プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

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第一章三部〜アークダム王国アレッシオ編〜

第十七話 神力

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 白を背負った俺は、門兵に案内され、城門裏にある管理局に来ていた。
 ここで身分証を発行してくれるようだ。
 俺達は待合室のような場所で待機させられる。俺は扉に近い席に腰をかけた。
 すると別の衛兵が水をくれる。
 俺は白を起こして水を飲ました。元の姿に戻ってからまだまともな水を飲ましてなかったからだ。
 白はまだ眠そうにしていたが、水をごくごくと飲んでいく。衛兵が容器を回収すると今度はまた別の衛兵がやってきた。

 ガシャン

「!?」

 俺は突然のことに驚いた。俺と白の両手にはそれぞれ手錠が掛けられていたからだ。

「これは一時的なものだ。お前達が、問題ないと判断されればすぐに外してやる」

 衛兵はそう言って部屋を出て行った。
 俺は手錠をカチャカチャと弄ってみる。
 うーん、意外としっかりしてるのな。しかもこれ、鉄じゃないな。
 確証はないが、おそらく特殊な鉱石を使っているのだろう。魔力を吸い取られている感覚があった。
 たぶん、普通の奴らなら体内ですら魔力を扱えないかもな。魂自体から吸い取っているわけではなさそうだけど、結構多目に持っていかれる。
 まぁ、仮説だが、この鉱石は魔素を取り込むことで硬度を増してるんじゃないだろうか。
 俺は横で俺にもたれかかっていびきをかく銀髪少女を見下ろす。
 あまり外の魔素循環に慣れていないのに加えて、これじゃあ起きてもられないか。
 俺は少し、魔力を分け与えてやることにした。
 ある程度分けてやった時、さっきの衛兵が戻ってきた。

「よし、お前ら、ついてこい」

 俺は寝ぼけ眼の白を連れて衛兵の後をついて行く。案内された所には、ここの制服だろうか。緑色のブレザーを着た女性が座っていた。

「この子達は……?孤児ですか?……服もボロボロですし……ひどい」

 俺達の格好を見た女性職員は、すぐに他の職員に指示を出し、濡れた布を渡してくれた。
 俺達はそれで顔やら体を拭き、職員に返した。
 ふーっ、少しサッパリしたな。
 どうやら白も、顔を拭いたお陰で、目を覚ましたらしい。

「お?悠二~?ここはどこじゃ?」

 すると女性職員が俺の代わりに答えてくれた。

「ここはアレッシオの管理局です。ここでは身元の調査や身分証などの発行を行っています。……さっそくですが、あなた達の名前を教えて貰えますか?」

 女性職員は淡々と言う。白は何が起きているのかあまり状況が分かっていないようだったので、一言「俺に合わせとけ」と耳打ちしておいた。

「俺はユウジ。こっちはハクだ。…訳ありでな。今は二人で旅をしている。もう3日も何も食べていなくてな。この子に何か食べさせてやりたくてこの街に来たんだ」

 ーー以上が俺の考えた設定である。
 これなら白でも合わせやすいだろう。ちなみに白は森の獣の肉を馬鹿ほど食ったばかりだ。まぁ、水はなかったから喉は渇いていたけどな。

「なるほど、ではあなた達の年齢を教えていただけますか?」

 女性職員はそう言って俺達に紙とペンを渡す。

「ああ、ただこの子は読み書きが得意ではなくてな。代わりに俺が書くがいいか?」

「ええ、いいですよ」

 女性職員は快く承諾してくれる。恐らく俺達をモンスターに村を壊滅させられ、命辛々逃げてきた兄弟とでも思っているのだろう。
 とりあえず、俺は17で、白が10歳っと。これでよし。
 俺は女性職員に紙とペンを返す。

「はい。これであとは身分証を発行するだけですので少しお待ち下さい」

 女性職員はそう言うと、奥の部屋へと入っていった。
 ーー意外と上手くいくもんだな。
 俺は胸を撫で下ろすように息を吐いた。白は……知らな間に干し肉を囓っていた。
 ーーいや、どこから出したよ?それ
 俺はチラッと後ろの衛兵に目をやる。
 犯人は分かった。まぁ、別にだからどうこうするわけでもない。もし何かしようとしたところで、コイツには何もできないからだ。
 俺がロリコンを見逃してやると、女性職員が奥から戻ってきた。

「お待たせしました。こちらが貴方達の身分証になります。これを無くすと再発行が必要になりますので大切に持っていてくださいね」

 俺は彼女から名前と年齢の書かれたカードを受け取る。特殊な加工がしてあり、簡単に破壊されない作りになっていた。

「ありがとう。ならこれで町へ入ってもいいか?」

 俺は立ち上がり衛兵にも確認をとる。

「ああ構わない。ただ、もし職を探してるんだとしても冒険者ギルドには近づかないほうがいい。この町のギルドは特に危険な奴らが多いからな。君達の様な子供なら尚更だ」

「……どうも」

 俺は背を向けて白の手を引いて連れ出す。

「あ!ちょっと待ってください!」

「!?」

 突然の聞こえる大きな声に俺と白、多分衛兵も驚いただろう。俺達は足を止めて後ろを振り向いた。

「ご、ごめんなさい。でも、あなた達、今日泊まる予定の宿屋はありますか?それに、お金も持っていませんよね?」

「ーーうっ」

 た、確かに……。
 白を連れて町へ入ることはできたが、その先のことは頭になかった。

「身寄りのないあなた達を夜にフラつかせるわけにもいきません。なので少し待っていてもらえますか?」

 俺と白は顔を見合わせる。
 白も俺も寝床は良いところがいいよな。うん。

「わかった。ならここで待ってるから……いいよな?」

 俺は衛兵に向けて聞く。すると衛兵は何も言わずにただ頷いた。

 十分ほど待つと女性職員は、私服に着替えて出てきた。

「それでは行きましょうか」

 俺達は頷くと、管理局をあとにした。



 道中、俺達は彼女の自己紹介やこの町のことなどを聞いていた。

「私はウルーナ。今から向かう宿屋は私の妹の店なんです」

 ウルーナの家は代々宿屋を経営してきたそうだが、エリートコースを辿る彼女は、夢を追いかけて家を出たらしい。今では和解を果たしているそうだが、当時は4、5年連絡も無しだったそうだ。

「この町はシュルメイダー領でも最も大きい町で商店街はいつも賑やかなんですよ!」

「へぇ~、じゃあこの町で働くならそこに行ったらいいのか?」

 サバイバルな生活を続けてもいいが、元々都会の社会体系に慣れ親しんでいる俺には、どうにも嫌悪感が拭いきれずにいた。
 なので、町に入ったら取り敢えずそこで稼ぐ場所を探そうと思っていた。

「あーーそれは無理ですね」

「何!?」

 俺は目を見開き、ウルーナの方を振り向く。

「はい。この町で働くには領主様の許可が必要なんですよ。管理局で新たに労働権を獲得しないといけないんですけど……そうした場合、手数料が取られますし、労働権を獲得したら税金を払わなければなりません。だから特に宿暮らしの方々には厳しい選択なんですよ」

 それを聞いて俺は肩を落とす。頭で思い描いていた一番確実にお金を稼げる計画が断念を余儀なくされたわけだ。落ち込まずにはいられない。

「ふーん。それはこの領地だけなのか?」

 干し肉の詰め合わせを片手に先程から食べるのに夢中になっていた白が、急に話に参加してきた。
 いや、君の食費を稼ぐ為でもあるんだけどね。そこらへんわかってないよね。
 しかし、白の質問に別に悪い所はない。ここがダメなら別の町に行けばいいまでの話ーー幸いにも身分証は国内のどの領地で使えるものらしいから、またそこで探せばいいだけだ。

「あ、でもーー」

 すると、何かを思い出したかのようにウルーナが口を開いたが、すぐにまた閉ざしてしまった。

「おい、何だよ。その先を言ってくれ」

 俺達が当然気にならないわけがない。俺は少し威圧的に詰め寄る。
 するとウルーナは諦めたように口を開いた。

「実はーー」



 しばらくしてウルーナの実家の宿屋に着いた。商店街の一角に目立つ熊の置物はここのシンボル的存在らしい。何でも婿養子の店主が作ったもので防犯の効果もあるようだ。
 ーーしかし、驚いたな
 俺はその置物の内部を除いて目を疑った。
 この熊、殆どに神力が使われている。この木もそうだが、ここまで強力なのは俺クラスだ。
 これをここの店主が作ったのか……。会ってみたいな。

 俺達が中に入ると、小さな女の子が出迎えてくれた。パッと見白の設定した年齢と同じくらいだろうか。
 女の子は俺とウルーナの顔を交互に見比べると、ニマッと何か面白いモノでも見つけたような表情を浮かべた。

「お母さん!!ウルーナ姉ちゃんがカレシ連れてきたよ!!」

「!?」

 そう言って奥へと入っていってしまった。
 俺はウルーナの顔を見ると、かなり困った顔をしていた。これは予想外だったらしい。
 白は干し肉を噛みちぎるのに苦戦していて、こちらには目もくれない。
 すると、奥から綺麗な女性が女の子に手を引かれて出てきた。当然ここの女将ーーつまりあの子の母親だろう。
 いや、それにしてもウルーナに似てるな。髪型と体型が違うだけで顔はほぼウルーナだ。

「え!?あら本当ーーえ?子供もいるじゃない?どういう事?」

 何やらあちらも状況を飲み込めていない様子。
 子供とは時にして混沌カオスを引き起こす力を有しているな。
 少し遡れば、ゼフォードの王都で痴漢の冤罪を掛けられた時の記憶が甦る。あまり思い出したくない記憶の一つではあるが、あの時も子供にやられたのだ。
 今回のは状況も目的も違うから別にいいんだけども。
 俺はウルーナの顔をもう一度見る。
 すると今度は白をチラチラ見ながら、「やだ、別に誘拐はしてないわ。確かにハクちゃんは可愛いけど、で、でも、私だってそういう分別はつけられるーーぜぇはぁ」
 ーーあ、ダメなやつだ。
 俺は白をウルーナから遠ざけて、俺が説明をすることになった。

 ちゃんと説明して、俺達はここに宿泊することになった。
 女将さんが出してくれた料理はどれも美味しいかった。白と俺は鱈腹食べだ後、用意してもらった部屋に来ていた。
 兄弟という設定なので、白と俺は相部屋だ。別にガキ相手に何か起こそうなんて事は決してないので、健全な生活が送られるだろう。
 部屋は洗面台と給水器があり、風呂などは裏の小屋を使うらしい。
 そして俺が一番気になったのはこの宿全体に備わっている膨大な神力だった。そのおかげか、ここはどこか落ち着く。
 普通、大抵の種族は神力を宿していない。魔力のみが身体に流れている。これはゼロから教えてもらった事なので確かだ。
 俺はあの時のゼロとの会話を思い出す。

「悠二、この前魔力について話したのは覚えてるな」

「ああ、魔素量のことだろう?魔素が身体中に流れてる……。」

「そうだ。どの種族の奴らも殆どは魔力しか宿していない。けどな、たまに現れるんだよ。神の血を引く王の一族が」

「王?」

 ゼロは真面目な面持ちで語り始める。

「お前に備わっている神力は俺の力を譲渡したことによって得た力ーーつまりは神の持つ力でもある。そしてこれは下界の生物達には決して宿ることのない力だ。ただし、ある特定の奴らを除いてな」

「おい、勿体ぶってないで教えろよ」

 流石に俺もここまで話を引き延ばされれば、気に触る。俺は少し強い口調で言った。

「わかったよ。ーーったく、俺がせっかくいい感じに切り出そうとしてなのに……まぁ、手っ取り早い話がな、神力を持つ奴らがこの世界にはいるってことだよ。そしてそいつらを俗に王種と呼ぶ。神に認められた一族のみが王として君臨できる。奴らは特別さ。そしてその強さはキマイラなんて比じゃねぇ。いいか、お前はこの先ーー」

 ーー王種を味方につける。
 早速一人宛が見つかったな。

「ん、どうしたのじゃ?悠二、眠れんのか?」

 すでにベッドに潜ってゴロゴロしている白の目は半分も開いていなかった。

「いや、少し考え事をな。それより早く寝るぞ。明日から忙しくなりそうだ」

 俺は部屋の明かりを消して、少し神力を分けてもらうことにした。
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