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3章 お泊まり
16.説教
しおりを挟む急遽始まったお泊まり会!俺の家でイケメン二人が俺の寝巻き着て、お酒を飲みながらわいのわいのやっている姿が楽し過ぎて写メってSNSで自慢しようとしてると、飯野さんに止められた。
かろうじて一枚アップ出来たけど、本気で怒らせたくないからもう辞めようと思う。
「勝手に人の写真撮ってんじゃねぇよ」
「撮るぐらいいいじゃないですか♪思い出残しましょ♪」
「そうだぞ比良里。今この時ってのはもう戻っては来ねぇんだ。楽しまなきゃ損だぞ」
「お前はお気楽過ぎだ。金も無い癖にフラフラしてていいのかよ」
「金がねぇのは仕方ねぇだろ。俺が本気出しゃこの次元でも荒稼ぎ出来るけど、それじゃねじ曲げちまうからやらないだけだ」
「また訳の分からない事を言いやがって。そうやって現実逃避ばかりしてたらろくな人生にならないからな」
「あー、ハラリはちょっと特殊だからその辺にしといてやって下さいよ」
「奏多きゅん優しい~♡」
「いちいち奏多に張り付くな!」
酒が回っているハラリは機嫌良く俺に抱き付いて戯れて来た。俺もほろ酔い気分だったので、抱き返してやると、飯野さんが乱暴にハラリを引き剥がした。
飯野さんてば酒に強いのかな?酔えないとか?酔えないのって可哀想だよな~。って、飯野さんの場合普段からこうだから冗談が通じないのは常に可哀想だよな。
「んだよ比良里。お前も奏多に触れたくて仕方ねぇ癖によ。良い加減素直になったらどうだ?ん?」
「あ、またそんな言い方して~。飯野さんに怒られるぞー」
「お前も少しは抵抗しろよ。もっとしっかりしろ!」
「うえーん、飯野さんが怒るよ~」
「はぁ、本当に世話の焼ける俺だよ。まぁここまで捻くれちまった事には同情はするけどよ」
「あ?それ、俺の事言ってんのか?」
俺が場の空気を和ませようとふざけても、ハラリはため息をついてそんな事をぼやく。うん、飯野さんの事を言ってるんだろう。
あまりにも似ている部分が多すぎるから、自分と重ねて見てるのか、ハラリはやれやれといった感じだった。
それが気に入らないのか飯野さんは元々不機嫌そうだった表情を更に曇らせて反論していた。
「そうだよ。そのままだとやっと見付けた大切なものすら手に入れられねぇぞ」
「知った風な口を聞くな」
「知ってんだよ。俺はお前だ。そしてお前は俺!現実逃避してんのはお前の方だ!」
「……何言ってんだよ?」
ハラリの声が少し大きくなったから、俺はさすがにヤバいと思って間に入る事にした。
何があってもどんな時でも笑っているあのハラリが大きな声で怒るなんて初めて見た。
ハラリは大きな声を出した後、脇腹ら辺を押さえて顔を歪めた。一人になった時に負った傷が痛むのかな。お酒も飲んじゃったし、これ以上興奮させない方がいいな。
「ハラリ!酔い過ぎ~!もうこの辺にしとこ?俺明日学校だし、そろそろお開きな~」
「そうする!久しぶりの酒で気分良かったのに酔いが覚めちまったぜ」
ハラリは立ち上がり、フラッと寝室へ消えた。
うーん、いつもの友達との飲み会とかだとこうはならないから今は気まずくて仕方なかった。
残された俺と飯野さん。話し掛けてもいいのか?
「飯野さん、ハラリに悪気はないんです。許してやってください」
「分かってる。何だろうな、あの男に腹立つ事言われても本心をつかれているようで心から怒れないんだ。お前になら本気で言い返せるんだけどな」
「きっとハラリが本当に飯野さんの事を想って言ってるからですよ。俺も飯野さんに怒られたら同じ気持ちになりますよ?言われた時は腹立つけど、少ししたら飯野さーん♡ってなっちゃいます」
「それはお前の性格だろ?」
ここで飯野さんの表情が柔らかくなった。気がした!まだ笑ったとか言い難い感じの顔だったけど、声とか優しくなったし、笑顔を見るチャンスじゃね!?
飯野さんの変化に感動した俺は、完全な笑顔を見る為に更に追い込もうと思う。
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