えっ?これって王妃教育の一環じゃなかったんですか?~天然令嬢は虐められていた事に気付かない

真理亜

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「この報告は事実なのか?...」 

 ブラゼル王国の王太子、アインハルト・ブラゼルは自身の執務室で憮然として呟いた。

「影からの報告なので間違いないかと...」

 そう答えたのは、宰相子息であるメイヤーで、こちらも憮然としている。

「信じられない...」

「あのミーナがまさか...」

 続けて魔法師団長の子息マイルスと騎士団長の子息ライリーも唖然とした表情を浮かべた。

「決断の時だ...」

 アインハルトが悲壮な決意を込めて宣言した。


◇◇◇


 ブラゼル王国の王都、ブラゼリアにある魔法学園リリアスでは卒業パーティーが華やかに開催されていた。学園長の祝辞が終わり、楽隊が演奏を奏で、これからファーストダンスが始まろうとした時だった。

「ミーナ・バーネット!  貴様のアリス・オコンネルに対する悪逆無道は到底看過出来ぬ! よってこの場にて婚約破棄を申し渡す!  申し開きがあれば申してみよ!」


 突然、壇上に上がったアインハルトの朗々とした声が響き渡り、それまでの弛緩した雰囲気が一気に緊張感を孕んだものとなり、会場はシーンと静まりかえった。

 会場中が何事かと壇上のアインハルトとその取巻き三人と、更にその後ろに控えた女子生徒に注目する。

 ピンクゴールドの髪、翡翠のような瞳、全体的に小振りで、まるで小動物のような庇護欲をそそらせる印象を与える少女、アリス・オコンネル男爵令嬢である。

 ここ最近、身分もわきまえず、アインハルトにまとわりついていて、他の貴族子女から白い目で見られている。

「私ですか?」

 そんな中、なんとも間の抜けた声が響く。コテンと首をかしげたのは、燃えるような赤い髪、猫のようにつり上がった碧眼、スラリとした長身の、少女から大人の女へと成長しつつある美女、ミーナ・バーネット伯爵令嬢その人である。

 王太子の婚約者として、10歳の頃から王妃教育に励んでいる。学業は常に学年首席。魔法は最上級魔法を軽々と使いこなすという才媛である。

「惚ける気か!」

「惚けるもなにも何の事だか」

 アインハルトが激昂するも、ミーナは本当に心当りがないというようにまた首をかしげる。

「いいだろう、今から貴様の悪行を全て晒してやる。まず一つ、アリスの教科書をビリビリに引き裂いて使い物にならなくしたこと。次に廊下ですれ違う際、わざとぶつかって転ばせたこと。更に噴水前に呼び出し突き飛ばして噴水に落としたこと。まだあるぞ、階段の踊り場で待ち伏せし突き落としたこと。挙げ句の果てに破落戸をけしかけて害そうとまでしたな。これらは悪質な犯罪行為だ!  牢屋行きは免れないと思え!」

「えっ?  そうなんですか?」

「当たり前だろう!」

「えっでも、これらは全て王妃教育の一環だと」

「どこの国にそんな王妃教育があるかぁ!」

「でもでもイザベラ様がそう仰いましたし」

「...はっ!?...」

 アインハルトは一瞬呆けて呟いた。


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