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4章 通い妻
23.初めて見た笑顔
しおりを挟む俺の言葉に飯野さんは眉毛を下げて悲しそうな顔を見せた。
それを見た瞬間、俺はドキッとしてしまった。
普段は無表情で、酷い時は仏頂面しかしない男の弱った表情を初めて見て、すぐに言葉が出て来なかった。
これは怒ってるんじゃないのか?
「あの時は悪かったよ。奏多に俺の方が接客舐めてるって言われて、自分自身でも分かっていた事だったから正直驚いたんだ。今まであそこまでハッキリと言ってくれる人はいなかった」
「え……?あ、ああ!思い出した!スマイルはサービスってやつですか?」
「忘れてたのかよ」
そういや俺ってばちゃっかり飯野さんに言い返してたな~。めっちゃ文句言われたから頭に来て思ってる事言っちゃたんだった。
俺が思い出したかのように聞くと、飯野さんは目を細めて微笑んだ。
え!?微笑んだ!?
ちょっと待って!バッチリ見たよ!
今笑ったよな!?
「い、飯野さん!めちゃくちゃかっこいいです!笑顔、初めて見ました……」
「っ!!」
俺がすぐに食い付くと、飯野さんは顔をふいっと横にして、キッチンの収納棚を漁り始めた。
ちょっと照れてるんじゃないのー?
飯野さんがツンデレなのもう知ってるもんね~♡
「ねぇ飯野さん!もう一回見せて下さいよ♪ねぇってば~」
「うるさいぞ。さっさと米を研げよ」
「はーい♪お米終わったら笑って下さいね♪」
「何で奏多が米を研いで笑わなきゃいけないんだよ」
「あはは♪楽しいなぁ♪」
もうすっかりいつもの無表情の飯野さんは呆れた言い方をしていたけど、俺は楽しくて一人で笑っていた。
ここでシャワーから戻って来たハラリが冷蔵庫からビールを取り出しながら声を掛けて来た。
「おっ賑やかだな~。何の話してたんだ?」
「あ、ハラリ聞いて!さっき飯野さんが笑っ」
「奏多!さっさと手を動かせ!お前は米を研ぐのにどんなけ時間掛けてんだ!」
「うわっ怒った!もー、せっかく良い感じだったのに~」
「あは、お前ら仲良いな~♪」
飯野さんに怒られてる俺を見てハラリが笑いながらそう言った。
うん。俺も仲良いなと思うよ。
だってさ、怒られても楽しいんだから。
それにしても飯野さんの笑顔は素敵だった!イケメンなのが更に増す感じ。
ハラリも時々見せる顔だったけど、飯野さんの笑顔にはレア度もあって本当にドキドキしたな~。
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