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189 (第三者視点7)
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一方その頃。
ウィリアムはマックスを連れて動物園に来ていた。週末には親子連れで賑わうだろう動物園も、平日の昼間ともなればほとんど貸し切り状態である。
それは昨日連れて行った遊園地も同じ状態だった。マックスは昨日と同じように、ほとんど人が居ない動物園をはしゃぎながら駆け回っている。人にぶつかる恐れがないので、ウィリアムも特段咎めたりしないで好きにさせている。
ゾウやキリン、シマウマやサイなどを順路に沿って歩きながら眺めていると、
「おいちゃん、お腹空いた~!」
走り回っていたマックスが寄って来た。ちなみに「おいちゃん」とはウィリアムのことだ。
「叔父さん」という単語がまだ舌足らずのマックスには難しいらしい。ウィリアムも別に訂正したりはしなかったので、その呼び方が定着した。
「そっか。じゃあ売店でなんか買うか」
「うん!」
二人は動物園内にある売店に向かった。そこはちょっとした休憩所にもなっており、売店で買った軽食を食べるためのテーブルや椅子が幾つか設置されていた。
「なんにする? ポップコーンか? それともホットドッグか? たこ焼きなんてのもあるな。竜田揚げなんてのも。どれも美味そうだ。なぁ、マックス...マックス?」
返事が無いのを訝しんだウィリアムはマックスを見下ろしたが、当のマックスはテーブルの方向を見詰めたまま微動だにしない。
「どうした? 一体なにが...」
マックスの視線を追ってテーブルの方向に目を向けたウィリアムはそこで固まった。
髪はボサボサ、無精髭だらけ、草臥れた格好をした男が一人、虚ろな瞳でボンヤリとテーブルに着いていた。
「兄貴...」
「パパ...」
どれだけ外見が変わっても見紛うことはない。それはずっと探し求めていたパトリックその人だった。
◇◇◇
同時刻。情報屋に言われた港に着いたアランは、早速聞き込みを開始していた。
まずは場末の居酒屋に向かう。そこには昼間っから安酒を呷る輩が屯していた。
アランはその連中にパトリックの容姿を伝え、見覚えがないか聞いて回った。
すると一人の男がこう言った。
「パトリックって名前の野郎なら、この間一緒に荷揚げ作業したぜ。ただ、そいつはあんたが言うような格好じゃなかった。髪はボサボサだし無精髭だらけだったしな」
「そうか...だったら名前が同じだけの別人かも知れないな。ちなみにそいつはなんか自分のこと言ってたか?」
「あぁ、なんでもどこぞの貴族に騙されて身ぐるみ剥がされたとかなんとか言ってやがったな」
「なに!? それは本当か!? そいつは今どこに居る!?」
それを聞いたアランは目を剥いた。
「さぁな。今日は荷揚げ作業が休みの日だから、どこぞで飲んだくれてんじゃねぇのか?」
「そうか...」
ウィリアムとマックスがパトリックと再会を果たしていることなど知る由もないアランは、せっかく見付けた手掛かりなのにと唇を噛み締めていた。
ウィリアムはマックスを連れて動物園に来ていた。週末には親子連れで賑わうだろう動物園も、平日の昼間ともなればほとんど貸し切り状態である。
それは昨日連れて行った遊園地も同じ状態だった。マックスは昨日と同じように、ほとんど人が居ない動物園をはしゃぎながら駆け回っている。人にぶつかる恐れがないので、ウィリアムも特段咎めたりしないで好きにさせている。
ゾウやキリン、シマウマやサイなどを順路に沿って歩きながら眺めていると、
「おいちゃん、お腹空いた~!」
走り回っていたマックスが寄って来た。ちなみに「おいちゃん」とはウィリアムのことだ。
「叔父さん」という単語がまだ舌足らずのマックスには難しいらしい。ウィリアムも別に訂正したりはしなかったので、その呼び方が定着した。
「そっか。じゃあ売店でなんか買うか」
「うん!」
二人は動物園内にある売店に向かった。そこはちょっとした休憩所にもなっており、売店で買った軽食を食べるためのテーブルや椅子が幾つか設置されていた。
「なんにする? ポップコーンか? それともホットドッグか? たこ焼きなんてのもあるな。竜田揚げなんてのも。どれも美味そうだ。なぁ、マックス...マックス?」
返事が無いのを訝しんだウィリアムはマックスを見下ろしたが、当のマックスはテーブルの方向を見詰めたまま微動だにしない。
「どうした? 一体なにが...」
マックスの視線を追ってテーブルの方向に目を向けたウィリアムはそこで固まった。
髪はボサボサ、無精髭だらけ、草臥れた格好をした男が一人、虚ろな瞳でボンヤリとテーブルに着いていた。
「兄貴...」
「パパ...」
どれだけ外見が変わっても見紛うことはない。それはずっと探し求めていたパトリックその人だった。
◇◇◇
同時刻。情報屋に言われた港に着いたアランは、早速聞き込みを開始していた。
まずは場末の居酒屋に向かう。そこには昼間っから安酒を呷る輩が屯していた。
アランはその連中にパトリックの容姿を伝え、見覚えがないか聞いて回った。
すると一人の男がこう言った。
「パトリックって名前の野郎なら、この間一緒に荷揚げ作業したぜ。ただ、そいつはあんたが言うような格好じゃなかった。髪はボサボサだし無精髭だらけだったしな」
「そうか...だったら名前が同じだけの別人かも知れないな。ちなみにそいつはなんか自分のこと言ってたか?」
「あぁ、なんでもどこぞの貴族に騙されて身ぐるみ剥がされたとかなんとか言ってやがったな」
「なに!? それは本当か!? そいつは今どこに居る!?」
それを聞いたアランは目を剥いた。
「さぁな。今日は荷揚げ作業が休みの日だから、どこぞで飲んだくれてんじゃねぇのか?」
「そうか...」
ウィリアムとマックスがパトリックと再会を果たしていることなど知る由もないアランは、せっかく見付けた手掛かりなのにと唇を噛み締めていた。
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