4 / 9
旦那親戚の持ち家
どデカいG現れる
しおりを挟む
結局、人間というのは順応性の高い生き物なのである。それを身をもって私は自覚した。
相変わらず夜中のドラの音と読経の声で目が覚める。それが毎日午前2時と定期的に起こっていると呆れる事に「はいはい、毎晩お疲れ様です」くらいにしか思わなくなるのである。
慣れである。
と思うのだが、もしかしたら私個人の性格に起因しているのかもしれない。
もしかしたら新生児を育てるという事に一杯一杯になっていて、優先順位的に自動的に下位に押し下げられたのかもしれない。私の赤ちゃんは育てにくいタイプで、いつも泣いていて抱っこが必要な子供だった。
「赤ちゃんはみんなこんな感じよ~大丈夫!」と言って、私が歯医者に行ってる間に赤ちゃんを預かってくたのは大らかな義母。だが3回の預かりの後「この子ずっと泣いてて寝かせられない、無理」と言いギブアップした。そして預かってくれなくなった。
夫は休みの日の日中は家に居ない派にジョブチェンした。少しでも家事をするためにおんぶ紐を買ったが、それを使うのを赤ちゃんは死ぬほど嫌がり1度もおんぶできないままだった。寝不足と疲れで私はフラフラだった。
だから私自身は読経の音が聞こえても、2階がうるさいアパートの1階に住んでいるくらいの気持ちで過ごしていた。
特に子供に悪さをするわけでもないし、猫にちょっかいをかけてくるわけでもない。夫に何もしないのは、この家で生まれ育ったという話から、ある意味既に実証済みである。
私は一応、読経の声が聞こえてくるタイミングでハッと目覚める。そしてうんざりしながら「あぁ、起きちゃった。コーヒーでも飲もうっと」と起き出して、コーヒー飲んでテレビを付けてスカパーを見る。この時になぜか赤ちゃんが起きないのは確定なので、逆に1人の時間をのんびり過ごす時間になっていった。
その夜もハッとして目が覚めた。隣の部屋から夫のいびきが聞こえる。それ以外は静かな室内で(あぁ、今から始まるのね・・・)と仕方なしに起き上がった。いつも通りコーヒー飲むためにキッチンに行こうとした時、横でカサッと乾いた音がした。
私は見た。
自分の寝ていた一番近くの横の柱に大きなゴキブリがいた。
普通に大きなゴキブリというと3~4センチくらいじゃないかと思う。そしてウチでは猫が8匹いるのだから、そんなゴキブリがいれば退屈している猫たちの目が一斉に煌めく。猫にとって大きなゴキブリは手頃な獲物のサイズだ。
だがそのゴキブリは予想を遥かに超えて大きかった。
頭からお尻まで1m以上ある。触覚も長くで2mはありそうだった。
本当に恐ろしい時には声も出せなくなるのである。
私は悲鳴もあげられずその場に硬直した。脳が完全に考えを停止した。私は硬直したままゴキブリを見ていた。ゴキブリは触角を忙しく動かしながらじっとしていた。
触覚が固まっている私の腕に当たりそうで気持ち悪いを通り越して恐ろしい。時々、柱に捕まっているために足の位置を直していて、それが木の柱に引っかかりカサっと音がする。多分羽を広げて飛べば工場用扇風機のような音と風が来るだろう。脳がぼんやりそんなことを思いついてしまい、全身の鳥肌が思い出したようにざっと立った。
夫は隣の部屋。いびきがひどくて赤ちゃんを起こしてしまうし私も眠れなくなるし、寝れない横でグースカ寝ている姿を見るのは腹立たしいを通り越して悲しくなる。
夫には「家でくつろげないだろうから夫の部屋を作ったらいい」と言いくるめて、隣の部屋を夫の個人の部屋にした。事が起こったのは部屋を別にした後だった。
そして普通サイズのゴキブリさえ駆除を私に任せるくらい虫が苦手だから、コレに関しては全く助けにならない。見たら多分妻と娘を置いて裸足で遥か彼方まで駆けていくだろう。
いやいや、そういう問題ではない。そもそもコレが存在するのはフィクションの世界だけなのだ。巨体なトンボやムカデが闊歩していた恐竜時代なら巨大ゴキブリがいたかもしれないが。流石にこれは現実ではない。
とは言え、それはあまりにリアルな存在感だった。
赤ちゃんとゴキブリの間には私がいるから大丈夫。何がどう大丈夫なのかは果てしなく謎なのだが、多分大丈夫。万が一ゴキブリが赤ちゃん目がけて飛んできたら全力で盾になろう。猫たちは私より俊敏だから多分大丈夫。
そう考えている間も視線はゴキブリから外せなかった。視線を外した瞬間、動き出しそうで怖かった。シーンとした薄暗い部屋の中でゴキブリを凝視し続けた。カサッ、カサッと足の位置を直す音が聞こえる。
どのくらい見ていたのか判らない。多分10分は経ってないと思う。果てしない時間に思えた突然、ゴキブリが薄くなった。厚みが薄くなったのではなく、存在が薄くなった。色彩が薄れて、輪郭がぼやけた。姿の現実味が薄れたと同時に触覚が動く音、足が動く音も小さくなった。1分くらいの間にゆっくりとゴキブリは空間に溶けていった。溶けて消えていったゴキブリの後には柱の木目が見えるのみ。しばらく私は木目を凝視した。
大丈夫。
そう思い、ほっとした途端に汗が全身から吹き出した。心臓がバクバク鳴り全身に震えが走った。
そして思い出したかのようにドラの叩く音と読経が始まっていた。こちらはゴキブリとは入れ替わりだったのだろう。だんだん音がはっきりとしてきた。
一難去ってまた一難。
とはいえこちらの難は通常運転なのである。1mのゴキブリに比べれば100倍マシ。
そしてこの後からだんだんと我が家の心霊現象の雲行きが怪しくなっていったのだった。
相変わらず夜中のドラの音と読経の声で目が覚める。それが毎日午前2時と定期的に起こっていると呆れる事に「はいはい、毎晩お疲れ様です」くらいにしか思わなくなるのである。
慣れである。
と思うのだが、もしかしたら私個人の性格に起因しているのかもしれない。
もしかしたら新生児を育てるという事に一杯一杯になっていて、優先順位的に自動的に下位に押し下げられたのかもしれない。私の赤ちゃんは育てにくいタイプで、いつも泣いていて抱っこが必要な子供だった。
「赤ちゃんはみんなこんな感じよ~大丈夫!」と言って、私が歯医者に行ってる間に赤ちゃんを預かってくたのは大らかな義母。だが3回の預かりの後「この子ずっと泣いてて寝かせられない、無理」と言いギブアップした。そして預かってくれなくなった。
夫は休みの日の日中は家に居ない派にジョブチェンした。少しでも家事をするためにおんぶ紐を買ったが、それを使うのを赤ちゃんは死ぬほど嫌がり1度もおんぶできないままだった。寝不足と疲れで私はフラフラだった。
だから私自身は読経の音が聞こえても、2階がうるさいアパートの1階に住んでいるくらいの気持ちで過ごしていた。
特に子供に悪さをするわけでもないし、猫にちょっかいをかけてくるわけでもない。夫に何もしないのは、この家で生まれ育ったという話から、ある意味既に実証済みである。
私は一応、読経の声が聞こえてくるタイミングでハッと目覚める。そしてうんざりしながら「あぁ、起きちゃった。コーヒーでも飲もうっと」と起き出して、コーヒー飲んでテレビを付けてスカパーを見る。この時になぜか赤ちゃんが起きないのは確定なので、逆に1人の時間をのんびり過ごす時間になっていった。
その夜もハッとして目が覚めた。隣の部屋から夫のいびきが聞こえる。それ以外は静かな室内で(あぁ、今から始まるのね・・・)と仕方なしに起き上がった。いつも通りコーヒー飲むためにキッチンに行こうとした時、横でカサッと乾いた音がした。
私は見た。
自分の寝ていた一番近くの横の柱に大きなゴキブリがいた。
普通に大きなゴキブリというと3~4センチくらいじゃないかと思う。そしてウチでは猫が8匹いるのだから、そんなゴキブリがいれば退屈している猫たちの目が一斉に煌めく。猫にとって大きなゴキブリは手頃な獲物のサイズだ。
だがそのゴキブリは予想を遥かに超えて大きかった。
頭からお尻まで1m以上ある。触覚も長くで2mはありそうだった。
本当に恐ろしい時には声も出せなくなるのである。
私は悲鳴もあげられずその場に硬直した。脳が完全に考えを停止した。私は硬直したままゴキブリを見ていた。ゴキブリは触角を忙しく動かしながらじっとしていた。
触覚が固まっている私の腕に当たりそうで気持ち悪いを通り越して恐ろしい。時々、柱に捕まっているために足の位置を直していて、それが木の柱に引っかかりカサっと音がする。多分羽を広げて飛べば工場用扇風機のような音と風が来るだろう。脳がぼんやりそんなことを思いついてしまい、全身の鳥肌が思い出したようにざっと立った。
夫は隣の部屋。いびきがひどくて赤ちゃんを起こしてしまうし私も眠れなくなるし、寝れない横でグースカ寝ている姿を見るのは腹立たしいを通り越して悲しくなる。
夫には「家でくつろげないだろうから夫の部屋を作ったらいい」と言いくるめて、隣の部屋を夫の個人の部屋にした。事が起こったのは部屋を別にした後だった。
そして普通サイズのゴキブリさえ駆除を私に任せるくらい虫が苦手だから、コレに関しては全く助けにならない。見たら多分妻と娘を置いて裸足で遥か彼方まで駆けていくだろう。
いやいや、そういう問題ではない。そもそもコレが存在するのはフィクションの世界だけなのだ。巨体なトンボやムカデが闊歩していた恐竜時代なら巨大ゴキブリがいたかもしれないが。流石にこれは現実ではない。
とは言え、それはあまりにリアルな存在感だった。
赤ちゃんとゴキブリの間には私がいるから大丈夫。何がどう大丈夫なのかは果てしなく謎なのだが、多分大丈夫。万が一ゴキブリが赤ちゃん目がけて飛んできたら全力で盾になろう。猫たちは私より俊敏だから多分大丈夫。
そう考えている間も視線はゴキブリから外せなかった。視線を外した瞬間、動き出しそうで怖かった。シーンとした薄暗い部屋の中でゴキブリを凝視し続けた。カサッ、カサッと足の位置を直す音が聞こえる。
どのくらい見ていたのか判らない。多分10分は経ってないと思う。果てしない時間に思えた突然、ゴキブリが薄くなった。厚みが薄くなったのではなく、存在が薄くなった。色彩が薄れて、輪郭がぼやけた。姿の現実味が薄れたと同時に触覚が動く音、足が動く音も小さくなった。1分くらいの間にゆっくりとゴキブリは空間に溶けていった。溶けて消えていったゴキブリの後には柱の木目が見えるのみ。しばらく私は木目を凝視した。
大丈夫。
そう思い、ほっとした途端に汗が全身から吹き出した。心臓がバクバク鳴り全身に震えが走った。
そして思い出したかのようにドラの叩く音と読経が始まっていた。こちらはゴキブリとは入れ替わりだったのだろう。だんだん音がはっきりとしてきた。
一難去ってまた一難。
とはいえこちらの難は通常運転なのである。1mのゴキブリに比べれば100倍マシ。
そしてこの後からだんだんと我が家の心霊現象の雲行きが怪しくなっていったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる