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第12話 保護する
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あまりの事態にしばし呆然としていた二人だったが、やがて我に返ると、
「ど、どうしようか ...」
「ど、どうしましょうか...」
「...取り敢えず、家の中に運ぼう。傷の手当てをしてあげないと...」
「...そうですね...」
ユウはそっと少女を抱き抱えた。驚く程軽い。家まで急いで戻ると、アリィがドアを開け中に入れる。
「アリィ、一先ずリビングに。あとバスタオルと普通のタオルを何枚か出して貰えるか?」
「分かりました」
リビングの床にバスタオルを敷いて、その上にゆっくりと少女を寝かせる。
「次に傷の手当てか。アリィ、救急箱を出せるか?」
「やってみます」
救急箱は難なく現れた。
「良し。まずはアルコールで傷口を消毒して...と、アリィ、辛かったら見なくていいぞ?」
青い顔をしているアリィを気遣う。
「い、いえ平気です。ユウはその...慣れているんですね...」
「学生時代、ラグビーをやってたからな。怪我なんてしょっちゅうだった。慣れたもんさ。でもこれだけ酷い怪我をしたことはないけどな...」
トラバサミの挟まれた少女のふくらはぎは、傷口がギザギザになっていた。アルコールで消毒して多少キレイにはなったが、まだ血が止まらない。本当は傷口を縫い合わせた方が良いのだろうが、そんな道具も技術も無い。
「血止め薬は...あった、これだな。ちょっと沁みるだろうけど、勘弁しろよ」
アルコールで消毒した時もかなり沁みたはずだが、少女が目を覚ますことはなかったので大丈夫だろう。血止め薬を塗った後は包帯を慎重に巻いた。
「これで応急処置は良し。血は止まるはずだ」
「お疲れ様でした」
アリィがタオルに水を浸してユウに渡す。ユウは血で汚れた手を拭いながら、
「ただ...傷が骨に達してなければいいんだけどな...」
そう言って少女の顔を優しく拭いてあげた。
「それは...確かに心配ですね...」
骨折までしていたら、この救急セットじゃとても間に合わない。
「まぁそれは、俺達にも言えることなんだけど...」
「あ、確かに...」
この世界の医療技術がどこまで進んでいるのか分からないが、日本で受けていたような医療を期待するのはほぼ無理だろう。
「魔法がある世界なら治癒魔法、あるいはポーションとかがあるかも知れませんね」
「そうだな、そこら辺に期待しよう。だがまずは、この子をどうするかだが...」
「きっと親御さんが心配していますよね...」
「あぁ、確かに。狼の姿の時は分からなかったけど、まだこんなに小さな子供だもんな...どれだけ心配していることやら...」
「そうですよね、こんなに可愛らしい子なんですもん」
そう言ってアリィは少女の髪を撫でた。狼の姿の時と同じ、真っ白な髪をしている。その寝顔はまだあどけないが、非常に整った顔立をしている。将来美人になるのは間違いない。
「取り敢えず、目を覚ますまではこのままにしておこう。あ、毛布を一枚出してくれるか?」
「あ、はい」
なにせ少女は全裸だ。弱っているところに風邪でも引かれたら大変だ。
「言葉が通じるといいんですが...」
「大丈夫じゃないかな? こういう異世界モノってそこら辺はチートの範囲内だったりするだろ?」
「確かにそういうの多いですね。言葉は通じるけど文字は読めないみたいな」
「そうそう、それにもし言葉は通じなくてもさっきの念話? みたいなモンで、この子とは意思疎通できると思う」
「やっぱりアレってこの子なんですよね?」
「他に誰も居なかったしな。まず間違いないだろう。まぁともあれ、この子が目覚めるまで待とう」
「そうですね。その間、私達は食事にしましょう」
「賛成! 腹ペコだよ」
ユウは腹を擦りながら言った。アリィは苦笑している。
「ど、どうしようか ...」
「ど、どうしましょうか...」
「...取り敢えず、家の中に運ぼう。傷の手当てをしてあげないと...」
「...そうですね...」
ユウはそっと少女を抱き抱えた。驚く程軽い。家まで急いで戻ると、アリィがドアを開け中に入れる。
「アリィ、一先ずリビングに。あとバスタオルと普通のタオルを何枚か出して貰えるか?」
「分かりました」
リビングの床にバスタオルを敷いて、その上にゆっくりと少女を寝かせる。
「次に傷の手当てか。アリィ、救急箱を出せるか?」
「やってみます」
救急箱は難なく現れた。
「良し。まずはアルコールで傷口を消毒して...と、アリィ、辛かったら見なくていいぞ?」
青い顔をしているアリィを気遣う。
「い、いえ平気です。ユウはその...慣れているんですね...」
「学生時代、ラグビーをやってたからな。怪我なんてしょっちゅうだった。慣れたもんさ。でもこれだけ酷い怪我をしたことはないけどな...」
トラバサミの挟まれた少女のふくらはぎは、傷口がギザギザになっていた。アルコールで消毒して多少キレイにはなったが、まだ血が止まらない。本当は傷口を縫い合わせた方が良いのだろうが、そんな道具も技術も無い。
「血止め薬は...あった、これだな。ちょっと沁みるだろうけど、勘弁しろよ」
アルコールで消毒した時もかなり沁みたはずだが、少女が目を覚ますことはなかったので大丈夫だろう。血止め薬を塗った後は包帯を慎重に巻いた。
「これで応急処置は良し。血は止まるはずだ」
「お疲れ様でした」
アリィがタオルに水を浸してユウに渡す。ユウは血で汚れた手を拭いながら、
「ただ...傷が骨に達してなければいいんだけどな...」
そう言って少女の顔を優しく拭いてあげた。
「それは...確かに心配ですね...」
骨折までしていたら、この救急セットじゃとても間に合わない。
「まぁそれは、俺達にも言えることなんだけど...」
「あ、確かに...」
この世界の医療技術がどこまで進んでいるのか分からないが、日本で受けていたような医療を期待するのはほぼ無理だろう。
「魔法がある世界なら治癒魔法、あるいはポーションとかがあるかも知れませんね」
「そうだな、そこら辺に期待しよう。だがまずは、この子をどうするかだが...」
「きっと親御さんが心配していますよね...」
「あぁ、確かに。狼の姿の時は分からなかったけど、まだこんなに小さな子供だもんな...どれだけ心配していることやら...」
「そうですよね、こんなに可愛らしい子なんですもん」
そう言ってアリィは少女の髪を撫でた。狼の姿の時と同じ、真っ白な髪をしている。その寝顔はまだあどけないが、非常に整った顔立をしている。将来美人になるのは間違いない。
「取り敢えず、目を覚ますまではこのままにしておこう。あ、毛布を一枚出してくれるか?」
「あ、はい」
なにせ少女は全裸だ。弱っているところに風邪でも引かれたら大変だ。
「言葉が通じるといいんですが...」
「大丈夫じゃないかな? こういう異世界モノってそこら辺はチートの範囲内だったりするだろ?」
「確かにそういうの多いですね。言葉は通じるけど文字は読めないみたいな」
「そうそう、それにもし言葉は通じなくてもさっきの念話? みたいなモンで、この子とは意思疎通できると思う」
「やっぱりアレってこの子なんですよね?」
「他に誰も居なかったしな。まず間違いないだろう。まぁともあれ、この子が目覚めるまで待とう」
「そうですね。その間、私達は食事にしましょう」
「賛成! 腹ペコだよ」
ユウは腹を擦りながら言った。アリィは苦笑している。
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