プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

401

文字の大きさ
20 / 26
第一章三部〜アークダム王国アレッシオ編〜

第二十話 白銀

しおりを挟む
 エルシアは俺達の正面に座った。
 因みに白はリリーの話を耐えられなかったのか、すでに俺の隣で眠ってしまっていた。

「貴方が聞いてさえいれば何も問題はないわ。貴方は彼女の相棒なのでしょう?」

「……うーん、まあそうだな。うん。それでいいよ」

 別にすぐ白と別れる訳でもないだろうから、俺は適当に承諾しておく。

「なら話を進めるわね。ーーあっ、その前に貴方達のランクが決定したから先に報告しておくわ」

 …ん?ランク?俺達の?
 俺は少し疑問に思った。

「決まるも何も『F』じゃねぇのか?」

 俺の質問にエルシアは少し笑みを見せて答えた。

「ええ、確かに全ての冒険者は『F』から始まるわ。そして段階に応じて試験を受けてもらい昇格可能か判断する。そうして高みを目指していくのよ。でもね、貴方達は彼を圧倒していた」

 彼とはルージスのことだろう。
 エルシアが強調して言うほどだからルージスは冒険者の中でも実力者なのだろう。

「つまり貴方達は通常の方法では収まりきらない規格外なのよ。ーーはぁ…、こんなのは私がここに来てから初めての事例ね。」

 エルシアは少し呆れた様にため息を吐きながら俺に書類を見せた。
 そこには俺と白のプロフィールと大きく『B』と記載されていた。

「貴方達はこれからBランク冒険者のユウジとハクとして活動してもらうわ」

「いいのか?俺達はこの業界ではまだ新米だぞ?」

「ええそうね。だから規格外で『B』なのよ。この冒険者には貴方達と同様に規格外っていうのがまだまだいるの。つまり貴方達は規格外の新参者ってところかしら」

 なるほど…。
 俺は頭の中の疑問が晴れてスッキリしていった。

「で、説明に戻るけど、Aランク以上の冒険者、それが人智を超えた規格外の化け物達、Sランカーよ」

 何となく予想はしていたが、やはり『S』というのは存在していたのか。

「『S』はたった一人で小国を落としてしまう程の実力者達。貴方達にその壁が超えられるかしら?」

 何でコイツは少し楽しそうなんだ?
 少し弾んだ声で話すエルシア。
 俺は少し気味悪く感じつつ、適当に応えておいた。

「なら次は『パーティ』について説明しましょうか。パーティとは少数人集まって組むチームみたいなものよ。パーティを組むことで依頼をより円滑に進めることができるわ。まあ依頼料はそのパーティに渡されるから基本はメンバー全員に均等に分配するんだけど一部ではそういう感じじゃないところもあるみたいね。で、早速なんだけど、貴方達は二人でパーティを組むのよね?」

 なんか一気に説明されていきなりパーティを組むのか聞かれても困るものなのだが……。

「そうだな……。まあそれもありかもな。どうせ一緒に行動するんだ、そっちの方がいいだろう。ああ、組むよ」

「なら決まりね。じゃあ早速パーティ名と初期登録者、リーダーの名前をここに書いてもらえるかしら」

 そう言ってペンと書類を出すエルシア。
 コイツ、最初からこうさせる気満々だったな。
 俺はまず俺と白の冒険者名を記入してペンが止まった。
 パーティ名か……。
 俺は二人の共通点が何かないかと思考をフル加速させる。
 うーん。いや、俺は要らないか。

「……じゃあ『白銀しろがね』で」

 すごい適当に決めたが、パッと思いついたのが白の銀髪とゼロの白髪だった。
 まあ特別他に意図するところもないので、これついてはスルーでお願いします。

「あら、中々良いんじゃないかしら。パーティ名は申請すればまた変更できるわ。それでパーティなんだけど、実はそれにもランクが存在するわ。私達ギルドサイドは『アベレージランク』とも呼んでいるわね。その名の通りパーティメンバーのランクを数値化した物の平均をとった値のランクを反映しているわ。あとは個人ランクと同じように能力に見合った依頼ランクを受けてもらうわ」

 エルシアの説明はまだ続いたのでまとめると、

 依頼内容によっては複数のパーティやソロが即決の戦士団として招集される場合があるらしい。緊急依頼クエストと呼ばれるものがそうだ。
 そういう依頼は参加者全員に均等に報酬が与えられるそうだ。
 また国や領主から傭兵として雇われる依頼もあるらしい。これは追々見る機会もあるだろう。その時改めて確認しよう。

「冒険者というカテゴリは非常に曖昧なのよ。私達は総称してそう呼んでいるけれども本当の冒険者というのはもっと自由な存在。我々は貴方達を守る義務がある一方、貴方達の背中を押す役割もある。これから貴方達が活躍するのを楽しみしているわ」

 そう言ってエルシアは席を立ち、部屋をあとにした。

「さて、まだ時間はあるし一度宿にでも戻るか」

 俺は眠っている白を起こさないように担ぎ、ギルドを出て宿に戻った。
 外に出た時、何やら不穏な気配を感じたが、街に異常は無さそうだったので頭の片隅にこの事を置いておくのだった。
 ま、何かあればエルシアが対応するだろう。
 しかし、それは甘い考えだったのかもしれない。
 翌日、俺と白は初依頼を受けようとギルドを訪れていた。

「まじかよ……この街ももう終わりか?」
「俺は嫌だぜ…死ぬのはごめんだ」
「今日のうちに家族を連れて逃げた方がいいんじゃねえか?」

 酒場の連中は不安そうな面持ちでヒソヒソと話していた。
 どうやら何か良くないことが起こるらしい。

「なんじゃ此奴等、今日は何故沈んでおるのじゃ?」

「俺が知るかよ。とりあえずリリーにでも聞きに行くか」

 俺達は誰も並んでいない受付で忙しそうにしているリリーの元を訪ねる。

「あ!『白銀』のお二方!」

 リリーは俺立の顔を確認するや否やパーティ名で呼んだ。

「ちょうどいいところに来ました!エルシア様ーーギルドマスターがお待ちです。ご、ご案内します」

 俺達が来るのをそんなに嬉しいのか途中で言い直すほど興奮した様子で話しかけてきた。
 というかエルシアが待ってるって?まだ何か説明足りないことでもあったか?
 俺は色々考えながらリリーについて行った。勿論白も一緒だ。
 そして少し広い会議室に着いた。どうやら何人かいるらしい。
 俺達はリリーの案内の下、部屋に入った。

「ようやく来たか」とルージス。

「……」
 レベッカは黙って下を向いている。

「お?コイツ等が例の新人ルーキーか?」
 ルージスの横に座る男はバンダナを巻いて首からはカメラのようなものを下げている。

「ふん、まだガキじゃないか。ルージス、おめぇは本当に負けたのか?」
 ドワーフと呼ばれる種族の爺さんが俺を見るや否やルージスに向かって叫んでいる。

「あ、ウォルガーさん!ダメですよ敗者の傷をえぐるような真似をしては」
 騎士のような格好をした金髪の美女がドワーフのウォルガーを叱る。

「そうだぜ、それにギルマスが審判したって聞くじゃねぇか、あの人を疑うのは野暮ってもんだろうよ」
「そうですわ。まあでも、疑いたくなる気持ちは分からなくはありませんわね」
 重厚な鎧を身に纏ったおっさんと緑のフードをかぶった美少女がそれに続く。

「オデ、ハラヘッタ」
 二メートル以上はあるであろう体格の大男はお腹をさすってよだれを垂らしていた。

「僕の計算によれば彼等が不正をした確率は1割を下回るね」
 上品な服装で眼鏡を掛け直し本を読む男はこちらも見ずにそんなことをこぼす。

「……(拙者、どっちでもいいでござる)」
 左眼に眼帯を巻いている長髪の男は無言で座っていた。

「皆さん、まもなくエルシアギルドマスターが着かれます。ご静粛にお願いします。白銀の御二方はあちらの席へお座りください」

 と、一連の流れがあり、俺達は座るように促される。
 ーー何というか……帰りたいんだけど…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...