我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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191 (第三者視点9)

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「...兄貴...済まなかった...今更謝っても遅いだろうが...俺達のせいでこんなことになっちまって...本当に申し訳ない...」

 ウィリアムは泣きじゃくりながらパトリック許しを乞うた。

「...いや、もうそんなことはどうだっていいさ...全てを失った今となってはな...」

 パトリックは諦観したような表情を浮かべた。

「...だがマックスは...マックスのことだけは気掛かりで仕方なかった...お前達には身勝手だと言われるだけだろうが...少なくともその思いだけは紛れもなく俺の本当の気持ちなんだ...」

 そう言ってパトリックは、マックスの寝顔を愛おしいものを見るような目で優しく見守った。

「...あぁ、あぁ、分かってるよ兄貴...分かってる...」

 ウィリアムはしゃくり上げながら何度も頷いた。

「...ありがとう...」

 パトリックは囁くようにそう呟いた。

 ややあって少し落ち着いたウィリアムはこう切り出した。

「兄貴、国に帰ろう? さっも言った通り兄貴は無罪だ。俺がちゃんとそう証言するから。国に帰って一からやり直そう? 俺が言えた義理じゃないだろうけど...アンリエットが仕事を用意してくれるって言うんだ。俺、働くから。これまで迷惑掛け通しだったことのお詫びも兼ねて身を粉にして働くからさ。帰ろう?」

 だがパトリックはゆっくりと頭を振った。

「...俺は国からの収監に対して逃げ出した身だ。帰ったところで無罪放免って訳にはいかんだろう...」

「その点に関しては罪を受け入れてくれ。でもそんなに重い罰にはならないと思うし、恐らく情状酌量も考慮してくれるだろうと思う。だから帰ろう? マックスのためにも。マックスには父親が必要なんだ。俺みたいな紛い物の父親じゃなくて本当の父親が」

 ウィリアムも諦めない。なんとか食い下がる。マックスの名前を出された辺りで、パトリックの曇っていた瞳に光が宿り始めた。

「...そうか...こんな俺でもまだ父親と思ってくれているのか...分かったよ、ウィリアム...帰ろう...マックスのためにも...」

「兄貴、ありがとう!」

「...だがその前に、まずはアランにボコボコにされなきゃならんな...」

 パトリックは苦笑混じりにそう言った。

「あぁ、確かに...」

 ウィリアムもアランの剣幕を思い出したようだ。

「...まぁ仕方ない...身から出た錆だ...甘んじて受けることにするよ...」

 パトリックは吹っ切れたような表情を浮かべてそう微笑んだ。
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