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3章 お泊まり
18.飯野さんからの命令
しおりを挟む俺と飯野さんが寝室へ行くと、床に敷いた布団にハラリが大の字で寝ていた。てっきりハラリの事だからベッドを占領してるかと思ったけど、そうじゃないらしい。
俺はダメ元で目一杯可愛い笑顔を作って飯野さんにこう言ってみた。
「うち客用の布団一組しかないんですよ~。幸いベッドはセミダブルなんで良かったらご一緒しません?」
「ご一緒する訳ねぇだろ。ソファ借りるぞ」
案の定、迷う事なく断られた。
ここで同じベッドで寝て更に親交を深められたらと思ったんだけどな~。ハラリも同じ部屋で寝てるし、三人仲良く寝れたら良かったのに。
俺はごねてみようと思った。
「えー、そんなぁ~。ハラリも一緒に寝れたし、窮屈じゃないですよ?寝心地も悪くないですよ?」
「あ?ハラリも一緒に寝ただ?」
おっ!食い付いた♪凄い嫌な顔してるけど、無関心な反応されるよりはマシでしょ。
俺はもう少し押してみる事にした。
「はい♪他にも友達が泊まりに来たら布団やソファ埋まったらベッドで一緒に寝る人もいますよ?さすがに三人はキツキツだったな~」
「お前、いつもそんな事してるのか?」
「友達が泊まりに来たらね。たまに床で寝ちゃう人もいるけど、ベッドじゃなきゃ寝れないって人もいるんで」
「…………」
ずっと不機嫌そうな表情の飯野さんは少し黙っていた後、歩き出して先にベッドに入り込んだ。
おお!これは成功したって事か!?
「飯野さん♪一緒に寝てくれるんですか!?」
「うるせぇ。誰とでも寝る男が」
「んなっ!?言い方!寝るは寝るでもいろんな意味があるでしょ!その言い方だと俺がまるで誰にでも股開く女みたいじゃないですか!」
「俺からしたら変わらん」
既にベッドに横になる飯野さんを追い掛けるように俺もベッドに潜りこんで、飯野さんの横につく。
飯野さんには嫌な言い方ばかりしかされないけど、でもさ、何だかんだ泊まってくれるし、何だかんだ一緒に寝ようとしてくれるし、やっぱり飯野さんって俺の事好きだよな?
可愛いくて仕方ない後輩なんじゃない?
そう思うと嬉しくてニヤけちまう。
「飯野さんは素直じゃないですね~♪ふふふ♪」
「俺の素直な意見を受け入れられないお前の方が素直じゃねぇだろ」
「俺は素直ですよ♪飯野さんと寝れて嬉しいですもん♡」
「寄るなっ狭いっ」
飯野さんから返ってくる返事の全てが嬉しくてピトッと体をくっ付けて甘えると、身を引かれた。
そんなので俺が挫けると思うなよ!?
俺は飯野さんの腕を自分の方に引く。
「それなら飯野さんがもっとこっち来て下さい♪ほらもっと真ん中に♡」
「お前な……本当に誰にでもこういう事をしてるのか?信じられない」
「酷いなぁ~。こんな事やりませんよ。友達と寝たらむしろ床に落とし合いが始まりますよ」
「じゃあ何で俺にはしつこいんだよ」
「そうですね?飯野さんは反応が面白いからですかね?」
「馬鹿にしてんのか」
「あはは♪ほら面白い♪でも、飯野さんにしかくっ付いたりはしませんよ。これは本当です」
「……そっか」
ずっと嫌そうな声だったけど、最後は安心したような落ち着いた返事だった。
飯野さんには冷たくされるから、もっと仲良くなりたいって思って人よりも過剰にスキンシップを取っちゃうのは認めるよ。
でもそれだけじゃないと思うんだ。
飯野さんて何か安心するんだ。
俺の事を怒りつつも受け入れてくれる事がとても嬉しくて、それに甘えたくなるそんな感じ。
だからこうしてくっ付いているのをいつの間にか何も言わずにいてくれてる所とか、本当に嬉しくて大好きだなって思う。
「飯野さん大好きです♡」
「っ奏多!?」
「飯野さんと話す度に好きになっていきます。もっと飯野さんの事を知りたいし、もっと飯野さんと話したいってそう思います♪」
大人しく仰向けになって隣にいてくれる飯野さんをギューって抱き締めながら思っている事を伝えてみた。
すると飯野さんは焦ったような声を出して俺の肩を掴んで来た。
「奏多。それならもう俺以外の人と一緒に寝るのはやめろ」
「えっ?あ、もしかしてヤキモチですかぁ?飯野さんも可愛いとこあるんですね♪」
「俺は本気で言ってんだ。泊めたり泊まったりは目を瞑るけど、同じ布団でだけは寝るな」
「はは、それってまるで付き合ってる恋人に言うやつみたいですよー?てか飯野さんって束縛するタイプなんですか?意外ですね~」
「おい、どうなんだ?やめられるのか?」
「あーはいはい。分かりましたよ。飯野さん以外とは寝ませんよ。その代わり飯野さんが寝てくれるんですよね?」
「いいぞ」
「本当に!?やったぁ♪」
なんか面倒だったから適当に話を合わせていたら、良い方向へ進んだ気がする!
とにかく俺と飯野さんは大分距離が縮んだと思うんだ。
あとは笑顔を見るだけなんだけど、これがなかなか難しいんだよなぁ。
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