プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

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第一章三部〜アークダム王国アレッシオ編〜

第十八話 試練

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 翌朝

「起きろ!白!」

 俺は白がしがみ付いて離さない布団をなんとか引き剥がし、無理やり起こす。

「むにゃぁ~まだ日は昇っとらんぞ~?悠二ぃ~」

 寝ぼけ眼で外を見る白。
 残念だが白、よく見てみろ。今日は曇りで今はもう昼だ。
 なぜ昼なのか?案の定俺も寝過ごしたからだ。
 俺も今の白と同じ感じで、曇りを夜と勘違いして二度寝してしまったのだ。
 ーーいや、原因はこの宿にもある。
 この宿、神力で満たされているせいか無駄に居心地がいいのだ。常に充電状態のここでは、元々の俺の性格が色濃く出てしまう。
 しかし、そんなことばかり言ってられないのが現実なので、なんとか気力で目を覚ましたのだ。

「白、今日は冒険者ギルドに向かう。というかそこしか俺達に希望はない!」

 あまり大声で言うことではないが、割と危機的状況にいるので、再確認の為恥ずかしながら少々声を張らさせてもらった。

 ーー冒険者ギルド。
 そこはこの町で唯一例外を許されている無法地帯。国の管轄で動くこの組織は、辺境の領地の法律など意味をなさないようだ。
 そしてこの冒険者ギルドだが、簡単に概要を説明するなら自由度の高い派遣会社と言った所だろうか?
 詳しい説明は向こうで聞くとして、白もギリギリ登録できる年齢だったことはありがたい。あと一年設定を低くしていたら、収入が半分になるところだった。

「むぅ~~……はっ!そうじゃ!今日は冒険の日じゃ!何をしておる悠二!さっさと支度をして出るぞ!ーーあいた!」

 俺は騒ぐ白の脳天に拳を振り下ろした。

「バカか、支度をするのはお前の方だ。さっさと顔洗って着替えたら飯食って行くぞ!」

「うにゅぅ~」

 白は頭にできたタンコブを抑えて唸っていた。

 ーーそれから俺達は朝食兼昼食を摂り、ウルーナが描いてくれた地図を頼りに冒険者ギルドの建物へ向かった。
 アイツ、絵の才能無さすぎだろ……。
 描かれた地図は線が引かれているだけで、他に名称なんてものは書き込まれていなかった。
 うーん、これは人に聞いたほうが早そうだな。

「すみません。“冒険者ギルド”という所に行きたいのですが……」

 俺は道の傍で煙草を吸うヤクザっぽい目の下に傷があったりする強面の男に声をかけた。
 冒険者ってゴロツキのイメージがあるからとりあえずそれっぽい人に声をかけたけど……。

「あぁ?てめぇ、あそこに用があるのか?…クッハッハッ!てめぇみてぇな弱そうなガキが行くところじゃねぇよあそこは」

 男はゲラゲラと笑いながら俺の肩を叩く。
 ーー不愉快だ。
 俺は男の手を肩から弾く。

「おい、俺にその煙草臭い手で触るな。殺すぞ。」

「!!?」

 次の瞬間、男は両膝を付き、全身を酷く震わせた。そして男は口を開き、言葉になっていない声を発する。

「ぁ……あ…あがぁ……」

 男の目に現れる感情は恐怖。
 全身を包み込むように“死”という恐怖が男を支配していた。

「気絶しなかっただけ褒めてやるよ。で?ギルドはどこだ?」

 俺は、その情報こたえを聞いた。

 ……………

 ………

 …

 アレッシオの一角に聳え立つ巨大な扉を持つ建物。
 この建物こそが冒険者ギルドの建物であった。
 俺と白は、その扉を開く。今、ここより俺達の冒険が始まるのだ。
 ギギギィと音を立て開いたその先へ、俺達は足を踏み入れた。

 ーーうーん。
 何というか……普通だ。
 どうやら二階建ての建物の様で、一階は酒場として開かれているらしい。荒っぽそうな奴らがどんちゃん騒ぎを起こしていた。
 俺は建物の内装を隅々まで眺めてみる。
 酒場の天井は吹き抜けており、カウンターの裏の階段から二階へ上がれる様になっていた。
 特に目立って凄そうな物もなく、先程まで感じていたちょっとした興奮も随分と冷めてしまっていた。
 目的の依頼の受付所というのも二階の様だ。
 俺と白は堂々とそこまで歩く。
 そんな俺達に気づいた周囲の連中は、次第に静かになり、俺達を凝視していた。

 彼らの目には、その光景が余りにも異様に写っていた。
 前を歩く男はとして、その後ろを欠伸をしながらついて行く少女に問題があった。
 自分達の半分も生きていないような子供が、まるで他の奴等など眼中に無いかの様に、他者を一切寄せ付けないオーラを放っていたからだ。
 仮にもアレッシオで冒険者をやっている彼等に、実力差というのを見抜けないなんて馬鹿な者はいないはずだ。かつてこのアレッシオで最強と謳われたあの人と同等ーーいや、それ以上なのではないか、と、思う者までいた。
 そしてこの日、アレッシオに新たな伝説が誕生したのであった。

 周囲の視線に若干の鬱陶しさを覚えながら、俺達は二階の受付所まで足を運んだ。
 この場に王種は居合わせていない。それだけで周囲への興味はマイナスに傾いていた。

 受付に対応していたのは小柄な眼鏡の女性だ。
 彼女の前には何人かが並んでいたが、俺達の方を見るなりすぐに何処かへ立ち去ってしまった。
 全く、失礼な奴等だーーと、不満を覚えるも、一々何かをする話でもないので、無視して目的の場所へと足を進める。

「あのぉ、すみませんが冒険者登録をしたいのですけど……」

 俺は丁寧な物腰で受付嬢へ声を掛ける。

「はい!わかりましたーーって、え!?」

 俺の顔を見ると快く引き受けようとしていたのだが、突然声を上げて驚くと、固まって何かを考え始めてしまった。
 ーー多分、白の方を見たんだな。
 白はこれでも竜の一族。そのオーラは圧倒的であり、例え見た目がこんな感じでも、その力は本物なのだった。
 そしてそのオーラは、強者であればあるほど感じ取れる。
 逆を言えば、弱者には何も感じられないのだった。
 そしてつまり、彼女はこう考えるのだろう。

「えっと……その子も…登録を?」

 今の彼女の言葉を言い換えるなら、そこの子供ーーそれも少女がまさか冒険者をするのだろうか、といったところだろう。
 ここはのアレッシオ。
 ここの受付嬢が冒険者の力量を見抜けないでどうするのか、とも思うが仕方ない。
 それだけ白と彼女にはがあるのだから。

「ええ、他の連中は薄々気づいているかと思いますけど、コイツは中々できる子でしてね。俺の手伝いとして一緒に冒険者をやろうと思いまして」

 俺は一貫して丁寧に応える。
 こういう社会的対応はきちんと学んでいる。
 確かにの俺は面倒くさがりで、相手が誰であろうとそう大した対応の差はない。強いて言えば、『です。』『ます。』が付くぐらいだ。
 そこでやはりゼロの魂が原因だろう。ーーと推測する。
 俺自身に魂の融合から人格の変化を確認できる方法はないが、こうして検証して見る限り、その影響は無くはないだろうと考えた。
 まあ、それがどう関係してくるのかは不明だけど。
 そういうこともあって、今の俺は自然体だった。

「うーん、確かに冒険者登録が可能なのは10歳からですが、ここは仮にもアレッシオ。この町に雑務の依頼は殆どありませんし、外の仕事は危険が多い。お勧めはできません」

 そう言って渋る受付嬢。
 俺はただーー面倒くさいな、この人ーーと思っていた。
 しかし、命を大切にしてほしいと思うのは彼女のみならず、大抵の場合が思うことなので、そう言って無理を言うわけにはいかない。
 なので俺は少し提案してみることにした。

「なら試験をさせてみるのはどうですか?白が戦えるのかどうか、そこから判断してもらっても大丈夫でしょう。それにここには割とできる奴もいるみたいですし」

 その言葉に数名、ピクリと動いた。

「ん?なんじゃ、妾が戦うのか?はっきり言うが、悠二。に妾の相手が出来るものなど到底いるようには思えんぞよ?」

 珍しく白が真面目に話に参加してきた。
 どうやら戦いに関しては怠けるつもりはないらしい。
 その姿勢をもう少し日常生活に反映できたらと思うのだが、それは言っても意味のないことなので俺が気をつけてればいいやと思うのだった。

「まあ、それは事実だから仕方ないけど、お前の実力を目に見える形で示さないとそこのお堅い眼鏡っ子が許してくれないんだよ。我慢しろ」

「誰がお堅い眼鏡っ子ですか!」

 なんか怒鳴る様な声も聞こえるがそんなのは無視するまでである。
 そして俺達の会話を聞いていた下の冒険者達は、誰がその役割を担うかで騒がしくなり始めていた。
 さて、こうなれば出て来ざるを得ないだろう。

 ーー王の資格の有する者がーー

 しかし、そう上手くはいかないのが現実というものだ。
 これがとして扱えるなら、少しは我を通すことも許されるだろう。
 けれども今の俺にそんな権限は無いわけで、さすればこの結果を受け入れることも容認しなければならなかった。

 一人の男が黙ったまま立ち上がり、俺達の前へと移動する。
 もう少し早く来いよとか思っても口にはしない。俺が元々コミュ症ーー比較的他者との会話を避けやすい体質が引きずられているとかそう言うことはない……はず。
 そして男が俺達の前へ来ると、ようやく口を開いた。

「その試験、俺が引き受けよう」

 ……いや、これだけ待ってそれだけかよ!
 何か別の提案でもしてくるのかと思っていたら、今の俺の意見に賛同したいと言いたかっただけのようだ。
 それなら下から言ってくれてもいいんだけど。
 すると、受付嬢が立ち上がり驚いて言った。

「ええ~!?ルージスさん?いいんですか?」

「ああ、ただ俺が相手をしたいのはその子ではなく君だ」

 そう言ってルージスが指したのは俺だった。

「その子は見ただけで分かる。間違いなく強者だ。それもここのギルマスに引けを取らないだろう。だがーー」

 そこでルージスの視線は再び俺へ向いた。

「ククク、いいぞ」

「むぅ、悠二、良いのか?こんな奴、妾で十分ぞ」

 白は自分が相手をするものと思ってやる気だったのだろう。
 不満げに俺を見て呟いた。

「まあそう言うなよ。どうやら白との力量差は分かるらしい。そこで見とけ」

 俺は白の頭を優しく撫でると、ルージスの前へと出た。
 このルージスという男だが、そこそこやれる様だ。
 見た感じここの中ではトップといったところだろうか。
 予定には無かったが、こういう場所で今後活動しやすくする為にも一度力を示すということはした方が良いのかもな。
 人間ってのは耳から入っただけの情報では中々認めず、その目と肌で感じたモノしか信じようとしない傲慢さを内に秘めている。
 ーーああ、だるい。面倒くさい。
 だがそれでもこの世界に生まれた救うべきいのち
 俺の誓いに偽りは無い。

「リリーさん。裏への案内と審判、お願いできますか?」

「え?あっ、はい」

 どんどん進んでいく話に付いて行けてないのか、ルージスの言葉に少し遅れて受付嬢ーーリリーが反応した。

「審判なら私がやるわ。ルージス」

「ーーッ!?」

「……貴女は」

 漸く出て来てくれたか。
 美しい黄金色こがねいろの艶やかな髪を下ろし、アクアマリンの如く透き通った水色の瞳を持ち、その纏う神々しいオーラはまさしく神力を有する王の血筋であった。

「初めまして、私はここーー冒険者ギルドアレッシオ支部のギルドマスター、エルシアよ」
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