奪ってみてよ、先輩。

七夕 真昼

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7.ただの共同生活ですからこれは!

7-2

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「あずき先輩。」
「ん?」
「いつ勉強してるんですか?」

パソコンを弄ってるあずき先輩(眼鏡スタイル)に話しかければ、不可解そうな顔をされた。

「そりゃ学校でしょ。」
「そうじゃなくてですよ。授業で分からないところとか、放課後とか帰ってきた後でやるじゃないですか。」
「授業の事は授業の中で覚えればよくね?」

何当たり前のこと言ってんの? と言いたげな先輩をこれほどまでに殴りたくなったことはない。
「普通の人は授業受けただけじゃ完全に理解しませんよ。」
「俺が普通の人じゃないって?」
「普通か普通じゃないかって言われたら、確実に普通じゃないですね。」

色んな意味でね。

「はー? 傷つく。」
「何とも思ってなさそうな顔で言われても。」

なんか、今必死に勉強してる私が馬鹿馬鹿しく思えてきた……。

「ま、理解すんのにどれだけ時間が必要かは本人次第だし。俺の真似すれば絶対とかねぇよ。」
「珍しくまともなこといいますね。変なものでも食べました?」
「お前が飯に毒盛ってなけりゃ食ってねーよ。」
「その手がありました。」
「毒盛りたいの?」

こんなやり取りをするのも当たり前だって慣れてきている自分がいる。

当たり前にしちゃ、駄目なのに。

話しかければすぐ答えが返ってくる距離に人がいる生活が久しぶり過ぎて、私は自分と他人の間に引いた線をいつか消してしまいそうで怖くなる。
自分と他人の間に私は明確な境界線を引いていて、それは家族相手でも同じだった。

それを引いたのはいつだったか覚えていない。

喜びも悲しみも、痛みも他人と分け合えるものだって信じてたけど。私にとってそれはおとぎ話でしかなかったから。

分かり合えるなんて、傲慢でしかなかったから。

私の迷いも痛みも悲しみも、全部私1人のものにした。誰にも触れさせないようにした。

私の痛みで誰かを煩わせたくないからじゃない。

私の勝手な期待で、私が傷つきたくないからだ。
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