなって放っておきます」

「そんなの誰でもそうだろ。てか俺にも何だこいつって思ってたのか?」

「はい♡初めはね!もっと優しく教えてくれればいいのに~って思ってました♪」

「明るく言うんじゃねぇよ」

「暗く言われても飯野さんが困るでしょ?明るい方が聞く側も嫌な気持ちにならないかなって♪」

「まぁ、言ってる事は分からなくないな」

「でしょー!?なんか初めて飯野さんに褒められた気がする!」

「褒めてはねぇよ。なぁ、お前って昔からそんななの?」

「多分ずっとこんなです♪明るくて楽しいって良く言われます♪」


 俺が自信満々で答えると、飯野さんは無表情のままじーっと見て来た。
 また自分で褒めるような事言いやがるとか思ってんのかなぁ?でもさ、事実なんだから、違いますよとか嘘つきたくないし。


「飯野さんはどうなんですか?昔からそんななんですか?」

「ああ」


 一言だけ言って顔をふいっと逸らされた。
 ずっとこんな風に笑わずに生きていくなんて出来るのか?確かに真面目なのは良い事だけど、それじゃつまらなくないか?
 俺はどんな時でも笑っていたいよ。だってその方が毎日楽しいじゃん。
 飯野さんはどうして笑わないんだろう?


「比良里」

「!」


 ふと名前で呼んでみる。しかも呼び捨て。
 別に意味なんてない。どんな反応するのか見たかっただけだ。
 俺は誰かと話して笑い合うのに意味なんていらないと思ってる。気が合う合わないはあるだろうけど、言葉が通じるなら笑顔でこんにちはとかでもいいじゃん。
 笑顔でこんにちはって返せばもう友達じゃん?


「比良里って名前、良いですよね」

「下の名前で呼ぶな。好きじゃない」

「どうしてですか?かっこいいじゃないですか!」

「ろくに育てようともしない癖に産んだ親が付けた名前だ。適当さが滲み出てるだろ。それなら太郎とかで良かった」


 まさか親から貰った名前をそんな風に言うなんて思わなくて俺は驚いた。
 確かに珍しい名前だなとは思ったよ?ハラリだって焼肉みたいな名前だし、キラキラネームとか知り合いにもっといるぜ?

 捻くれてんなぁと思ったけど、飯野さんの横顔が少し寂しそうに見えたから俺はそのまま質問を続けた。


「飯野さんってグレてたんですか?親から貰った物なのにそんな風に言うなんてダメですよ」

「グレてねぇよ。それと俺に親はいない。ガキの頃捨てられて施設で育った」

「えっ!マジですか!?」


 これはどっちだ!?
 飯野さんの場合嘘は付かなそうだし、本気に捉えても何て言えばいい!?
 いきなり超重い話題ぶっ込んで来てくれたな!


「マジだ。さすがに高校は出たかったから途中で里親んとこに世話になったけど、卒業後は家を出て一人だ」

「嘘……飯野さんって大学生なのかと思ってました……」

「嘘じゃねぇよ。とにかく下の名前で呼ぶな」

「でも、ハラリは呼んでますよね?何で俺はダメなんですか?」

「あいつは……なんとなく嫌じゃないから」

「何それー!ズルい!俺も飯野さんと仲良くしたいのに!」


 ハラリも俺はお前だとか言ってたし、二人が俺のいない間に仲良くなってるのが想像以上で少しだけヤキモチだ!
 俺だって飯野さんの事親しげに下の名前で呼びたいんだい!


「もー勝手に呼びます!嫌がっても知りませーん!」

「お前って本当に友達いんの?」

「はぁ!?それ飯野さんが言います!?」

「いや、俺なんかと仲良くしたいとか、他に友達いないんかなぁって」

「いますよ!いるけど、飯野さんは他とは何か違うんです。だって俺の目標は飯野さんの笑顔を見る事ですもん」

「ふーん。デカい目標だな」


 飯野さんはチラッと俺を見て微笑んだ。
 ん?今微笑んだ!?笑った!?

 俺は急いで飯野さんを覗き込んで確認してみるけど、既に無表情に戻っていた。

 うわー!もっとちゃんと見れば良かった!絶対今笑ったよ!


「飯野さん!今笑ってましたよね!?もう一回お願いします!」

「気のせいだろ。もしそうだとしたら見逃したお前が悪いんだ」

「そんなぁ~。でもいいです♪俺、今楽しいから♪」

「そっか」


 また飯野さんと仲良くなれた気がするんだ。
 無表情でも、怒ってても、今の飯野さんとなら嫌だなと思わずにいられるもん。
 ハラリにヤキモチを妬いたけど、俺だって負けてないもんね♪

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