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第3章*パーティーと気持ちの行方
38・「我慢出来る限界を越えました」byマクシミリアン
しおりを挟む「……っんん……ん、ぅ……っ!」
一体何が起こっているんだろう。
自分から仕掛けたとはいえ、今の展開に頭がついて行かない。
(マクシミリアン……!?)
どうしていきなりキスされているのだろう。
どうして……。
(あれだけ逃げていたくせに……!!)
ほんの少し挑発しただけでキスしてくるくらいなら、逃げなければいいのに。
それが妙に腹立たしくて睨みあげると、マクシミリアンはさらにキスを深めた。
「ふ……ぁ、んっンン……っぁ」
「駄目です。これ以上私を煽っては」
マクシミリアンはルーナの唇を甘く食み、何度も何度も重ね合わせてくる。
重ねられる唇に、交わる吐息に、ルーナの胸が早鐘を打つ。
「煽って、なんか……っ」
「煽っていますよ。……その目」
咄嗟に言葉を返したルーナの目を、マクシミリアンは熱っぽい瞳で見つめた。
至近距離で見つめられるから、息が出来ないほど。
「そんな目を向けられたら……。キスだけではやめてあげられなくなる」
マクシミリアンの吐き出した熱っぽく揺れる言葉に、ルーナはすがるようにマクシミリアンの腕を掴んだ。
「……やめる気、なの……?」
このままここでやめないで欲しい。
ここでやめられたら、また逃げられてしまうかもしれない。
そんな気がして、ルーナは不安に駆られてしまう。
「……ッ!!」
泣きそうな顔でマクシミリアンの腕を握るルーナに、マクシミリアンは息を呑んだ。
月明かりに照らされたマクシミリアンの顔に一瞬で赤みがさしたことが、薄暗い中でもルーナには分かる。
「……今ならまだ、やめてあげられます」
(やめないで)
感情を抑え込むようなマクシミリアンの声に、ルーナは胸が苦しくなってしまう。
ここまで来てこの人は、まだためらう理由があるのだろうか。
「……私のこと……好きだって言ってくれたのに……」
その言葉は嘘だったのか。
やはり気の迷いなのか。
つい責めるような口調で呟いたルーナに、マクシミリアンはわたわたと慌てた様子を見せた。
「ち、違いますよ! ルーナさんのことは好きです! だからこそ、大切にしたいと言いますか……! ここでこのまま貴女を抱いたら、まるで体だけを求めているみたいで……! そう思われたくないというか……!」
マクシミリアンが、珍しく言い訳のように言葉を重ねてくる。
その余裕のなさに、ルーナの胸へどうしようもないほどの愛おしさが込み上げる。
(ああ……好きだなぁ)
この人を、自分だけのものにしたい。
他の誰にも取られたくない。
そんな感情は、ルーナとして生きてきた18年間でも、愛梨として生きていた前世の中でも抱いたことがなかった。
渇望とは、まさに今のような感情を言うのではないか。
ルーナは掴んでいたマクシミリアンの腕に、さらに力を込めた。
「体だけなんて思わないから……。だから……やめないで欲しい、です……」
ルーナは上目遣いでマクシミリアンを見つめる。
途切れ途切れに口にしたルーナの言葉に、マクシミリアンは声にならない声を上げた。
「~~っ! 貴女という人は……!」
「きゃ……っ!」
「どれだけ私を惑わせれば気が済むんですか……!」
マクシミリアンは堪えきれないとでも言うように言葉を吐き出すと、ルーナの唇へ再び口付けた。
ぬるりとルーナの口腔へ侵入してきたマクシミリアンの舌が、歯列をなぞり、くすぐってくる。
「んぅ……っ! ん、ん……ンン……っ」
唇が、体が、熱い。
どちらがどちらの唇なのか、その境目さえ朧気になっていく。
息を継ぐ間もなく舌を絡ませられるから、息が出来なくて、ルーナは顔を血が集まっていくのを感じた。
「貴女が、やめないで欲しいなんて言うのが悪いんですよ……?」
「ひゃ……っ!」
ふ……っと、息とともに甘く低い声を耳の中へ吹き込まれてぞくりとする。
足がガクついて1人で立っていられそうになかった。ルーナはマクシミリアンの腕をぎゅうと握りしめる。
「貴女が拒絶しないなら、このまま進めてしまいますけど……構いませんか……?」
最後の確認とでも言うように。
マクシミリアンは恐る恐る尋ねてくる。
(なんでここまでしておいて、最後の最後で押しが弱いのよ……!)
こういう時くらい強引になってくれたらいいのに、とルーナは思う。
実にマクシミリアンらしいといえば、らしいのだが。
「……嫌なら、好きだなんて告白しないわ」
マクシミリアンがそんなふうだから、こちらが積極的にならざるを得ないのだ。
ルーナは握りしめたマクシミリアンの腕を、少しだけ自分のほうへ引き寄せた。
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