なんでも欲しがる妹に婚約者を譲った結果

真理亜

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「リリア! アリアが破水したって本当なのか!?」

 スミスは過剰とも取れるような演技をしてリリアと対峙した。

「ゴメンなさい...ウソなの...」

 対するリリアは殊勝そうな演技をしている。

「なんだって!? 一体何故そんなことを!?」

 これまたスミスは過剰とも取れるように怒りを顕にした。

「ウソ吐いて本当にゴメンなさい...でもこうでもしないとあなたは私と会ってくれないだろうと思って...私、今とっても困っているのよ...あなたに助けて欲しいの...」

 リリアはわざとボタンを外した胸元を強調するようにして、上目遣いでスミスを見上げる。

 これは明らかに自分を誘惑しようとしているな。スミスはそう判断したが、もう少し具体的な言葉を引き出したかった。なので、

「それにしたってやり方ってもんがあるだろう!」

 スミスは怒りの演技を続けることにした。

「そのことに関しては本当にゴメンなさい...姉を心から愛しているのよね?」

「当たり前だろう! アリアのことも子供達のことも愛しているとも!」

「そうよね...でもご無沙汰なんじゃないの?」

「なんだって!?」

「溜まってるんでしょう? 私のことを助けてくれたら抜いてあげるわよ? 仮にも婚約者同士だった仲だし、あなただってやぶさかじゃないでしょう?」

 そう言ってリリアは、スカートをたくし上げながらスミスに近付いた。

 はい、ギルティ!

 アリアの予想通りになったことに内心で苦笑しながら、スミスは鼻の下を伸ばすという高度な演技を披露した。

「そういうことなら...だがさすがにここじゃマズい。ホテルに行こう」

「そうよね。行きましょう」


◇◇◇


 ホテルのフロントで部屋を取った後、スミスは今気付いたというような演技をしながら、

「しまった! 大事な約束があるのを忘れていた! リリア、済まないが部屋で待っていてくれないか?」

 そう言ってリリアにキーを渡した。

「えぇ、分かったわ。お仕事なら仕方ないわよね。でも早く戻って来てね?」

「あぁ、もちろんだとも」

 スミスと別れたリリアは部屋に入るとベッドに寝転びながら、

「フフフ、男なんてチョロいものね。これからたっぷり良い思いさせて貰うわよ」

 そう言ってほくそ笑んでいた。

 しばらく経ってリリアが微睡み掛けていた時、コンコンと部屋のドアがノックされた。

「は~い!」

 途端に覚醒したリリアは上機嫌で部屋のドアを開け...そして固まった。

「やぁ、愛しい人。やっと見付けたよ」

 そこには怪しげな笑みを浮かべたカインが佇んでいたのだった。

「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」

 リリアの絶叫が響き渡った。

 その後リリアの姿を見た者は誰も居ない。


~ fin. ~
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