【完結】君が教えてくれたモノ

pino

文字の大きさ
23 / 43
4章 通い妻

22.辛かった事

しおりを挟む

 マンションの出入り口の横に飯野さんの姿が見えて俺は嬉しくなり駆け寄って愛想を振り撒く。きっと俺が犬だったら尻尾をブンブンと振っていただろう。
 俺に気付いた飯野さんは相変わらずの無表情で見下ろして来た。それでもこうして待っていてくれた事が嬉しくてそんなのは気にならなかった。


「飯野さーん♪お疲れ様でーす♪」

「お疲れ」


 俺に挨拶をした後に、後ろにいたハラリをチラッと見て頭を下げた。
 ここで俺は飯野さんの手に注目する。
 なんと!スーパーにでも行って来たのか食材らしき物が詰まったビニール袋を持っていたのだ!


「もしかして夕飯って、飯野さんが作ってくれるんですか!?」

「ああ。奏多はろくな物食べてなさそうだからな」

「嬉しい~♡マジで俺の彼女みたいっすね♡」

「……彼氏じゃなくてか?」


 うわっ!飯野さんがノッてきた!
 ヤバ♪面白ぇ♪しかもハラリみたいな事言ってるし!
 
 ハラリがニヤつきながら俺らにこう言った。


「おーおー、イチャつくのは二人きりの時にしてもらえますー?それと比良里、俺の分の夕飯あるんだろうな?」

「あるけど」

「イチャつくって、あー、ハラリってばヤキモチかぁ?」


 先にマンションの中に入って行こうとするハラリを追い掛けようとすると、飯野さんに腕を引かれて止められた。
 何か言いたそうな感じ?


「どうしました?俺達も入りましょ?」

「いや、ハラリはまだ泊まってるのか?」

「はい。しばらくいますけど?」

「そっか……」

「おーい、奏多鍵開けてくれ~」

「はいはーい。飯野さん、行きましょう♪」


 ハラリに言われてマンションの入り口でカードキーで解除をして中に入る。
 
 飯野さんにハラリの事を聞かれたけど、親戚って事になってるからいつかは帰ると思ってるんだよな。実際ハラリはいつかはいなくなるとは思うけど、そんなの未定だしずっといたら変に思われるかな?
 
 俺はハラリにはずっといてもらって構わないんだけどね。


 エレベーターで部屋のある階まで向かい、俺の部屋に入ると、ハラリはシャワーを浴びに行った。大分怪我も良くなったみたいで、顔の痣はもう無くなっている。
 俺は飯野さんを手伝おうとキッチンへ顔を出す。


「飯野さーん♪俺、何か出来る事ありますかー?」

「米を炊いてくれ」

「任せて下さい♪」

「あと使っていい皿を出してくれ」

「好きなの使っていいですよ?一人用なんで数は少ないですけど」

「普段自炊は?」

「しません♪コンビニ弁当か冷食です♪」

「だろうな」

「飯野さんは料理するんですね~。うーん、この材料は……肉じゃがですか!?」


 飯野さんがビニール袋から買って来た物を出していって、ピンと来た物を言ってみた。
 肉じゃがだったら嬉しいなぁ♪実家にいた時以来だ♪


「正解だ」

「やったー♪ちょー楽しみぃ♪」

「奏多、嫌いな物はあるのか?」

「あります!納豆はダメです!あとレバーも~」

「どっちも美味いのに」

「飯野さんは何でも食べそうですね」

「嫌いな物はねぇよ」


 喋りながら野菜を洗って行く飯野さん。とても手際がいいぞ!バイト中もだけど、家事も楽々こなしちゃうんだな~。
 イケメンで家事出来るってかなりポイント高くね?これで愛想まで良かったらモテモテでしょうに。


「飯野さんって勿体無いですよね。そんなけかっこ良くて、何でも出来るのに、何で愛想良くしないんですか?」

「むしろ何で興味も無いのに愛想良くしねぇといけないんだ」

「そりゃ人間同士の関わり合いですから~」

「言葉が交わせればいい。愛想良くしても無駄でしかないだろ」

「またそう言う事言って~。飯野さんは損してます!騙されたと思って笑ってみて下さいよ♪今より何倍も楽しい時間になりますよ♪」

「……だからお前は良く笑うのか?」

「そうですね~。俺はどんな時でも楽しい気分でいたいんです♪辛くても悲しくても、その後は笑って過ごしたいです♪」

「辛くても悲しくても?」

「はい♪」


 ここで飯野さんは驚いたような顔をした。ただ表情があまり変わらないから分かりにくい。だけど、これは驚いてると思うんだ。
 俺なりに飯野さんの表情を勝手に決めてそう思ってるだけかもだけど~。


「奏多にもそんな時があるのか?」

「ありますとも!最近辛かったのは始めたばかりのバイトで先輩に冷たくされた事ですね~」


 俺はワザとニヤニヤと笑いながら教えてやった。
 もしかしたら怒られるかもな。でも飯野さんから冷たくされた時は辛かった。いや、辛いと言うよりは腹が立って仕方なかったか。

 それを聞いた飯野さんは手を止めて俺を見て来た。別に今更怒られても平気だけどな。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜

紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉 学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。 ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──? 隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡ いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...