190 / 276
190 (第三者視点8)
しおりを挟む
「兄貴~!」
「パパ~!」
「えっ!? ウィリアム!? マックス!? こ、これは幻か!?」
マックスに抱き付かれたことで、やっと焦点が定まったパトリックの瞳が驚愕で見開かれた。
「現実だよ、兄貴...探しに来たんだ...」
「パパ~! パパ~! パパ~!」
抱き付いて来たマックスを反射的に受け止めたパトリックは、しばし呆然としながら弟の顔を見詰めていた。
◇◇◇
「そうか...アンリエットが...彼女には本当に迷惑を掛け通しだな...」
泣き疲れて眠ってしまったマックスの頭を撫でながら、パトリックは静かにウィリアムの説明に耳を傾けていた。
「あぁ、そういうことだ。次は兄貴の話を聞かせてくれ。その格好は一体どうしたんだ!?」
「...笑える話だ...聞いて貰えるか?」
そう切り出してから、パトリックはポツリポツリとこれまでの経緯を語り出した。
曰く、国の査察が入ったあの日、全てが終わったと悟ったパトリックは、持てるだけの財産を持って国外へ逃げ出そうと思ったこと。
その際、マックスを連れて行く訳には行かず、苦渋の決断として一番信頼のお置けるアンリエットに預けようと思ったこと。
アンリエットに見抜かれてアランを付けられた時は焦ったが、なんとか出し抜くことに成功して国外へと脱出したこと。
ここまではアンリエットの予想通りだった。だがこの後なにが起こったのか?
「...俺がバカだったんだ...」
パトリックは唇を噛みながら先を続けた。
曰く、国外へと脱出する上で頼ったのは、昔から付き合いのあったこの国のとある貴族だったが、実はソイツはとんでもない悪党だったらしい。
パトリックが大金を持っていることを知るや、言葉巧みにパトリックを言い包めてまんまと全財産を巻き上げてしまった。
パトリックとしては、犯罪者である自分を匿ってくれたという恩義がある以上、無下にする訳にも行かず、ズルズルと相手の言うがままに従っていた結果、いつの間にか一文無しにされてしまったいた。
そうなると、もうパトリックには用はないと言わんばかりに、その貴族は王都にパトリックをたった一人で放り出したのだと言う。
そこからは日雇いの仕事を転々としながら飢えを凌ぐ毎日だということだった。
ウィリアムはパトリックの話の途中から涙が止まらなかった。自分や両親のバカな行いのせいで、家は取り潰しになるわパトリックはこんな酷い目に遭うわで、情けないやら申し訳ないやら様々な感情が入り交じり、ただただ声を押し殺して泣くしかなかった。
「パパ~!」
「えっ!? ウィリアム!? マックス!? こ、これは幻か!?」
マックスに抱き付かれたことで、やっと焦点が定まったパトリックの瞳が驚愕で見開かれた。
「現実だよ、兄貴...探しに来たんだ...」
「パパ~! パパ~! パパ~!」
抱き付いて来たマックスを反射的に受け止めたパトリックは、しばし呆然としながら弟の顔を見詰めていた。
◇◇◇
「そうか...アンリエットが...彼女には本当に迷惑を掛け通しだな...」
泣き疲れて眠ってしまったマックスの頭を撫でながら、パトリックは静かにウィリアムの説明に耳を傾けていた。
「あぁ、そういうことだ。次は兄貴の話を聞かせてくれ。その格好は一体どうしたんだ!?」
「...笑える話だ...聞いて貰えるか?」
そう切り出してから、パトリックはポツリポツリとこれまでの経緯を語り出した。
曰く、国の査察が入ったあの日、全てが終わったと悟ったパトリックは、持てるだけの財産を持って国外へ逃げ出そうと思ったこと。
その際、マックスを連れて行く訳には行かず、苦渋の決断として一番信頼のお置けるアンリエットに預けようと思ったこと。
アンリエットに見抜かれてアランを付けられた時は焦ったが、なんとか出し抜くことに成功して国外へと脱出したこと。
ここまではアンリエットの予想通りだった。だがこの後なにが起こったのか?
「...俺がバカだったんだ...」
パトリックは唇を噛みながら先を続けた。
曰く、国外へと脱出する上で頼ったのは、昔から付き合いのあったこの国のとある貴族だったが、実はソイツはとんでもない悪党だったらしい。
パトリックが大金を持っていることを知るや、言葉巧みにパトリックを言い包めてまんまと全財産を巻き上げてしまった。
パトリックとしては、犯罪者である自分を匿ってくれたという恩義がある以上、無下にする訳にも行かず、ズルズルと相手の言うがままに従っていた結果、いつの間にか一文無しにされてしまったいた。
そうなると、もうパトリックには用はないと言わんばかりに、その貴族は王都にパトリックをたった一人で放り出したのだと言う。
そこからは日雇いの仕事を転々としながら飢えを凌ぐ毎日だということだった。
ウィリアムはパトリックの話の途中から涙が止まらなかった。自分や両親のバカな行いのせいで、家は取り潰しになるわパトリックはこんな酷い目に遭うわで、情けないやら申し訳ないやら様々な感情が入り交じり、ただただ声を押し殺して泣くしかなかった。
26
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる