奪ってみてよ、先輩。

七夕 真昼

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5.家庭教師くらい真面目にやってください。

5-4

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「千夜子さー……俺んち住む?」

身体の力も気力も抜けた私を抱えながら、またこの人は突拍子もない事を言い出す。

「やですよ。」
「だってめんどくね? 行き来すんの。」
「先輩がこういう事をやめてくれれば何も面倒じゃなくなりますよ。」
「あァ? 断るね。」

なんでよ……。

「別に、私である必要なくないですか? 居ますよね。私より全然スタイル良い、大人っぽい人とか。」

それこそこの前見かけた人とかね。

「あー……この前の奴?」

やっぱり気づいてたんだ。

「何? ヤキモチ?」
「純粋な疑問です。私がまだ初雪さんの婚約者だから、ですか?」

そうだとしても、そこにこだわる理由は分からない。

「で、どーする?」
「断りましたよね……」
「合理的じゃん?」
「下心しかないんだよなぁ……」

睡魔に負けつつある私は、横たわって先輩の背中にある太陽のタトゥーを眺める。背中に左腕に、随分賑やかな身体だなぁ。

「ここ来ればバイトもしなくて済むだろー? 別にお前1人増えるくらいどーってことないし。」

養ってやるよ、なんて本気か嘘か分からない口調で言う。

「それはさすがに……いくらあずき先輩相手でも申し訳ないですよ」
「随分引っかかる言い方だな」

甘い煙草の匂い。他にこの匂いの煙草を吸ってる人に会ったことないな。

「な、来いよ千夜子。」
「……他の女の子とかもここに来るんじゃないですか?」
「来ねーよ。基本家で抱かないし。」
「ああそう……」

瞼が重い。思考が回らなくなってきた。

「来るとしたら弟くらいだな。」
「兄弟いるんですね……」
「年中反抗期のかわいい弟が1人な。」

お兄ちゃんだったんだ。意外と面倒見がいいのもそのせいかな?

今目を閉じたらそのまま眠れそうで、会話を続けるのが面倒になってくる。

「だからさ、来いよ?」
「……もう。…………分かりましたよ……。」

いよいよ面倒になった私は、考える事を放棄して瞼を閉じた。
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