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ミネルバの作戦
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イアンは今日も手紙を書いていた。
他にすることが無いからだ。あの日、ミネルバにベルザード公爵家の別邸に招待されてからというもの、一歩も外に出ることが叶わない。
別邸への滞在を許可されたという名の体のいい軟禁状態にある。その間、ミネルバは一度も顔を見せていない。もう一週間経った。
イアンはどうせ届かないだろうと思いながら、今日もカリナへ向けて筆を走らせる。そんな時、イアンと一緒に軟禁されている二人の護衛がやって来た。
「イアン様、お手紙です」
一瞬、カリナから返事が来たかと期待するも、中を開いてみてガッカリする。それは実家から来た手紙だった。長い間留守にしているので、心配掛けないようにと現況を報告しておいたのだ。それに対する返事だろうと思ったが、読み進める内にイアンの表情が驚きに変わった。
「これは...」
思わず口に出していた。
「何かありましたか?」
「...いや、なんでもない...」
護衛の問い掛けに、ややあってイアンはそう答える。
「イアン様、差し出がましいことを言うようですが、この状況は異常です。我々を保護するという名目で外出も許さないとは」
「護衛という名の監視が24時間ピッタリと張り付いているんです。ここはまるで監獄ですよ。イアン様、一刻も早くミネルバ様とは手を切るべきです」
「私も同感です。あの方はどうも信用できません」
二人の護衛から口々に言われなくても、そんなことはイアン自身が良く分かっている。だが現状は、ミネルバに頼るしか選択肢が無いのもまた事実だ。
「お前達の言いたいことは良く分かった。ミネルバ嬢が来たらちゃんと言っておこう」
二人の護衛は不満たらたらだったが、それ以上はなにも言わなかった。
一方、ミネルバの方も遊んでいる訳ではなかった。毎日の取り調べは今も続いているが、ここ最近は特に厳しく取り調べられるようになり、疲労困憊だったのだ。
オマケに監視の目が一層厳しくなり、別邸のイアンに会いに行くことも叶わない。このままではイアンに不信感を抱かれてしまう。ジリジリと焦る時間ばかりが増えていった。
そんなある日、監視の目が緩くなった。これ幸いとばかりにミネルバは別邸へと急いだ。ミネルバは知る由もなかったが、この日はウィラー侯爵がアクセルに呼び出された日だった。
ミネルバが事件に関与していたという疑いが晴れたので、その分の監視がウィラー侯爵に向けられたのである。
「イアン様、お待たせしまして大変申し訳ございません。準備に思いの外時間が掛かりまして」
「準備とは!?」
「今から2週間後に王宮で舞踏会が開催されます。その時は王宮の大広間に警備が集中しますので、他の警備が疎かになります。その隙を突いて王宮に忍び込むます。私が先導しますのでご心配なく」
「そんなことをして大丈夫なのですか!?」
「カリナ様にお会いになりたいのでしょう? 多少のリスクを負ってでも」
「......」
イアンの沈黙を了解と取ったミネルバは更に続ける。
「カリナ様は私が呼び出します。二人っきりで話せる部屋も用意します。そこでゆっくりと話し合って下さい。それとこれをお渡ししておきますわ」
ミネルバはイアンに小さな薬瓶を渡した。
「これは!?」
「即効性の媚薬ですわ。良かったらお使い下さいな」
そう言ってミネルバは怪しく笑った。
他にすることが無いからだ。あの日、ミネルバにベルザード公爵家の別邸に招待されてからというもの、一歩も外に出ることが叶わない。
別邸への滞在を許可されたという名の体のいい軟禁状態にある。その間、ミネルバは一度も顔を見せていない。もう一週間経った。
イアンはどうせ届かないだろうと思いながら、今日もカリナへ向けて筆を走らせる。そんな時、イアンと一緒に軟禁されている二人の護衛がやって来た。
「イアン様、お手紙です」
一瞬、カリナから返事が来たかと期待するも、中を開いてみてガッカリする。それは実家から来た手紙だった。長い間留守にしているので、心配掛けないようにと現況を報告しておいたのだ。それに対する返事だろうと思ったが、読み進める内にイアンの表情が驚きに変わった。
「これは...」
思わず口に出していた。
「何かありましたか?」
「...いや、なんでもない...」
護衛の問い掛けに、ややあってイアンはそう答える。
「イアン様、差し出がましいことを言うようですが、この状況は異常です。我々を保護するという名目で外出も許さないとは」
「護衛という名の監視が24時間ピッタリと張り付いているんです。ここはまるで監獄ですよ。イアン様、一刻も早くミネルバ様とは手を切るべきです」
「私も同感です。あの方はどうも信用できません」
二人の護衛から口々に言われなくても、そんなことはイアン自身が良く分かっている。だが現状は、ミネルバに頼るしか選択肢が無いのもまた事実だ。
「お前達の言いたいことは良く分かった。ミネルバ嬢が来たらちゃんと言っておこう」
二人の護衛は不満たらたらだったが、それ以上はなにも言わなかった。
一方、ミネルバの方も遊んでいる訳ではなかった。毎日の取り調べは今も続いているが、ここ最近は特に厳しく取り調べられるようになり、疲労困憊だったのだ。
オマケに監視の目が一層厳しくなり、別邸のイアンに会いに行くことも叶わない。このままではイアンに不信感を抱かれてしまう。ジリジリと焦る時間ばかりが増えていった。
そんなある日、監視の目が緩くなった。これ幸いとばかりにミネルバは別邸へと急いだ。ミネルバは知る由もなかったが、この日はウィラー侯爵がアクセルに呼び出された日だった。
ミネルバが事件に関与していたという疑いが晴れたので、その分の監視がウィラー侯爵に向けられたのである。
「イアン様、お待たせしまして大変申し訳ございません。準備に思いの外時間が掛かりまして」
「準備とは!?」
「今から2週間後に王宮で舞踏会が開催されます。その時は王宮の大広間に警備が集中しますので、他の警備が疎かになります。その隙を突いて王宮に忍び込むます。私が先導しますのでご心配なく」
「そんなことをして大丈夫なのですか!?」
「カリナ様にお会いになりたいのでしょう? 多少のリスクを負ってでも」
「......」
イアンの沈黙を了解と取ったミネルバは更に続ける。
「カリナ様は私が呼び出します。二人っきりで話せる部屋も用意します。そこでゆっくりと話し合って下さい。それとこれをお渡ししておきますわ」
ミネルバはイアンに小さな薬瓶を渡した。
「これは!?」
「即効性の媚薬ですわ。良かったらお使い下さいな」
そう言ってミネルバは怪しく笑った。
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