プラヴィテル・ヴレーメニ〜異世界召喚された俺は時を支配して神を超える〜

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第一章三部〜アークダム王国アレッシオ編〜

第二十一話 召集

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 とりあえず席に座り、周りを確認してみる。
 というかルージス以外誰も知らないんですけど…。
 楕円形の机を囲むように椅子が並べられ、俺達は窓側の扉とは対角線上の位置に座っている。
 廊下側の中央の席だけ空いていることから、きっとそこはエルシアの席だろうと予測する。
 ああ、帰りたいな……
 なんか今から会議みたいなのが始まるみたいだし。俺等、昨日冒険者になったばかりなんですけど……。
 俺がうなだれていると、ギルドマスターのエルシアが入ってきた。

「お待たせしてごめんなさいね。皆知っていると思うけど、今日集まって貰ったのは、今発令されている緊急クエストについてよ」

 エルシアは机の上に大きな地図を広げさせ、その上に本部からの通達を知らせる書類を見せた。
 え?何?緊急クエスト?
 どうやらこの場でそのことを知らないのは俺達二人だけらしい。

「ん?そういえば君達にはまだ伝えていなかったか?まあいい、それも含めて説明しよう」

 エルシアがキョトンとした顔の俺達を見て、丁寧に説明を始めた。

「昨夜、本部から緊急クエストの通達が届いたわ。内容は魔の森周辺の魔素溜まりの浄化。これはウチと本部の合同調査により発覚したわ。そして領主殿も懸念を示している。魔の森内部の魔素溜まりは気にすることはないけど、その周辺となれば話は別となる。迅速に対応しなければならないわね。そしてその規模なんだけど……これが厄介な事にSクラスだというわ」

 その言葉に俺等以外の一同は過剰な反応を示す。

「S級を相手にするなら本部からの支援を待つ必要があるのでは?正直な話、我々だけでは厳しいのが現実だ」

 そうルージスは意見を述べた。

「ええ、そうね。これは本部のAランク冒険者を数十名用意して初めて成功するかしないかに至る高難易度依頼クエストよ。でもね、そうは言ってられないのが現実でもあるわ」

 エルシアは険しい表情で資料を指した。

「これを見てちょうだい」

「ーーなっ!?」
「マジかよ?」
「うそ……」

 各々が驚愕しているのは、エルシアが指した魔素溜まりからモンスターが発生するまでの期間を推定した数値だった。

「なるほど……これはまずいわね」

 するとレベッカという女性魔導士が話し始めた。

「発生までおよそ22時間……明日の昼前にはS級が暴れ出すってわけね」

「S級なんてAランクのルージス達はともかく、Bランクの俺達が群がったところでたかが知れている筈だ。俺達に犬死にしろって云うのか?」

 そうエルシアに抗議するのは、Bランク冒険者で『鬼武者』というパーティのリーダーをしているラオだ。
 ラオは腰に短剣を下げ、背中には金属でできた棒を背負っており、少しチャラそうな雰囲気の男だった。

「いいえ、そのような事は作戦に一つも入ってないわ。貴方達誰一人欠ける事なくクリアするつもりよ」

 そうエルシアは言い、最後彼女の視線は俺と白の方に向いていた。
 ーーで、俺達の出番ね。
 今の話からいくと俺達以外のメンバーだけでS級を相手にするのは非常に困難、寧ろ壊滅にまで発展する可能性が高いという事。
そして、本部の支援は期待できないという事。
 本部から見放されたか、それとも別の何かがあるのかは分からないが、現場は最悪の状況に陥りかけているというわけか。
 多分エルシアがを出せばどうにでもなることなのだろうが、彼女には別の役割がある。
 彼女も魂一つ、身一つのエルフだ。出来ないこともあるか。
 エルシアはルージスの顔をチラリと見る。 そして何かを通じ合ったのか、頷くとその作戦内容を説明し始めた。

 それから作戦会議は進み、明日の朝方に城門集合が決まった。
 会議が終わると明日に備えて皆帰宅の準備をし始めた。
 俺と白も帰ろうと立ち上がると、ルージス達が声をかけてきた。

「帰るのか?」

「ああ、ここにいてもしょうがないだろう?それに白の腹を満たしてやらないといけないからな」

「ははっ、たしかにな。ああそうだ。これを渡しておく」

 ルージスから渡されたのは箇条書きで人物名が書かれた書類だった。

「これは?」

「ああ、そこには明日のレイドパーティのメンバー全員の名前とタイプ、そして所属が書かれている。一度目を通しておくといいってギルマスからだ」

「なるほど……ありがたく受け取っておくよ」

 緊急だったから自己紹介は省略されていたしな。

 俺は貰った書類に目を通す。
 参加メンバーにはエルシア、ルージス、レベッカ、ヨット、アイラ、カラード、メイ、キイド、ウーゴゥ、キョウスケと書かれている。
 リーダーはエルシア、立場と実力を考えても当然だろう。
 サブリーダーにルージスか。ルージスはこの中でトップのパーティランクを持つ実力者だしな。
 レベッカとヨットはルージスと同じパーティの『ガロウ』に所属している。全員Aランク冒険者だ。
 そしてアイラをリーダーにしたカラード、メイから成るBランクパーティの『グレン』、キイドをリーダーにした同Bランクパーティの『アイント』の二つ。

 あまりにも無謀な作戦だ。今日見ただけでもわかる。全員エルシアの足元にも及ばない実力だ。
 まぁ俺と白がいればなんとかなるだろうが、気になるのは本部の意向だ。
 本気で見捨てているのか、それとも………。

「アイツがいればな……」

 小声で呟くルージス。
 それを俺は聞き逃さない。

「アイツ?」

「ん?ああ、悪い。声に出てたか。気にしないでくれ」

 そう言ってルージスは去って行った。
 そういえば他のメンバーもどこか浮かない顔つきだった。
 死を覚悟、とまでは行けないのだろう。

 冒険者という職種は極めて特殊だ。
 常に身の危険と隣り合わせにしながら生計を立てている。
 そのためギルドという形で擁護するシステムが組まれた。
 冒険者は一攫千金を狙える夢のある職業だ。
 しかし、そのリスクはとても大きい。

 まぁ俺達もこれが初依頼だからな。
 緊張感は持ち合わせた方がいいだろう。

 そんな俺とは裏腹に、隣に座る白は、どこでも貰ってきたのかわからないが甘そうなお菓子を美味しそうに頬張っていた。

 その夜、俺は一人、俺達が出てきた魔の森の奥に来ていた。
 ちなみに白は明日に備えて寝るそうだ。
 
 俺がここへ来たのは色々と確認するためだ。
 ゼロが分け与えてくれた力、不思議なくらいに馴染んでいた。

 俺はまず、神力を可視化させる。
 すると、俺を包むような翠色の気が見えるようになった。
 ゼロの神力は温かく、優しかった。

「時と空間の神、お前の魂は俺が受け継ぐ」

 その日はまだ月が欠けていた。
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