絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

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第11話 ケモ耳娘

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 その狼らしき獣は体高1mくらいで、雪のように真っ白な毛で覆われていた。

 足元をみると、現在の日本では使用禁止になっているトラバサミという罠に掛かったようで、右足が真っ赤な血に塗れている。抜け出そうと藻掻いた跡も残っている。今は痛みと疲れの両方が堪えているのだろう。力無くグッタリとしている。

「可哀想に...確かあの罠は藻掻けば藻掻く程、深く食い込むんだ。耐え難い痛みだろう...」 

「酷い! 何とか助けてあげられないでしょうか!?」

 アリィは今にも泣きそうだ。ユウは顔を顰める。

「難しいな...今はグッタリしてるけど、近付けば恐らく威嚇してくるだろうし、暴れられたら最悪足が切断されかねない...」

「そんな...」

 ユウとて助けてあげたいのは山々だが、罠に掛かって手負いになった野生の獣に安易に近付くのは危険過ぎる。よしんば、罠から外してあげたとしても、こんな山の中じゃ手当てのしようもない。この世界に獣医がいるかどうか分からないが、居たとしてもそこまで連れて行ってやることも出来ない。可哀想だがここは...

 その時だった。今までグッタリとしていた獣が急に顔を上げてこっちを見た。そして...

『...けて.. 』

「「 えっ!? 」」

 アリィとユウが同時に反応する。

「今なんか聞こえなかった!?」

「はい、私にも聞こえました」

 すると今度はもっとハッキリと、

『お願い、助けて...』

「「 やっぱり聞こえる! 」」

 二人は獣に目を向ける。

「もしかして...」

「今の声はこの子が!?」

 二人は恐る恐る獣に近付いてみた。手が触れられる距離まで近付いてみても、威嚇する様子も暴れ出す様子も無い。ユウは意を決して獣に触れてみた。それでも獣は嫌がったりしない。

「良~し良し、良い子だ。今、罠を外してやるからな。ちょっと痛いだろうけど我慢してくれ」

 するとまるで人語を解するかのように、ゆっくりと獣が頷いた。ユウはトラバサミの口に手を掛け、力任せに開こうとする。だが足の筋肉にまで食い込んでいる刃は容易に抜けそうもない。

「力任せでは無理か...どこかにバネがあるはず...あった、これだな」

 ユウがバネ細工の所を操作すると、カチャ! という音と共にトラバサミの口が開いた。

「良し! 外れた!」

「良かった!」

『ありがとう...』

 また声が聞こえた。獣に目をやると、グッタリして目を閉じている。どうやら気を失ったようだ。さて、これからどうしたもんかとユウが考えていると、

「ユウ! 見て下さい!」

「うおっ! なんだなんだ!?」

 獣の体が急に光り出した。目を開けていられない程眩しい。

 やがて光が消えた後、そこには...

「おい、嘘だろ...」

 全裸になった10歳くらいの女の子が横たわっていた。しかもその女の子の頭には、

「ケモ耳...」

「尻尾もある...」

 二人の時はしばし止まった。
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